*201*
ドスンっ!!!
張っていた気が途切れると、急に床に崩れ落ちた先輩は、顔を上げることも辛そうに、息が速まっていた。
濵:…ハァ…ハァ…ハァ……ッ…
濵:なら………俺は……?
その声は、穏やかと言うより…
ただただ悲しく響いた。
濵:俺には居らへん…っハァ…ハァ………そんな人間…
先輩…
うつむく その背中に、そっと…
ガラスのシャボンに触れるほど…そっと、手を添えると…
フンワリと宙に漂い、掴んでなければ消えてしまいそうな先輩の想いを…
私は 掴んでいた。
〇:……私が居ます………
〇:私が……側にいますから…
ずっと避けてきた想いを…
ずっと嘘で覆ってきた想いを…
口にした。
*202*
〇:好きです…
濵:………へ?…なんて??
月とか…
姫とか…
会社とか…
どれだけの犠牲を払うのかとか…
そんなコト、全部 ぜんぶ…取っ払って……
〇:先輩の事が……好きです……
ずっとずっと、私を守ってきてくれた。
その事実は、私には大きくて…
濵:えっ…
〇:先輩が居なきゃ……きっと私の今はないから………
大切なんです。
傷つきながらも ずっと…
私だけを守ってくれた……貴方が。
抱きしめられた、その温もりが心地よくて…
愛されてるんだと、感じた。
その感覚は、久しぶりで…
お母さんの事を思い出し……
私にも まだ居たんだ…………家族が…
*203*
店の外に出た私は、タクシーを拾い、先輩を乗せた。
担がないと歩けないほど、体力を消耗した様子の先輩を…
今度は私が守らないと!
私は、辛そうな先輩を支えながらも、その温もりを前面に受け止められるコトに、幸せを感じていた。
先輩の家の前で、タクシーから降りると…
私達の真上に、キレイな三日月が見えた。
濵:…チョットだけ……補充するわ。
と、見上げた先輩は…
三日月の弱々しい月光を、胸いっぱいに吸い込んだ。
キランッ☆!!!
先輩の体から、流れ星のシッポのようなキラキラが、パッ!っと弾けた!
彼と…同じだ…
先輩はまだ…ルトゥなんだ……
こっちへ振り向いた先輩は、さっきとは別人の様に血色がよくなっていた。
*204*
その顔に安心した私に、ニカッ!っと笑うから…
〇:ふふっw ……あはははっ!………ッ…もぉ〜…ッ……
濵:笑っとるんか?泣いとんのか?w
〇:…ッ……だって…やっぱり……先輩は笑顔の方がいいなって……ッ…
濵:…お、お前//…そんな恥ずいコト……//
〇:や//…あのっ…//…ひ、久しぶりだったから!笑ってる先輩//
安心して…
泣けたんだ。
大切な人が、無事であるコトに。
でも…
私が、先輩の家に来た意味は なくなっちゃったな…
濵:あ〜//…よ、寄ってくやろ?//
〇:え、でも…もう先輩、元気みたいだし…
濵:…あ、やべっ!……まだフラつくぅww
なんて、ヘタな演技しながら、私に抱きつく先輩!
濵:な?帰られへんやろ?w
私の顔を覗き込みながら、イタズラっ子みたいな先輩を見たら…
*205*
〇:ふふっw …しょうがないなぁ〜//ww
そんな、ふたりきりの世界は、とても平和で…
濵:さっき言っとったのさ…ホンマ?
〇:さっきって、何の事ですか?ww
今日の出来事なんて嘘の様に、時間が流れた。
濵:せやから// 〇〇が言うてくれた!気持ちや//
〇:う〜ん?何の事ですかぁ〜?ww
濵:いやいや!笑うてるやんっ!
〇:ふふっw
濵:それ無しやわぁ〜!どっちなん?ホンマか嘘かだけ教えてぇ??ねぇ〜〇〇〜!
〇:う〜ん?? ふふんっww
濵:ひとりでニヤけて、ズルいわぁ〜!
こんな会話を、たくさんして…
時々…
柔らかいキスをして…照れ合う。
ただ それだけの…
そんな一晩を過ごした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!