?「予想外ね。こんなはずじゃなかったのだけど。」
?「でも、死んじゃったもんはしょうがないじゃろ。」
?「そうですね…。あ、どうせならあの世界はどう?」
?「ああ。いいかもしれぬ。たしか地球でアレをのヨんだ者がおったの。」
?「ええ。そうみたい。」
?「この娘はその存在を知っているのかね。」
?「そこまでは分からないわ。でも、あれはあれよ。」
?「……なら、転生先はここでいいじゃろ。」
?「ええ。今後どうなるのか楽しみだわ。」
何やらごちゃごちゃとうるさい声で意識が戻った。
意識は戻ったけどそのうるさい人達はいない。
と、いうか私……
なんでいるの?
多分あの時、私は死んだはず。
死んで、それから今起きた。
それしかわからない。
……意味がわからない!!
薄ら視界が開いた。
最初に見たのは見知らぬ天井だった。
随分と低い位置で仰向けでいるらしい。
…色々おかしいけど私多分来世に来たんだと思う。
色々信じ難いところはあるけど、それ以外に思いつかない。
だってこの天井、病院の天井でもないし私の家でも部屋でも教室でもない。
ましてや、日本ですらないかもしれない。
天井にかかっているのは電気ではなくてシャンデリアなのだ。
私が見てきた偽物シャンデリアではなくて、ちゃんと火が灯っている。
火にしてはだいぶ明るい気もするけれど。
ヨーロッパなのか?
それとも…違う世界に来たのか?
?「奥様!旦那様!アリア様がお目覚めになりました!」
?「本当か!?」
?「アリアちゃん!?」
(……びっくりした……なんだ………この人たち…)
そこにはメイドのような人とドレスを着ている女の人と中世の貴族の人が着るような服を着た男の人が私を笑顔で見下ろしていた。
メイド(仮)の人は多分、まだ20前。
ドレスの女の人は長い薄い紫色の髪をおろしている美人な人で、たぶん20代なかばくらい。
男の人は薄い茶色の髪で女の人と同じくらいの年齢のイケメンさん。
(なんだ……)
さっき、メイド(仮)の人が2人のことを旦那様と奥様って呼んでいたからたぶん夫婦なんだろう。
(…………ちっちゃい…………)
自分の手をばたつかせて見るととてもちっちゃい手だった。
死んだはずなのに生きていて、しかも、日本………いや、世界すら違うように思う。
ということはやはり、
(これが、転生…なのかな…)
**
多分、転生してから1週間くらいがたった。
この1週間でわかったことは
・私の家は裕福(貴族?)
・母の名前がカイリー
・父の名前がルーカス
・私には2つ上の兄がいる
そして、
私の名前はアリア・ルイーズ・ベネット
最初、わかったときは違和感があったまま放置してたけど、最近になって
ついこないだクリアした乙女ゲームの悪役令嬢の名前と同じだったという事に気がついてしまった。
よりによって”悪役令嬢”
なによりも、
ライラック紫色の下に向かってカールがかっている髪と、強気なマゼンダの瞳。
そして話さなければ美人なこの顔が確信づけていた。
転生して2週間で私の人生、穏やかのおの字も無くなった事が証明された。
10.1修正終
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。