第68話

『君月』331〜336
160
2020/05/12 10:53

*331*




ヒロは、私を迎える準備とか言ってたけど…



そういう、結婚式みたいな事、するんだろうか?



いやいや、結婚式って…
恋愛しないルトゥが、結婚とかないのか。






〇:あ〜〜どうだろう?、、彼の故郷に帰るから…

新人:エッ!彼氏さん、外国人なんですか?

〇:、う、うん…まぁ、そんなとこかな、、





正式には、月の人なんだけどね。




ヒロ…
早く会いたいよ…

ヒロの事を考えるたびに、想いが募っていくのが解るんだよ…

この胸の苦しさ。



ヒロも感じてるよね…?






データを見ながら、新人ちゃんに一通りの説明をして、その日の仕事は集中して終わった感じだった。














帰り道。




ト:〇〇ちゃんじゃな〜い!!!

〇:あぁぁ〜〜トキさ〜ん!!!





その夜は、満月に近付いてる月がキレイで、トキさんのお庭が、水滴とのコラボでキラキラと反射しあっていて…







*332*





〇:はぁぁぁ、、、ホントにキレイ…





自然と ため息が こぼれる程だった。



遠い宇宙からの光が、こんなにも心に響くなんて…



月はそんな事、思っても居ないだろうな。



ただそこに有るだけで…



自分を持たないのだから…





こんなにも…




キレイなのに…






涙が溢れてきた。









ト:あらあら〜、、地球で言う『マリッジブルー』かしら?




トキさんはポケットから取り出したハンカチを、私の頬にそっと当てた。





ト:今日、ヒロくんは?

〇:今、、月へ帰ってて…

ト:そう…それは淋しいわねぇ?

〇:そうなんです。、、一年前、この場所で出逢ったんですね、、、私達…






去年も私は、心が導かれるように、


この素晴らしい お庭に 吸い寄せられ、ヒロを見つけた。







それが…






運命なんだとも、知らずに。









*333*





〇:ヒロにッ……逢いたい…ッ……






止まらない涙。






ねぇ、ヒロ?

感じてるんでしょ??


私が どれほど、ヒロを愛しく想っているのか…



分かってるなら…






返事してよ…










私の中、、不安ばっかりだよぉ…


















御宅へ招いてくれたトキさんが、とても珍しく、手に入りにくい赤いハーブティーを入れてくれ、

それは、心を落ち着かせる効果があるんだと、教えてくれた。





〇:トキさん?、、この紅茶…譲ってもらえませんか?






ヒロにも飲ませてあげたい。





ホォ〜っと、温かさが沁み渡る感じの この紅茶を飲んだら…


ヒロの気持ちも落ち着いて、私達は幸せなんだって、気づくはず!




そんな気がしてならなかった。












*334*


カ:私、後ろにしようかなぁ〜

藤:えぇぇぇ〜〜!

濵:、、俺じゃ嫌か…

藤:ふふっw いじけてるしw 濵ちゃんで、ええにしたるっ!

濵:や、フォローになっとらんからな?w






私以外は、楽しそうにしてる。

オモテ面だけ。





ホントみんな…


有り難いな…




こうやって、私の為に来てくれて、
こうやって、明るく振る舞ってくれる。



なんかもう…泣きそうだよぉ!





カ:〇〇…?、、大丈夫だよ!、ね?

〇:うん。




両親のお墓参りも、これが最後。

皆んなとの思い出も、コレが最後。





〇:ありがとう…





涙目の私を、、、


カレンは強く、抱きしめた。





藤:よしゃっ!しゅっぱーつッ!!!





藤井くんの運転も最後。


何もかもが最後の一日が、動き出した。







*335*



濵:やっぱ俺…

藤:濵ちゃん…!、、大丈夫やから!

カ:私達も一緒なんだし!





チカラが無くなったせいか…

先輩の言動までもが…弱々しい。






人間なんて、弱いだけ。


何のチカラも無ければ、守る術も知らない。





それでも私達は、信じてやまない。






〇:ヒロなら…解ってくれる…






ねぇ、ヒロ?


逢いたい気持ち…


届いてるんでしょ?







どんなに頑張っても…


ヒロからの通信は無いままだった。








ウチのお墓は、山の中にある。

迷子になりそうな、けもの道みたいな道があるだけで、

辺りには、点々と、お墓が立っている。



私は、花を生け、お線香に火を付けた。



しゃがんで、手を合わせ目を閉じると、
フワリと暖かく、優しい空気に包まれている感覚がして、

ホッと、気持ちが解れていった。








*336*



お父さん、お母さん…

育ててくれて、本当に ありがとう。



本当は、大変なこと、たくさんあったでしょ?

もしかしたら、こんなに早く死ななくても良かったかも知れないのに…


たくさんの犠牲をはらってくれたこと、

月へ帰っても、
ずっと、ずっと、感謝して、生きていきます。


月に居ても、見守っていてくれたら、嬉しいな。





私は心で、たくさんの感謝を込めて、ありがとうを何度も繰り返した。





サヨウナラ…







お墓を後にし、私達は駐車場までの道を歩いていた。





濵:俺さぁ…〇〇のお母さんと、約束した事があってん…



〇:えっ?




私の後ろを歩く先輩。


歩きながらチラッと振り向くと、案の定、うつむいていた。




濵:病院でな、、たぶん、自分が危ないのを勘付いてて、、、俺に「〇〇を危ない目に遭わせないでやって?」って…

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