第53話

#天野くんと放課後の話 ⑪
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2020/11/24 01:00
あなた

…そうですよね。自分のクラスではないとはいえ、学校の生徒ですもんね。

天野 カエデ
ん?
あなた

問題が起こると学校全体で面倒な動きをしなくちゃいけなくな

天野 カエデ
それは別に関係ないよ。
あなた

え?か、関係ないって…?

天野 カエデ
俺のお気に入りが俺以外に虐められて、泣かされてたら嫌だもん。
あなた

なっ、?!……な、泣かすつもりで虐める予定だったんですか?

天野 カエデ
えぇ…今そこに食いつく?
あなた

食いつきます。

天野 カエデ
『お前を虐めて良いのは俺だけだ』的なセリフが女の子は好きなんじゃないの?
あなた

虐められて何が嬉しいんですか。

天野 カエデ
うわぁ、真っ当。

行きの時とは違い、車内にはラジオも音楽も流れていなかった。

代わりに横を走り過ぎて行く車の走行音が小さくだがBGMになっていた。


(……じゃぁ、もし…)


もし、絡まれているのが私じゃなかったら…?

天野くんはどうしていたのだろうか。

私が天野くんの顔を見ているのを確認すると、天野くんはニヤッと笑う。
天野 カエデ
『もし絡まれてるのがあなたちゃんじゃなかったら、俺がどうしてたか』、って考えてる?
あなた

?!


天野くんは私の目が自然に見開いたのを確認すると、「全部顔に書いてるよ。」とハンドルを切りながら笑った。
天野 カエデ
うーん、そうだなぁ…素通りしてたかも。
あなた

っな、…?!

天野 カエデ
あ、待って。あなたちゃん本気にしそう。冗談だよ、冗談。
あなた

天野 カエデ
でも、『あなたちゃんが俺の仕事場の制服を着てて、俺もスーツを着てた』っていう理由だけだよ。
プライベートだったら私服の他クラスの生徒だったら助けてないかも。

「知らないフリして。」と、付け加えた天野くん。

私は助手席の窓ガラスに反射しているその姿を見ながら聞いていた。
あなた

…天野くんって、

天野 カエデ
ん〜?
あなた

少し冷たいですよね。


天野くんは依然変わらぬ様子で、笑みを浮かべてこんな話をしている。


笑わない事から『岩塩』と呼ばれ、

且つ塩っぱすぎる対応を生まれてこの方続けている私が言うのもどうかと思うが、これだけは言える。




天野くんは、

少し冷たい人だと思う。





天野 カエデ
はははっ、『冷たい』ねぇ…なんでそう思うの?
あなた

女の子に優しいし、人当たりも良くて、気遣いもピカイチです。けど、

天野 カエデ
『けど』?

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