第27話

『君月』126〜130
184
2020/02/02 02:09

*126*





〇:で、出ないんですか?





覆いかぶさっている至近距離なのに、私の問いが聴こえているのかも、分からない…



そのうち、大きなため息を吐いて、私から離れた。







ピッ!



濵:はい……おん……おん……そっか…分かった。待っとるわ…ほな……




ピッ!



電話を切り、ため息を吐いた先輩は、部屋の隅のカバンの前で座ったまま、うつむいて動かない…





その背中は悲しげで、何とも言えないセツナさで いっぱいで…




気を許したら、抱きしめてしまいそうな…

癒してあげたくなっちゃいそうな…





でも、そんな勇気は私には無くて…







濵:お終いや…





振り返って、すまなそうに言った先輩は、涙を拭っていた。





濵:仕事や。まだ人間にはなれへんわ…

〇:…仕事…って?





私が問いかけたと同時に、部屋の扉が開いた。






*127*


カ:おっじゃまっしまぁ〜すぅ!

藤:てか、来ちゃって大丈夫やった?お取り込み中や無かったかぁ〜??w





一気に賑やかになった部屋は、さっきまでの空気感が無くなっていた。





〇:藤井くん、もう大丈夫なの?

カ:大丈夫 大丈夫!私が側でナデナデしてあげてたら、すぐに回復だよぉ〜!愛のチカラ?ww

〇:あ…愛の……ね?ww

藤:なぁ〜濵ちゃん?そんなところでどないしてん?

濵:なんでも あらへんわ!それで、なんや?どういう事や?





カバンの前に座ったまま動かない先輩に、ちょっかいを出す藤井くん。




今は、やめてあげて〜!



そう思っても、言えない。





カ:あのね 〇〇?流星にも助けてもらうから!!!

〇:えっ?

カ:心強いでしょ?!

〇:う…うん……でも…信じないでしょ……?





藤井くんに言ったら、鼻で笑われて おわりにされそう。




それに…






*128*




それに…



人間の力で、どうにかなるような気がしない。






濵:〇〇…カレンに話したんか?

〇:うん。だって、考えてもみてよ?私にとってカレンは、たったひとりのかけがえのない存在なんだよ?家族も彼氏もいない私には…カレンしか……

カ:えっ?濵田先輩にも話したの?

〇:あ〜……そうだね…

カ:そういう事なら話は早い!じゃあさ?四人で会議しよぉーーーッ!オーッ!!!





ワザとなのか、明るく この場のテンションを上げるカレン。



その向こうで、私の顔をジッと見てるのは、藤井くん。





〇:あ〜だよね?信じてないんでしょ?

藤:そうやないよ?…でも、もうこれ以上、手こずらせないで欲しいんや。

〇:えっ…





藤井くんはカレンの側に移動して座った。






藤:カレン あのな?……俺ホントは…


























藤:ルトゥやねん。








えッ!!!

藤井くんも?!!!








*129*




カ:??るとぅ??それって…なに?




私も人間の身体だけど…

ここにいる4人の中で、地球人はカレンだけ?



そう考えると、何となく怖かった。





〇:……月の人だよ。

カ:ぅえぇぇぇッ?!……マジで?マジで言ってんの??…あ!分かった!ドッキリィ〜?もぉ!やめてよねぇ〜ww

藤:ドッキリやないで?ホンマや。

カ:え、、、、、流星…騙してたの?

藤:そうやない。言えんかった。言ったら…俺を、好きにはならんやろ?

カ:そ…それは…

〇:カレンを責めないで!

藤:…責めてるワケやない。けど…

〇:けど??じゃあ 聞くけど、カレンに近づいたのは、どういう事だったの?私の側にいる為。私を守る為。そうじゃないの?

藤:…初めはな。そうやった。





初めは?





藤:カレン聞いてくれる?

カ:……ぅん…

藤:ルトゥは、人間と身体を重ねてしまうと、人間になってまうんや。






*130*


カ:…??んっ?どぉいうこと??

藤:せやから、もう俺は、ルトゥには戻れん。人間のままで居るしか無いんや。

カ:…それって…私と……シたからって事…?

藤:おん。俺は……使命も故郷も、捨てた。















藤:カレン?…お前を愛しとる。










カ:流星…







私が今、思ったことは…












羨ましい。












何もかも捨てて、愛する人を選ぶ…







濵田先輩も…そうしようとしてる…







けど…私には…















できない。





人の…



ルトゥの命が かかっている。




月の運命が かかっている。












羨ましい。






そう思うしか無かった。







〇:じゃあ……私に恋愛しろって言ったのは…どうして?






藤井くんがルトゥなら、矛盾してる。



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