数日間のオリエンテーションを終え、
久しぶりの現場入り。
事前に頼まれていたヘアカットとカラーの為に、
予定時刻よりも四時間前に会社に行けば、
そこにいたのはユンギさんだった。
( しまった… )
マネージャーさんにメンバーの誰のカットをするのか、
ちゃんと確認していなかった自分を責めたくなった。
ユンギさんの顔を見るなり、
私は忙しさを理由に先日のジョングク君の告白すら忘れていた事に気付く。
会議で次のコンセプトに合わせたヘアメイクは既に決まっていたので、
それに影響がない範囲でのカットやカラーを行う許可を得ている。
早速ユンギさんの髪に触れながら、
『あ~久しぶりだな~。』と現場の良さを再確認していたのも束の間。
少し不機嫌な彼の声が、
私の呑気な空気を切り裂いたのだった。
鏡越しに見るユンギさんは、
数日前の私をからかうユンギさんとは別人のような、
それはそれは驚く程の他人行儀であった。
敬意を払ってくれていると言うより、
あの日の冷たさを敬語という壁で表しているようにしか思えず……居た堪れない。
そんな謝り方なら、
してもらわなくて良かった。
あの冷たさは今もここに残っているじゃない。
そもそも謝って欲しいとも思っていなかった。
自覚に欠けた行動を取っていたのは私だったでしょ。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。