第76話

『君月』366〜369
123
2020/05/21 06:05


*366*





桐「ルトゥは、お祭りムードですよ!、、姫様が帰ってきた。姫様に救われたと。、、式典も行われる予定ですし、」

〇「そうですか…」

桐「誇らしい事をされたのですよ?、、嬉しくないのですか?」

〇「なんて言うか…実感がないんです…」

桐「月の力は、あの映画のフォースの様なものです。姫様がここに居られるだけで、月はエネルギーに満ち溢れている。、、きっと…地球へも、届いてるはずです。」

〇「、、、地球…」

桐「はい。、、それに、朗報もございます!」

〇「朗報?」

桐「昨夜から、重岡の体力が急激に回復しております!」

〇「それって…」

桐「目覚めるかも、知れません!」

〇「っ!、ホントに?!…ッ……」





涙が一気に、ぶわぁっ!と溢れてきた!



ここで目覚めてから、ずっとずっと無かった嬉しい報告は、



沈んだ心に、陽を灯した。







*367*


〇「行きましょっ!、、今すぐ、シゲさんのトコへっ!」

桐「でも、まだ目覚めてないですよ?」

〇「だからじゃないですか!、目覚めた時、側に居てあげたいんです!!!」





桐山さんは、やれやれ…と言わんばかりに、

あきれながらも、微笑んでいた。


















カプセルの中で漂うシゲさん…

最初に見た時と、何にも変わらない姿。





本当に、目覚めるのだろうか…





この姿を見ると、不安になる。





桐「ここのゲージが、最初は0やったんです。それが、今日は半分まで回復していて…」




桐山さんが説明してくれた たくさんのメーターのひとつを覗くと、赤から黄色へと針は動いていた。




桐「半分あれば、目覚める可能性もあるので…もう、時間の問題かと…」






シゲさん…


私達はルトゥナじゃないけど…


この声を聞いて欲しい。


ねぇ…







*368*



ねぇ…


目を覚まして…?


あの、素敵な笑顔を…


もう一度、、私に見せてよ…






私もう…


誰かと離れ離れになるのは、、、


イヤなの。











ヒロと交信していたように、シゲさんに語りかけた。


でも…


やっぱり、何の返事もなくて…








〇「人の想いは…届かないモノなのですね…」






ポロっと吐いてしまった弱音。






桐「、、、想い……?」

〇「あ〜、、ルトゥには ちょっと難しいのかなぁ?w」






吐いてしまった弱音を弁解したくて、私は明るく微笑んだ。




その日、私はずっとシゲさんの側にいたけど…


目覚める事は無かった。













次の日からは、お偉いさんに会いに行ったりと、いろいろと忙しく連れ回され、




気になりながらも、
数日間、シゲさんに会いには行けなかった。






*369*




桐「おはようございます…姫様w」

〇「…あ、桐山さん。おはようございます…」






私はまた、大きな広間で、ボーっと都市を眺めていた。


朝から気が重くて、そのせいか体も重くて…



側まできた桐山さんに声を掛けられ、やっと気付いたほど、


ボーっとしていた。






〇「…シゲさんの様子は、どうですか?」

桐「気になりますか?」





そう言いながら、なんだか意味ありげにニヤける桐山さん。





〇「は、はい、、あの……何かありました?」





ニヤける桐山さんは、不思議そうな顔をする私に、

親指で「あれ、あれ!」と、後ろを指した。












遠く離れた広間の扉が開くと…















シ「ひぃ〜めちゃんっ!ww」

〇「え、、シゲ……さん…」






あの屈託のない、キラッキラの笑顔の、


シゲさんがいた!!!







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