月灯りが小窓から差し込むくらいで部屋には電気が通っておらず、薄暗い部屋。
コーチは、膝を抱えて床に座り込む。
そして、あの日のあの時の事を思い出していた。
コーチは膝を抱えて、身を屈ませそのまま目を閉じる。
どのくらいの時間が経ったのであろう。
何度か名前呼ばれて、気づくと重たい瞼をゆっくり開くコーチ。
扉が少し空いて…そこから灯りが漏れている。
コーチは恐る恐るドアの近くに近寄る。
外を覗くと…
そこにはジェシがいた。
コーチは躊躇っていた。こんなかたちで屋敷を出ていくのが不本意で…。
出来ればみんなに見送って欲しかったなと、この後に及んで思っていた。
動かないコーチを引きずり出してジェシが裏庭まで連れていく。
コーチは立ち止まり、ジェシと目を合わせる。
ジェシもコーチを見つめる。
そして、ふたりは惹かれ合うようにキスを交わす。
小声で話すとジェシはコーチをぎゅっと抱きしめる。ジェシの背中に手を伸ばしてぎゅっと抱きしめ返すコーチ。
ジェシは名残り惜しみながら、コーチを送り出す。
コーチは度々振り返りジェシをチラッと見ながら、ホクトの元に向かう。
ホクトはコーチの手をぎゅっと握って小走りに歩き出す。
月が丸く輝く夜道をふたりは歩く。
そのあとは特に会話もなくふたりは歩く。
しばらくして、ホクトの家に着く。
コーチのお腹の音がぐぅ〜っとなる。
コーチは恥ずかしそうにお腹を抑える。
ホクトに煽られ、風呂場に向かう。
コーチはシャワーを借り、出てくるとパンとスープがテーブルに並んでいた。
目を輝かせて席につくコーチは、いただきまーすと手を合わせて食べ始める。
って言葉を出した瞬間。
ふと、サンドイッチを盗み食いしたジェシの事を思い出す。
そして、去り際にキスをしたことも思い返す…。
コーチの表情を見てホクトは気遣いの言葉をかける。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。