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第71話

誰が為の傍らの話⑦
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2021/12/14 05:42











モリシタ
じゃあね、あなたちゃん。学校頑張ってね。
あなた

はい、ありがとうございます。
それと…折角誘って貰ったのに良いお返事が出来なくて、本当にすみません。




天野くんのワインレッドの車の前で、

私は見送りにわざわざ駐車場まで足を運んで来てくれた森下さんに頭を下げる。



森下さんはにっこり笑って、「良いんだ、気にしないで。」と首を振った。


モリシタ
それはあなたちゃんが決める事だし、誰かの期待に添おうとする考え方ばかりじゃ疲れちゃうからね。



フミカが私を思って森下さんに話を通してくれた事で、

森下さん直々にラジオのパーソナリティーとして私が復帰するかも知れないと番組側のスタッフにも話をしてくれたそうだ。





(なのに…)



___私は断った。





元からラジオ番組のパーソナリティーには戻るつもりは無かったし、

フミカがこの前誘ってくれた時もNoの返事を出した。



ここに来たのも、修学旅行費が期日までに余裕を持って納められるのか不安だった私を見兼ねて、

フミカが森下さんと話せば良いと作ってくれた場だ。




(きっと森下さん、私が復帰すると思って、その返事とか聞きに来てくれたんだろうな…)




一瞬でも元居た仲間が戻って来るかも知れない、なんて事を耳にすれば、


どう考えてもその先の未来図には森下さんとフミカ、

そして私が仲良く番組を作っている図を思い浮かべるだろう。





そう考えを巡らせれば巡らせる程、

私の心中は言いようのない痛みが全面いっぱいに染み渡って響く。



モリシタ
あなたちゃんは何でも卒無くこなす器用者だから、周りからも色々と頼まれたり、期待されちゃうと思うけど、
モリシタ
オジサン的には、少し頑張り過ぎちゃうあなたちゃんには適度に息抜きして欲しいかな。
あなた

だから、森下さんはオジサンじゃないですって。

あなた

それに、今は充分なぐらい息抜きさせて貰っています。

モリシタ
そっか。それなら良かった。



穏やかに笑った森下さんは、

その後、私に車に乗るように促し、


『コンコン』


と、車の窓を小さくノックした。





慌てて窓を開けると、

森下さんが吹き付けた夕暮れの風にソフトハットが飛ばないように頭上で抑えながら、

私と視線を合わせる。


モリシタ
久しぶりに話せて楽しかったよ、今度はゆっくり何処かに遊びに行こうね。
あなた

勿論です!

モリシタ
フミカちゃんと、



『チラリ』


モリシタ
そっちの彼も誘って、ね?




運転席に座る天野くんに目配せをする森下さんに、

私は目を丸くして聞き返す。


あなた

フミカは良いとして、なんで天野くんも

モリシタ
やだなぁ、あなたちゃん!隠さなくたって良いって!
あなた

モリシタ
あなたちゃんの彼氏でしょう?
あなた

そっ、

あなた

そんな訳ないじゃないですか!!!!

モリシタ
あ、あれ?違うの?
モリシタ
僕ちょっと嬉しかったのにぃ…(シュン)
あなた

違いますっ!!!!!

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