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第1話

僕のせいだ
135
2021/05/30 14:25
閲覧前の注意

・ほんのちょびっとだけ監督生(性別不詳ネームレス)が出てくる
・ディアソ推しで且つ推しが死ぬのが許せない人は見ないほうがいいです
・ディアソ組についてはふわっとした解釈。マレウスもなんかふわっと書いてるのでお気をつけ遊ばせ
・吹き出しの概念は南アメリカに旅行に行きました
・オバブロ妄想
・7章こぁぃ
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燃え盛る豪炎の中、彼は長き眠りより目を覚ました。

上空に広がるは灰より黒き雷雲。雷が時折地面を打ち付ける衝撃が地面を伝って傷ついた体に響き渡る。

ゆっくりと。ゆっくりと、顔をあげ、そして足元の子を眺めた。

顔の辛うじて残るその焼死体は、彼に寄り添うようにしてこの抉れた地面に横たわっていた。

「…人の…子…?」

はっとして周りを見渡した。もう全身の痛みなど気にしている暇などなかった。

「…誰か。誰かいないのか?セベク!シルバー!────リリア!!」

震える体でなんとか地面に両足をつけ、喚き叫びながら周りを走り回る。

生きた者などいなかった。いつも朝からけたたましくも熱のこもった声を上げるあの半妖の護衛も、いつも眠たがりのあの人間の子供も。
いつも彼をそばで見守り、間違いを犯せば道を正してくれた、あの妖精も。

有るのは、彼らの抜け殻だけ。


頬に雫が伝った。焼けた肌に染みるその一滴は、やがて2滴3滴と増えていく。

大地に響く唸り声と共に、彼の焼け焦げた背中から四枚の龍の如き立派な翼が顔を出した。

三人の抜け殻を抱えて、翼から血が滴るのも気にせずに雷雲の囲う空へと舞い上がる。

「誰か!誰か残っていないのか!治癒魔法を使える者は!誰か、どうか…」

彼の叫びは、誰にも届くことはなかった。

当たり前だった。もう地上の生は、全て彼が滅ぼした。





ねぇ
ねぇ
僕を一人にしないで
もう一人は嫌だ
誰か。誰か。
なんだってあげる。僕の炎も、翼も、力も、権力も。
だから。だから。
どうか助けて。
彼らは何も悪いことはしていない。
彼らはいつも真っ直ぐだ。
セベクはいつも声が大きい。
けれどそれが僕の朝の光。
シルバーはいつも眠っている。
けれどやるときはやる子なんだ。
リリアは昔多くの人を殺した。
けれど死んでいい者じゃない。
僕はどうなってもいいから。
だから──



…なんで。なんで誰もいないの。
何でもあげるって。言ってるのに。
ああもう嫌だ!こんな酷い世界、滅ぼしてしまえ!
僕から友達も家族も何もすべて取り上げるなら、僕がこの世界を壊してやる!







一匹の龍の咆哮が、荒れ果てた世界に響きわたる。
怒りに飲まれた彼を止めるものは、もう誰もいない。
彼自身にも、止められない。
彼の炎は、愛する者の肉体を焼き、大地を、海を、空を、世界を焼き。

──そして己すらも、滅ぼした。

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