*11*
っ//!!!……………なんで…?
彼は私を抱きしめ、
ヒ:良かった…無事で…
と言うと、もう少しだけ キツく抱きしめた。
優しい…
でもそれが……辛い。
〇:私が…『探してる人』かも知れないから?死なれたら困る?もしかしたら、殺人容疑で捕まっちゃうかも知れないもんね!不法侵入だし!痴漢だし!ストーカーだしッ!!!
私なんかに…近づかないで……
どうせ皆んな…居なくなっちゃうんだから。
ヒ:そんな事…せんから。
〇:…は?
ヒ:〇〇の側に居りたいねん。
〇:人探しとか何とか言って!あなたは私にキスしたいだけでしょ!!!
お願い…だから……
私の側に居たいなんて…
言わないで。
ヒ:『今は昔…
っ!!!なんで?!!!
ヒ:竹取翁といふものありけり』
〇:どうして それを?
ヒ:好きやろ?
〇:えっ?
ヒ:『竹取物語』…『かぐや姫』
*12*
私は幼い頃の思い出が無く…
母に教えられたのは、この『かぐや姫』をよく読み聞かせてもらってた事くらい。
母:いつか〇〇も、素敵な人がお迎えに来るのよ?
そんな母の言葉が印象的で、言われた時の事を、鮮明に憶えている。
そんな母も、私が20歳を迎えると、父の後を追うように、天国へと旅立ってしまった。
ヒ:俺が探しとるのは………
吸い込まれそうな 真剣な眼差し…
ヒ:かぐや姫や。
やっぱりヤバい奴や〜んッ!!!
*13*
〇:そりゃあ、分かるでしょうね?本棚に『竹取物語』や『かぐや姫』ばっかり並んでるんだからね!!!
ヒ:へっ?俺、ウソ付いとらんで?〇〇が姫やと思うたから…
〇:いい加減にして!!!
♪〜ピンポーン〜♪
え、誰だろう?
渋々、インターフォンの画面まで行くと、管理人さんのマドカさんだった。
ヤバ!!!
うるさかったかなぁ??
〇:お願い!静かにしててよ!!!
私は彼に そう念を押すと、玄関まで行き、一呼吸整えてからドアを開けた。
〇:は〜い!どうされました?
マ:あ〜〇〇ちゃ〜ん?なんか騒がしいって苦情があったんだけど…誰か来てるの?
〇:えっ?いや、あの…
ヒ:あ、どうも!こんばんは!
〇:え"ッ!チョット出てこなくてイイよっ!
マ:あら、今晩は〜〇〇ちゃんの彼氏さんかしら??
〇:ち、違いますよぉ〜!
待ってよぉもぉ〜!
こうなるから嫌だの!!!
*14*
ヒ:〇〇の兄貴です!こう見えても、俺ら双子なんすよ!…でも、男女やし二卵性やから、そんなに似てへんけどww
マ:あら、そうなの?
ヒ:でもほらっ!瞳の色!!!
彼が肩を組んできて、私の顔の隣に自分の顔を並べた//
ヒ:同じやろ?
マドカさんは、私と彼の瞳を交互に見ると「ホント、変わった色ね〜」と感心した。
ヒ:琥珀色って言われてます。月の色なんです!
マ:あらっ!なんだか素敵〜♡
ヒ:ありがとうございますw
マ:今夜は泊まりかしら?
ヒ:はい!
〇:エッ!
ヒ:ええやろ?今日 疲れてんねん!
マ:まぁ、いいじゃないの〜たまには兄弟水入らずよ!w
ヒ:ですよねぇ〜ww
玄関の扉を閉めると、急に静まり返った。
泊まるだって?
いや、それよりも…
同じ…琥珀色の瞳。
*15*
瞳の色。
だからあの時…
彼が目を覚ました瞬間に、何かに撃たれたような衝撃を受けたんだ…
〇:ねぇ?
ヒ:ん?
なぜか、リビングのソファーでくつろいでる彼の側まで寄って、瞳を覗き込んだ。
『月の色』
私と同じだ。
自分以外では、初めて見た。
綺麗…
近づく瞳…
そっと触れる てのひら…
感じる吐息…
ヒ:ええ?
〇:へっ?……イヤッ!!!
キス寸前の彼の顔を、両手で押し返した。
あっぶなぁ〜〜!!!
もう少しで、思うツボだったぁ〜〜!!!
ヒ:な〜〜んでやねん!確認させてぇぇぇ?
〇:何が確認よ!早く帰って!!!
ヒ:え?泊まるよ?
〇:はぁ?本気でバカなの?
ヒ:っ!バカは言うたらあかんッ!!!
〇:・・・典型的。
ヒ:は?何がや!
〇:ズカズカ踏み込んでくるって言うか〜図々しいのよ!関西人は!
ヒ:っ!はぁァァァァァァんッ!!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。