「……僕は、リアムっていいます。」
あ、この子は攻略キャラじゃない…。
それより、
なんだかすごく堅いし、暗い。なんでだろう。
『いいお名前ですね!リアム様はなんでこんなところに?』
「様なんて付けないでください。僕は子爵ですから。」
意外だ。今年は子爵家の子が入ってくるのか。たぶん、この学校に来るのが侯爵から上の貴族なのを分かってるんだろう。
だから私にも様付けして欲しくないんだ。
『・・・子爵だからって避けたりバカにしたりするようなことはしませんよ。』
驚いた顔をするリアム。
ゲームのアリアだったらイジメそうだけど今のアリアはゲームのアリアじゃない!
「……面白い人ですね。」
『そ、そうですか?』
確かに、貴族は王子や私の親みたいに全員が穏やかで優しいわけじゃない。むしろ、上下関係を気にする人がおおくて、だいたい男爵くらいの貴族だと上位貴族に虐められたり避けられたりするのだ。
この学校だとあきらかに侯爵から上の貴族の方が多いからリアムはほんとは来たくなかったのかもしれない。
『この学校にはどこから行くんですか?』
「おばあちゃん…………お祖母様の家が王都にあるのでそこから通うことになりました。」
(ああ、そういうことか)
それにしてもまだ堅い。どうにか素を…………どうにか堅くならずに普通に接して欲しい。ここは、そのまま言ったほうがいいかな。
『あの、そんなに緊張しないでください!』
「え……でも…」
いきなりそんな事言われても無理だよね。
(よし)
『なら敬語をやめましょ。』
「……え」
『敬語使うの嫌なのでタメ口にしましょう?』
熱くなりすぎると引かれそうだから優しく笑って言ってみる。
「いいよ。じゃあアリア様もタメ口ね。」
『あっ。』
そういえば、私が敬語のままだった…。
「ふふっ」
リアムが笑っていた。
理由はともあれ笑顔が見れて嬉しい。
『リアムも私の事を様呼びするのもこれからナシね。これで友達!』
「………うん!」
また笑顔を見せられて私もつられて笑った。
<hr>
『あ、私このあと用事があるから先に帰るね!明日から頑張ろうね!』
「うん……………そういえば、クラス何組?」
『あっ、Aだよ。』
「……そっか、僕はBなんだ。まあ当たり前だよね。」
無理して笑っているように見える。
小等学校だと入学試験がないから成績でクラスが分けられるのではなく、貴族の位や権限で分けられる。
子爵のリアムと公爵の私が一緒なわけがない。
『残念だね。でも、クラス2つしかないし休み時間いくらでも会えるよ!』
「うん。」
『じゃあねー!』
<hr>
中庭みたいなところをぬけだして、会場に戻る。
(あれ、まだ親に言ってないじゃん!)
そういえば、まだ親にイアンと王宮でお茶しに行くことを言っていない。
リアムのことで忘れてた。
急いで会場に戻る。
会場はさっきよりだいぶ、人が少なくなっていた。
もう帰った人達もいるみたいだ。
いまから帰る人もいて学校の前は馬車が何台もあった。
『あ、いた!』
親のところに行こうとすると知らない人に行く手をはばまれた。
『え、』
そこにはルーシーを真ん中に女子が5人いた。
なんだか怖い。
「アリア様ですよね。このあとお時間ありますか?」
『…えっと、このあと用事があるので…。』
「それはすぐですか?」
(なになに、怖い)
『え、まあそうです。』
「誰かとお茶でもするのですか?」
人の用事を聞く人ってだいたい悪役だよね。。。
じゃなくて、すごく不機嫌そうな顔で睨まれながら聞かれる。
女子の闇は怖い。
『はい、そうですよ。』
ここは、わざと笑顔で返しとく。
そして何人か舌打ちしたのが聞こえた。
でもあえて言わないことにする。
「誰とですか?」
やっぱり悪役って…。
ルイスと同じことを聞かれて少し呆れた。
だからルイスに返したことをそのまま言う。
『小さい頃からの知り合いですよ。』
と。
「そうですか。その人のお名前は?」
ルイスよりタチが悪い。
失礼なことを言ってるのにきずいているのか。それともきずいていないのか。
どちらにしろ、名前は出したくない。
私が言いつまっていると聞き覚えのある高い声がした。
「アリアちゃーん、行くわよ。」
『あ、お母様。すみません、もう帰る時間なので。』
「あっ、ちょっと!待ちなさいよ!」
ルーシーが私を引き止めようとする。
「ルーシーちゃん、公爵様だからヤバいよ。」
取り巻きの誰かが小声でルーシーを止めているのが聞こえた。
こういうとき公爵って有利なものだ。
そして女子から睨まれながら親のもとへとかけよる。
「アリアちゃん、お友達はいいの?ごめんね、話していたのよね。」
『大したことじゃないから大丈夫です!』
「あら、そうなの。」
『あの、お母様?』
言わなくちゃ。
「どうしたの?」
母が優しい笑顔を浮かべる。
『このあと王宮に用事ができたのですがいってもいいですか?』
「あら、別にいいわよ。なら馬車を………」
『その必要はないです。イアン様が一緒に乗ろうと誘ってくれたので。』
「ふふっ。そうなのね!ならお父様に伝えておくわね。あとこの時間からだと遅くなっちゃうから王宮に泊めてもらいなさい。」
(……………へ?)
予想外だ。母はニヤニヤしてる。
この人は……
(はぁ…)
「はい、これ持って行ってちょうだい。これを王様に渡すのよ。」
いつのまに書いたのか知らないが手紙を渡された。
『は、はい。』
「では行ってらっしゃい。
王子ならたぶん舞台側にいると思うわ。」
すんなりだな。
『はい!では!』
会場にまた戻るともうルーシー達の姿はなかった。帰ったんだと思う。
会場内はもうほとんど人がいなかったので王子を見つけるのはすぐできた。
『イアン様!』
声に気づいてもらえたらしく、笑顔で手を振ってくれた。
「アリア!もう馬車は来てるよ。」
そういえば疑問に思ったのだが、王様は来ていないのだろうか。
お后様はいたけど。
息子の入学式?なのだから来るのが普通ではないのかな。
『王様はいないのですか?』
「え、ああ。今日は朝から仕事があったから来れなかったんだ。でも多分、もう家に帰ってると思う。」
『そうなんだ…。』
なんか、いろいろあるんだな…。
「じゃあ行こう!」
『うん。』
「乗っていいよ。」
(す、凄…)
馬車の大きさは公爵家の馬車とさほど変わりはないけどとりあえず、豪華だ。
いや、男爵とかからしたら私の家のも凄いのだろうけど…。
馬車の中に入るともうすでにお后様は座っていた。
「アリアちゃん!久しぶりね!しばらくあってないうちにすごく女の子らしくなったわ!」
『ありがとうございます。』
相変わらず、私の母とテンションが同じなのは変わらない。
適当に挨拶とかお喋りしてるといつのまにか馬車は動いていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!