*46*
近づく濵田先輩の方へ向かうと、部署と部署の間で渡された、折りたたみ傘と小さな紙袋。
濵:ありがとな!助かったわw
〇:いえ!コレは?
濵:お礼や。その店のクッキー好きやったやろ?
〇:へっ?//
なんだか小っ恥ずかしかった。
あっちと、こっちの部署からの視線。
それに、濵田先輩がこんな事するなんて…
意外だと、皆んなが思っているのだろう。
杉:〇〇さん!行くわよっ!
うわぁ〜!
杉本先輩、イラついてるぅ〜(泣)
〇:は、ハイッ!!!
資料を持ち、杉本先輩の後を追うように小走りになった。
そんな私の隣に付き「荒れそぉ〜w」と、なぜか嬉しそうなカレン。
はぁぁぁぁ〜〜〜〜っ……
プレゼン大丈夫かなぁ……?
私はクライアントを迎えに、杉本先輩と、ビルの入り口まで来た。
*47*
ク:お待たせ致しました!
杉:こちらこそ。ご足労頂きまして ありがとうございます!
ク:杉本さんに迎えて頂けるなんて、嬉しい限りです!
杉:へっ// いえ、とんでもないです!私なんかで…もっと若い子の方がよろしいですよねw
ク:いえ…僕は//…杉本さんみたいな方がタイプですので//
杉:あ、ありがとうございます//…で、では こちらへ//
ク:は、はい!//
あの〜〜?
私も居るんですけどぉ〜〜?
このクライアントさん…
プレゼン前に、落ちたんじゃないの…?
杉本先輩もデレデレしちゃって〜
さっきまでとは大違い!
やっぱ、杉本先輩も女子なんだな〜ww
誘導する杉本先輩の後ろを、行こうとすると「〇〇っ!」と、誰かに呼ばれた。
見ると、ビルの大きな柱から、ひょっこりはんしてる彼。
満面の笑みで、ヒョコヒョコ近寄って来た。
あはっw 可愛い♡
*48*
………イヤイヤイヤイヤイヤ!
杉本先輩も見てるし!!!
〇:ちょ、チョット失礼します!
私はクライアントに一礼して、彼の元へ向かった。
〇:どうして居るのよッ!!!
向かって来た彼の腕を掴み、さっきの柱の影へ。
ヒ:ちょい!なになに?
〇:こっちのセリフよ!なに?
ヒ:ほい!お弁当作ったったわw
その天使の笑顔と可愛い行動……
プレゼンの前に落ちそうなのは、私だ。
〇:あ、ありがとう…//
ヒ:おん!かまへんで!仕事、頑張りや!!!
〇:う、うん//……早く帰るね//
ヒ:ええよ?打ち上げも仕事やろ?
〇:まぁ〜そうだけどw じゃあね!
ヒ:おん!またな!
セキュリティゲートをくぐって振り返ると、笑顔で手を振ってる彼がいた。
照れ臭くて、チョットだけ手を振って、駆け足で会議室へ向かった。
今夜は早く帰ってあげよ!!!
*49*
プレゼン中、杉本先輩は終始にこやかだった。
途中、濵田先輩が混乱する様な情報を漏らしたものの、何とかイイ感じで終わらせる事が出来た。
杉:お疲れ様でした〜
クライアントを見送り、休憩所で鉢合わせた杉本先輩は、今まで見たことないくらい、ご機嫌だった。
〇:お疲れ様でした!無事終わりましたね!
杉:〇〇さんが頑張ってくれたお陰よ!
〇:いえいえ〜頑張ったのは私だけじゃありませんから。昨日はカレンも手伝ってくれたし、濵田先輩なんて、最後まで付き合ってくれたんですから!ww
杉:え…最後まで?
〇:そうなんです!カレンが帰った後に濵田先輩が来て、資料刷りと部数合わせを…24時前まで…
っ!ヤバい!!!
杉本先輩の表情が…強張ってる…
杉本先輩 やっぱり、濵田先輩のコト…
杉:濵田くん…〇〇さんには優しいのね?
〇:え、や、そうですか?濵田先輩は、誰にでも優しいかと…
*50*
そこに「お疲れ様でしたぁ〜」と、カレンがやってきた。
〇:お、お疲れ…
カ:ん??どぉかした?プレゼン大成功だったのに、浮かない顔じゃん!
杉:大成功かどうかは、クライアントの返答次第よ!
そう言い放つようにして、杉本先輩は出て行った。
カ:何かあった?
〇:うん…
カ:じゃあ、ランチ行って話そう!
〇:あ!私、お弁当!
カ:え?遅刻して、作ってきたの?
〇:違うよ!……作ってくれたの…//
カ:え?誰が?あの大家さん?
〇:……う、ウチにね…居候してる人が…
カ:居候って何っ?聞いてないよッ!!!
その時、カレンの着信音が鳴った。
藤井くんからだと分かると、あっさりランチの誘いを受けていた。
カ:今夜!絶対 聞くからねっ!!!
と、私を指差して出て行った。
あぁ…打ち上げ…気が重い…
そう思いながら、お弁当箱を開けた。
パカッ!おぉぉぉ〜〜ww
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!