*331*
ヒロは、私を迎える準備とか言ってたけど…
そういう、結婚式みたいな事、するんだろうか?
いやいや、結婚式って…
恋愛しないルトゥが、結婚とかないのか。
〇:あ〜〜どうだろう?、、彼の故郷に帰るから…
新人:エッ!彼氏さん、外国人なんですか?
〇:、う、うん…まぁ、そんなとこかな、、
正式には、月の人なんだけどね。
ヒロ…
早く会いたいよ…
ヒロの事を考えるたびに、想いが募っていくのが解るんだよ…
この胸の苦しさ。
ヒロも感じてるよね…?
データを見ながら、新人ちゃんに一通りの説明をして、その日の仕事は集中して終わった感じだった。
帰り道。
ト:〇〇ちゃんじゃな〜い!!!
〇:あぁぁ〜〜トキさ〜ん!!!
その夜は、満月に近付いてる月がキレイで、トキさんのお庭が、水滴とのコラボでキラキラと反射しあっていて…
*332*
〇:はぁぁぁ、、、ホントにキレイ…
自然と ため息が こぼれる程だった。
遠い宇宙からの光が、こんなにも心に響くなんて…
月はそんな事、思っても居ないだろうな。
ただそこに有るだけで…
自分を持たないのだから…
こんなにも…
キレイなのに…
涙が溢れてきた。
ト:あらあら〜、、地球で言う『マリッジブルー』かしら?
トキさんはポケットから取り出したハンカチを、私の頬にそっと当てた。
ト:今日、ヒロくんは?
〇:今、、月へ帰ってて…
ト:そう…それは淋しいわねぇ?
〇:そうなんです。、、一年前、この場所で出逢ったんですね、、、私達…
去年も私は、心が導かれるように、
この素晴らしい お庭に 吸い寄せられ、ヒロを見つけた。
それが…
運命なんだとも、知らずに。
*333*
〇:ヒロにッ……逢いたい…ッ……
止まらない涙。
ねぇ、ヒロ?
感じてるんでしょ??
私が どれほど、ヒロを愛しく想っているのか…
分かってるなら…
返事してよ…
私の中、、不安ばっかりだよぉ…
御宅へ招いてくれたトキさんが、とても珍しく、手に入りにくい赤いハーブティーを入れてくれ、
それは、心を落ち着かせる効果があるんだと、教えてくれた。
〇:トキさん?、、この紅茶…譲ってもらえませんか?
ヒロにも飲ませてあげたい。
ホォ〜っと、温かさが沁み渡る感じの この紅茶を飲んだら…
ヒロの気持ちも落ち着いて、私達は幸せなんだって、気づくはず!
そんな気がしてならなかった。
*334*
カ:私、後ろにしようかなぁ〜
藤:えぇぇぇ〜〜!
濵:、、俺じゃ嫌か…
藤:ふふっw いじけてるしw 濵ちゃんで、ええにしたるっ!
濵:や、フォローになっとらんからな?w
私以外は、楽しそうにしてる。
オモテ面だけ。
ホントみんな…
有り難いな…
こうやって、私の為に来てくれて、
こうやって、明るく振る舞ってくれる。
なんかもう…泣きそうだよぉ!
カ:〇〇…?、、大丈夫だよ!、ね?
〇:うん。
両親のお墓参りも、これが最後。
皆んなとの思い出も、コレが最後。
〇:ありがとう…
涙目の私を、、、
カレンは強く、抱きしめた。
藤:よしゃっ!しゅっぱーつッ!!!
藤井くんの運転も最後。
何もかもが最後の一日が、動き出した。
*335*
濵:やっぱ俺…
藤:濵ちゃん…!、、大丈夫やから!
カ:私達も一緒なんだし!
チカラが無くなったせいか…
先輩の言動までもが…弱々しい。
人間なんて、弱いだけ。
何のチカラも無ければ、守る術も知らない。
それでも私達は、信じてやまない。
〇:ヒロなら…解ってくれる…
ねぇ、ヒロ?
逢いたい気持ち…
届いてるんでしょ?
どんなに頑張っても…
ヒロからの通信は無いままだった。
ウチのお墓は、山の中にある。
迷子になりそうな、けもの道みたいな道があるだけで、
辺りには、点々と、お墓が立っている。
私は、花を生け、お線香に火を付けた。
しゃがんで、手を合わせ目を閉じると、
フワリと暖かく、優しい空気に包まれている感覚がして、
ホッと、気持ちが解れていった。
*336*
お父さん、お母さん…
育ててくれて、本当に ありがとう。
本当は、大変なこと、たくさんあったでしょ?
もしかしたら、こんなに早く死ななくても良かったかも知れないのに…
たくさんの犠牲をはらってくれたこと、
月へ帰っても、
ずっと、ずっと、感謝して、生きていきます。
月に居ても、見守っていてくれたら、嬉しいな。
私は心で、たくさんの感謝を込めて、ありがとうを何度も繰り返した。
サヨウナラ…
お墓を後にし、私達は駐車場までの道を歩いていた。
濵:俺さぁ…〇〇のお母さんと、約束した事があってん…
〇:えっ?
私の後ろを歩く先輩。
歩きながらチラッと振り向くと、案の定、うつむいていた。
濵:病院でな、、たぶん、自分が危ないのを勘付いてて、、、俺に「〇〇を危ない目に遭わせないでやって?」って…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。