*366*
桐「ルトゥは、お祭りムードですよ!、、姫様が帰ってきた。姫様に救われたと。、、式典も行われる予定ですし、」
〇「そうですか…」
桐「誇らしい事をされたのですよ?、、嬉しくないのですか?」
〇「なんて言うか…実感がないんです…」
桐「月の力は、あの映画のフォースの様なものです。姫様がここに居られるだけで、月はエネルギーに満ち溢れている。、、きっと…地球へも、届いてるはずです。」
〇「、、、地球…」
桐「はい。、、それに、朗報もございます!」
〇「朗報?」
桐「昨夜から、重岡の体力が急激に回復しております!」
〇「それって…」
桐「目覚めるかも、知れません!」
〇「っ!、ホントに?!…ッ……」
涙が一気に、ぶわぁっ!と溢れてきた!
ここで目覚めてから、ずっとずっと無かった嬉しい報告は、
沈んだ心に、陽を灯した。
*367*
〇「行きましょっ!、、今すぐ、シゲさんのトコへっ!」
桐「でも、まだ目覚めてないですよ?」
〇「だからじゃないですか!、目覚めた時、側に居てあげたいんです!!!」
桐山さんは、やれやれ…と言わんばかりに、
あきれながらも、微笑んでいた。
カプセルの中で漂うシゲさん…
最初に見た時と、何にも変わらない姿。
本当に、目覚めるのだろうか…
この姿を見ると、不安になる。
桐「ここのゲージが、最初は0やったんです。それが、今日は半分まで回復していて…」
桐山さんが説明してくれた たくさんのメーターのひとつを覗くと、赤から黄色へと針は動いていた。
桐「半分あれば、目覚める可能性もあるので…もう、時間の問題かと…」
シゲさん…
私達はルトゥナじゃないけど…
この声を聞いて欲しい。
ねぇ…
*368*
ねぇ…
目を覚まして…?
あの、素敵な笑顔を…
もう一度、、私に見せてよ…
私もう…
誰かと離れ離れになるのは、、、
イヤなの。
ヒロと交信していたように、シゲさんに語りかけた。
でも…
やっぱり、何の返事もなくて…
〇「人の想いは…届かないモノなのですね…」
ポロっと吐いてしまった弱音。
桐「、、、想い……?」
〇「あ〜、、ルトゥには ちょっと難しいのかなぁ?w」
吐いてしまった弱音を弁解したくて、私は明るく微笑んだ。
その日、私はずっとシゲさんの側にいたけど…
目覚める事は無かった。
次の日からは、お偉いさんに会いに行ったりと、いろいろと忙しく連れ回され、
気になりながらも、
数日間、シゲさんに会いには行けなかった。
*369*
桐「おはようございます…姫様w」
〇「…あ、桐山さん。おはようございます…」
私はまた、大きな広間で、ボーっと都市を眺めていた。
朝から気が重くて、そのせいか体も重くて…
側まできた桐山さんに声を掛けられ、やっと気付いたほど、
ボーっとしていた。
〇「…シゲさんの様子は、どうですか?」
桐「気になりますか?」
そう言いながら、なんだか意味ありげにニヤける桐山さん。
〇「は、はい、、あの……何かありました?」
ニヤける桐山さんは、不思議そうな顔をする私に、
親指で「あれ、あれ!」と、後ろを指した。
遠く離れた広間の扉が開くと…
シ「ひぃ〜めちゃんっ!ww」
〇「え、、シゲ……さん…」
あの屈託のない、キラッキラの笑顔の、
シゲさんがいた!!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。