第16話

『君月』71〜75
206
2020/02/02 02:08

*71*


藤:変な気 起こすなや?

濵:は、はぁ?何のこっちゃ?

藤:お前の為や。

濵:うっさい!分かっとるわッ!!!






私が戻ると、彼は河原に座り、川の流れをボーっと眺めていた。





カ:ねぇ〇〇?ヒロくんって、イイ人そうだね?変だけどww

〇:そうだね。優しい人だよ〜

カ:料理人だっけ?

〇:違うよ〜なんかね、人探ししてるんだって。でも、それが仕事なのかは分からないけど…

カ:好きなの?

〇:えっ// そんなの…分からないよ…

カ:……そろそろ…イイんじゃない?

〇:何が?

カ:トラウマから抜け出すの!チャンスだと思うよ?

〇:そっかなぁ〜ww





気付くと私はニヤケていた。



でも…
彼は誰かを探している。

確認と言っていたキスをしながら。





そんな人…好きになって、大丈夫なの?







〇:あ、そうだ!さっき、濵田先輩に…キスされそうになったの。

カ:えぇぇぇーーーッ!アンビリーバボォゥ!






*72*


〇:濵田先輩、弱ってるみたい。あり得ない事、言ってた。

カ:何なに?

〇:私が側に居るだけで癒されるって。

カ:えっ!めっちゃイイじゃん!あり得ないって、どういう事よ?

〇:だって……

カ:??だって?

〇:…男の人って……結局 ヤりたいだけでしょ?それが癒しなんでしょ?





男の人を遠ざけて生きてきた私には、何の経験も無い。


身体を求め合う事が、どんなモノなのかも、ハッキリ言って知らない。





〇:濵田先輩…弱ってるから、体目当てでキスしようとしたのかな…?

カ:男が皆んな〇〇の元カレみたいじゃないよ?……私は〜流星の体も好きだけどぉ〜ww







未知の世界だよ…









*73*


〇:ねぇ?カレンはさ?自分から シたくなる事もあるの?

カ:そりゃあるよぉ〜

〇:そういう時って、どうなるの?

カ:えっ……ムラムラ??、、、って!なんて話ししてんの!食べる準備して!皆んな呼んできて!

〇:ほぉーい……





私は、こんな年齢まで経験が無い事さえも忘れてしまった程、恋愛には無関心だった。



と、いうよりも…男の人が怖くて…



でも、今の会社に入ってからは、男の人とも普通に話せる様になっていた。


思えばそれは、濵田先輩のお陰だったのかも知れない。


落ち込む私を、明るく、まるで父親の様に支えてくれていたから。






私は胸いっぱいに、川辺の綺麗な空気を吸い込んで、叫んだ。






〇:っ!ご飯ですよぉ〜〜〜〜ッ!!!






離れていた所にいた、カレンと藤井くんの友達と、会社の同僚が集まりだした。





ただひとり…反応しない…





私は彼の傍まで行き「BBQだよ?」と、声を掛けた。







*74*


彼は私の声が聞こえてないかの様に、川の流れから視線を外さなかった。


〇:??できたよ?食べないの?

ヒ:・・・なんでや?

〇:えっ?何が…?

ヒ:あの人には近づくな 言うたやん。

〇:え?濵田先輩の事?

ヒ:好きなんか?

〇:や、私が近付いたワケじゃ無いし…どうしてそんな事…

ヒ:〇〇の為や 言うたやん!

〇:そんなんじゃ分からないよ!何か知ってるの?濵田先輩も変な事言ってた。入社前から私を知ってたとか…あなたも…そうだった…

ヒ:……もし、、、もしも〇〇が姫なら……あの人を好きになられたら…困んねん。

〇:…どういう…事…?










最初から分かってた。








私が、彼の言う『姫』なんだと…








だって、あのキスは…








〇:……困るのは…あなた?……それとも……





でも、私の心にある想いは、あのキスのせいじゃない。


そう思いたかったんだ。


だから、否定してきた。






*75*


〇:それとも…

ヒ:……月や。

〇:は?月が…困るの…?

ヒ:姫を探して、連れて帰る。それが、俺の使命やから…

〇:……そっか…






『姫』だとか…よく分からないし…




月が困るとか…関係ないし…




そもそも、男になんか…期待してないし…






〇:だったら……私が誰を好きになろうが……あなたには関係ないでしょ?
……私は姫じゃないんだし…





また、トラウマから抜け出せなかったな…






ヒ:〇〇……何で泣いとるん?

〇:し、知らないよっ!バカッ!!!





何が姫よ!何が月よ!





っ!!!ドスッ!!!





振り向き走りだした私は、誰かにぶつかった!





藤:お、〇〇!大丈夫か?

〇:う、うん…

藤:泣いてんの?彼氏とケンカしたん?

〇:彼氏なんかじゃないッ!!!





私の張り上げた その声に、彼が反応していた。





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