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2021/12/18

第11話

銀河鉄道の夜七 北十字とプリオシン海岸2
旅人たち
もうじき白鳥の停車場ていしゃばだねえ
旅人たち
ああ、十一時かっきりにはくんだよ
 早くも、シグナルのみどりの燈と、ぼんやり白いはしらとが、ちらっとまどのそとをぎ、それから硫黄いおうのほのおのようなくらいぼんやりしたてんてつの前のあかりがまどの下を通り、汽車はだんだんゆるやかになって、まもなくプラットホームの一れつ電燈でんとうが、うつくしく規則きそく正しくあらわれ、それがだんだん大きくなってひろがって、二人はちょうど白鳥停車場ていしゃじょうの、大きな時計とけいの前に来てとまりました。
 さわやかな秋の時計とけい盤面ばんめんには、青くかれたはがねの二本のはりが、くっきり十一時をしました。みんなは、一ぺんにおりて、車室の中はがらんとなってしまいました。
〔二十分停車ていしゃ〕と時計とけいの下に書いてありました。
ジョバンニ
ジョバンニ
ぼくたちもりて見ようか
ジョバンニがいました。
カムパネルラ
カムパネルラ
りよう
二人ふたりは一にはねあがってドアをび出して改札口かいさつぐちへかけて行きました。ところが改札口かいさつぐちには、明るいむらさきがかった電燈でんとうが、一ついているばかり、だれもいませんでした。そこらじゅうを見ても、駅長えきちょう赤帽あかぼうらしい人の、かげもなかったのです。
 二人ふたりは、停車場ていしゃばの前の、水晶細工すいしょうざいくのように見える銀杏いちょうの木にかこまれた、小さな広場に出ました。
 そこからはばの広いみちが、まっすぐに銀河ぎんが青光あおびかりの中へ通っていました。
 さきにりた人たちは、もうどこへ行ったか一人ひとりも見えませんでした。二人ふたりがその白い道を、かたをならべて行きますと、二人ふたりかげは、ちょうど四方にまどのあるへやの中の、二本のはしらかげのように、また二つの車輪しゃりんのように幾本いくほん幾本いくほんも四方へ出るのでした。そしてまもなく、あの汽車から見えたきれいな河原かわらに来ました。
 カムパネルラは、そのきれいなすなを一つまみ、てのひらにひろげ、ゆびできしきしさせながら、ゆめのようにっているのでした。
カムパネルラ
カムパネルラ
このすなはみんな水晶すいしょうだ。中で小さな火がえている
ジョバンニ
ジョバンニ
そうだ
どこでぼくは、そんなことをならったろうと思いながら、ジョバンニもぼんやり答えていました。
 河原かわらこいしは、みんなすきとおって、たしかに水晶すいしょう黄玉トパーズや、またくしゃくしゃの皺曲しゅうきょくをあらわしたのや、またかどからきりのような青白い光を出す鋼玉コランダムやらでした。ジョバンニは、走ってそのなぎさに行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河ぎんがの水は、水素すいそよりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかにながれていたことは、二人ふたり手首てくびの、水にひたったとこが、少し水銀すいぎんいろにいたように見え、その手首てくびにぶっつかってできたなみは、うつくしい燐光りんこうをあげて、ちらちらとえるように見えたのでもわかりました。
 川上の方を見ると、すすきのいっぱいにはえているがけの下に、白いいわが、まるで運動場うんどうじょうのようにたいらに川に沿そって出ているのでした。そこに小さな五、六人の人かげが、何かり出すかめるかしているらしく、立ったりかがんだり、時々なにかの道具どうぐが、ピカッと光ったりしました。
二人
行ってみよう
二人ふたりは、まるで一さけんで、そっちの方へ走りました。その白いいわになったところの入口に、〔プリオシン海岸かいがん〕という、瀬戸物せともののつるつるした標札ひょうさつが立って、向こうのなぎさには、ところどころ、ほそてつ欄干らんかんえられ、木製もくせいのきれいなベンチもいてありました。