第43話

妬み嫉み
3,235
2019/03/19 20:52
私の名前と顔が世間に公表されてから一週間経った。


正直に言うと、
大騒ぎになるのは目に見えているのに、
何故公表するのか皆目見当もつかなかった。



そして洗礼とも言うべき公式HPがパンクする騒動。

要するに炎上。

会社に届く私宛の誹謗中傷や殺害予告のお手紙。


極一部の人達なんでしょうけど、
怖いのでエゴサーチはやめておいた。


覚悟はしていたつもりだけど、
やはりメンタルには来るものがある。


人から目に見える殺意を向けられたのはこれが初めてだったし、
仕事に対する今後の不安が駆り立てられた。


逆に私を応援しようとしてくれるペンの方がいたりするのも知っていたが、
ヘアメイクを仕事にしようと思っている人達への勇気になったりしている事や、
BTSのみんなが私が落ち込まないように色々とあの手この手で助けてくれる事等が、
今の自分をこの仕事に繋ぎ止める理由になっていた。



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ジミン君から貰った万年筆をスーツの胸ポケットに大切にしまって、
深呼吸をする。


いざ、某美容系専門学校で行われる講演会へ。



未だかつて無い大きな拍手が私を迎えてくれた。


客席にいるのはこの学校に通う生徒。


私がこうして羨望の眼差しを向けてもらえるのは、
間違いなくBTSのみんなのおかげだった。



一時間の講演。


途中質疑応答なんかもあって、
初めてにしてはまあまあ良かったんじゃないだろうか。


有意義な時間だったと思う。




( 少しでも若い子達の役に立てれば、何かしら心に引っかかることがあれば、いい………… )



人は死に際等がスローモーションで見える事があるらしい。


私は今まさに、
講演会が終わって階段を降りていた。


下に車を待たせていたから急がなくちゃいけなかったんだ。


あんたなんか彼らに必要ない



「「「きゃー!」」」
「あなたさん!」
「人が落ちたぞ!」
「落とされたんだ!そいつを捕まえろ!」
「救急車!」



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