資料を抱えた状態で , 照は惚れ気話を始めてくれた .
ただ一つ , 僕は気にかかる点があった .
その時 , " 阿部さん!!"と大きな声で呼ばれて ,
興味深かった内容が遮られた .
でもそれも仕方ない , 仕事中だから … 笑
二言だけを発して , 照は
部屋の中に戻って行った .
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部長が " 時間より質 " という考えの方で
本当に助かったと思う .
んー , と喉を鳴らしながら , 資料完成で
疲れ切った体をゆっくり伸ばした .
早く会いたいな .
声が聞きたい , 姿が見たい .
会社を出たら , 僕は走った .
" 疲れた " よりも " 会いたい " が勝って .
ただひたすらに足を回転させた .
エレベーターの前まで来ると ,
僕は息を上がらせながら乗り込む .
" 阿部くんのフロアで待ってるよ " と書かれた
メールを開いて , 到着する事だけを祈った .
そして , エレベーターの扉が開くと ____
にこりと笑みを浮かべた彼が ,
寂しかったといわんばかりに抱きついた .
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!