はじめまして。あれ、あなた。
どこかで見たことがありますね。
あ、Prologの時に会いましたね。
私の言葉に溺れましたか?
改めて自己紹介します。
私は名乗るほどの者ではございません。
このSTORYをあなたに届ける役を務めております。
ナレーション、と捉えてくれたら光栄です。
…え?この物語を作ってる人だろって?
さぁ。どうでしょうね。
あなたの人生(STORY)だって誰が作ってるのか分からないようにこのSTORYだって何かのイタズラなのかもしれません。
あなたを私の導きで夢の中へ誘いましょう。
満月が、そう言ってますよ。
誰かが息を呑む。
しんと静かな教室にはその音が繊細に皆の耳へと伝わる。
この場には妃奈月とクラスメイトの女子数人が睨み合いっ子をしています。
楽しい雰囲気はみじんもないです。
沈黙を打ち破ったかと思えば5分前にも聞いた言葉と同じ。
妃奈月はまた俯きます。
今まで言葉を発さなかった妃奈月が声を出しました。
震えています。が、目は真剣さを代弁してくれています。
目は口ほど物を言う といいますからね。
この少女はクラスからも家族からも邪魔者扱いをされて来ていました。
彼女が信じるのはただ一つ。
魔法.+*:゚+。.☆
そんな摩訶不思議な事がこの世にある訳がありません。
それくらいは妃奈月だって頭では理解しているのです。
もし、魔法が使えたのならこの状況から救い出して。
誰でもいいから来て。
彼女の心は今日もこのように叫ぶのです。
言い訳になっていません。
クラスメイトの女子の顔にそう書いてあります。
彼女は本当のことを言ってるつもりですがクラスメイトの女の子たちは腹を抱えて笑います。
その言葉に妃奈月はどこかブチッと切れたように彼女達を睨みます。
その言葉に妃奈月の体は咄嗟に動きました。
いけまけんね、いくらなんでも手を出そうとしてないけまけんよ。
関わるのはめんどくさいのに、妃奈月ったら考えなしですね。
私が割り込みますか。
えいっ!
私の魔法が効いたらしく、彼女の顔の前で妃奈月の拳がカチッと固まったように止まりました。
妃奈月は悔しそうな顔をしています。
彼女達はそう言って教室から逃げるように出ていきました。
妃奈月の目からポタポタと涙が流れました。
妃奈月が家に帰る頃には日も落ちて夜です。
さぁ、眠りなさい。
夢の中であなたをお誘いしましょう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。