・
・
・
職員会議が無事に終了し、
放課後の職員室には俺と町田先生の2人だけが残っていた。
俺はドカッと椅子に座るなり、大きな伸びをした。
対して、町田先生はゆっくりと腰を下ろすと、ふぅとため息を一つ吐く。
今日の職員会議での議題は例年長引くという、体育祭競技の内容や団の分け方についてだったが、
町田先生曰く、今年はかなりスピーディーに会議が済んだらしい。
まぁ、その分、短時間で濃い内容のものからこその辛さはあったが。
『キキキキ…』
事務用回転椅子の背にもたれ、少し微笑を浮かべて町田先生に聞いてみる。
『カチカチカチッ』
町田先生は横目で俺の顔を見るなり、正面に向いて蓋を開けたジュースの開け口にストローを差し込む。
そして、迷わずに口をつけた。
(変わってないのはどっちだよ(笑笑))
町田 タカユキ。
俺とは高校時代に同じクラスで過ごした友人でもあり、
職場では1年上の先輩だ。
俺と彼が何故1年もズレているのかはさて置き、
彼との間に『友人』とは別に『先輩・後輩』の関係が成り立った今は、
そう簡単に名字で呼んだり、タメ口で話したり等という馴れ馴れしい態度は職場、または校内では取れない。
本人はそう言っているけど。
誰も居ない職員室で自由に回転椅子ごと身体を揺らしていると、
町田先生は「別に今も誰も見てないから良いじゃないですか。」と不満気に応えられた。
どうやら彼は俺がこんな態度をとるのが気に入らないらしい。
試しに、何がそんなに気に入らないのか聞いてみる。
すると、
目を細め、疑り深く俺をジロジロ見る。
(ホント、失礼にも程があるだろ。)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。