第42話

『君月』201〜205
163
2020/02/02 02:43


*201*





ドスンっ!!!





張っていた気が途切れると、急に床に崩れ落ちた先輩は、顔を上げることも辛そうに、息が速まっていた。





濵:…ハァ…ハァ…ハァ……ッ…







濵:なら………俺は……?






その声は、穏やかと言うより…








ただただ悲しく響いた。








濵:俺には居らへん…っハァ…ハァ………そんな人間…









先輩…







うつむく その背中に、そっと…

ガラスのシャボンに触れるほど…そっと、手を添えると…





フンワリと宙に漂い、掴んでなければ消えてしまいそうな先輩の想いを…











私は 掴んでいた。












〇:……私が居ます………







〇:私が……側にいますから…








ずっと避けてきた想いを…






ずっと嘘で覆ってきた想いを…






口にした。







*202*






〇:好きです…












濵:………へ?…なんて??








月とか…
姫とか…
会社とか…
どれだけの犠牲を払うのかとか…






そんなコト、全部 ぜんぶ…取っ払って……







〇:先輩の事が……好きです……







ずっとずっと、私を守ってきてくれた。


その事実は、私には大きくて…







濵:えっ…





〇:先輩が居なきゃ……きっと私の今はないから………







大切なんです。



傷つきながらも ずっと…



私だけを守ってくれた……貴方が。










抱きしめられた、その温もりが心地よくて…





愛されてるんだと、感じた。





その感覚は、久しぶりで…





お母さんの事を思い出し……











私にも まだ居たんだ…………家族が…





*203*





店の外に出た私は、タクシーを拾い、先輩を乗せた。



担がないと歩けないほど、体力を消耗した様子の先輩を…



今度は私が守らないと!



私は、辛そうな先輩を支えながらも、その温もりを前面に受け止められるコトに、幸せを感じていた。










先輩の家の前で、タクシーから降りると…







私達の真上に、キレイな三日月が見えた。







濵:…チョットだけ……補充するわ。






と、見上げた先輩は…




三日月の弱々しい月光を、胸いっぱいに吸い込んだ。





キランッ☆!!!





先輩の体から、流れ星のシッポのようなキラキラが、パッ!っと弾けた!






彼と…同じだ…


先輩はまだ…ルトゥなんだ……






こっちへ振り向いた先輩は、さっきとは別人の様に血色がよくなっていた。







*204*





その顔に安心した私に、ニカッ!っと笑うから…








〇:ふふっw ……あはははっ!………ッ…もぉ〜…ッ……






濵:笑っとるんか?泣いとんのか?w

〇:…ッ……だって…やっぱり……先輩は笑顔の方がいいなって……ッ…

濵:…お、お前//…そんな恥ずいコト……//

〇:や//…あのっ…//…ひ、久しぶりだったから!笑ってる先輩//







安心して…





泣けたんだ。






大切な人が、無事であるコトに。





でも…
私が、先輩の家に来た意味は なくなっちゃったな…





濵:あ〜//…よ、寄ってくやろ?//

〇:え、でも…もう先輩、元気みたいだし…

濵:…あ、やべっ!……まだフラつくぅww





なんて、ヘタな演技しながら、私に抱きつく先輩!





濵:な?帰られへんやろ?w





私の顔を覗き込みながら、イタズラっ子みたいな先輩を見たら…






*205*





〇:ふふっw …しょうがないなぁ〜//ww






そんな、ふたりきりの世界は、とても平和で…






濵:さっき言っとったのさ…ホンマ?

〇:さっきって、何の事ですか?ww







今日の出来事なんて嘘の様に、時間が流れた。







濵:せやから// 〇〇が言うてくれた!気持ちや//

〇:う〜ん?何の事ですかぁ〜?ww

濵:いやいや!笑うてるやんっ!

〇:ふふっw

濵:それ無しやわぁ〜!どっちなん?ホンマか嘘かだけ教えてぇ??ねぇ〜〇〇〜!

〇:う〜ん?? ふふんっww

濵:ひとりでニヤけて、ズルいわぁ〜!






こんな会話を、たくさんして…









時々…











柔らかいキスをして…照れ合う。










ただ それだけの…












そんな一晩を過ごした。




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