第31話

#塩見さんと契約の話 ①
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2020/03/13 21:47
あなた

い、今、何て言いましたか…?

天野 カエデ
解消する、って言っただけだけど?
あなた

な、何を、ですか…?

天野 カエデ
何を、って…
天野くんの家に来てちょうど1ヶ月が経った、今日。

天野くんに一番恐れていた事を言われてしまった。
天野 カエデ
あなたちゃんとの契約の話だよ。






(い、いや!!!予感、してなかった訳じゃないけど!!予感してなかった訳じゃないけど!!!!!)
あなた

〜〜〜っ、、

一瞬でも「あれ、これイケるんじゃね?」とか思ってしまっていた自分が居たのもあって、

やっぱり衝撃が強かった。



(確かに、私が悪い事してたのもあるし、同居だなんて校内でバレちゃいけないのは分かってるけど!)



そう、私は大学生だと偽り、

修学旅行費を貯める為に月給の高さと住み込みが可能な条件で天野くんの家に転がり込んだ。


親や周りの友達、フミカにも桧原にも「男の人と同居してる」なんて言えない。





結果、先日、天野くんと始業式の日に教室で鉢合わせる事になった。


それはもう恐ろしい話な訳で。

呼吸が詰まったし、衝撃は凄いし、目に入る物事が上手く頭で処理されなかったし。


そのすぐ後に、

天野くんは大学生でなく社会人で、隣のクラスの担任だという事が分かった。



(でもさ、でもさ…私、ヘマしないし、何事も無いように振る舞えば隠せると思うんだけど…?!)
あなた

〜〜〜〜〜〜〜っ、、

〜ゃん、
〜ちゃん、
天野くんの元で働けば、確実に修学旅行費用の納入日までに何とか貯め終わる。


どうなろうと、ここまで心が出来上がってしまったら、

フミカとの修学旅行を簡単に諦めるなんて出来ない。



(でも、契約解消されて今から別のクライアントを探すとなると…)
あなた

きついんだよなぁ…

秋晴 フミカ
しーちゃん?
あなた

秋晴 フミカ
どうしたの、考え込んじゃって。
はっと我に返ると、教室で1人席に座っていた。
フミカが机の横に立って、私の顔を覗き込む。

私はフミカと目を合わせると頭を左右に振った。
あなた

いや、何でも、無いよ?!

秋晴 フミカ
本当に?
きつい、とか言ってたけど?
あなた

うん、本当。何でも無い。

秋晴 フミカ
ふーん…皆、もう行っちゃったよ?
早く行こ!
あなた

ど、何処に?!

秋晴 フミカ
何処に、って…次、移動教室だよ!
遅れちゃう!
しーちゃん早く!
あなた

ご、ごめん!
すっかり抜け落ちてた!





秋晴 フミカ
しーちゃん、今日はぼんやりしてる。
あなた

あー、ははは…そうかも。

厳密に言えば、
秋晴 フミカ
なんていうか、違う事に終始意識取られっぱなし?
今日一日、天野くんとの契約解消の件について考えっぱなしだ。



(うぅ…流石、フミカ…やっぱり鋭い…)

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