第15話

『君月』66〜70
205
2020/02/02 02:08

*66*


〇:…センパイ??

濵:へっ??

〇:どうかしたんですか?オカシイですよ?

濵:あ、俺…仕事 変えようかな思っとって……

〇:えぇぇぇーーーッ!どうしてですかぁ?

濵:今までを考えると…これで良かったんかなぁ?って。後悔してる部分もあって……

〇:……まだ…迷ってるんですね?

濵:まぁ…そんな感じかな。





初めてかも…

濵田先輩の弱った姿なんて。

そんな風に、苦笑いするんだ…



先輩が うつむくと、サラッと前髪が目を覆って、その先が気になった。





〇:何か、やりたい仕事が あるんですか?

濵:そうやないんやけどな…実家にでも帰ろかな…なんてな。





理由は分からないけど…落ち込んでるんだ…





私は落ち込んでる人を、たくさん見てきた。

誰も救えなかった…





〇:私…あの……





何を言えばイイのか分からない。

濵田先輩の心を救える気がしないから。






*67*


あの頃…大学生の私を迎えにきた彼氏。


彼の車に乗り込んだ私は、





彼:〇〇…会いたかった…





そのまま、シートを倒されキスをされ…





〇:昨日も会ったじゃん…チョット待ってよ…こんなところで…

彼:毎日 会いたくなったらダメなのか?

〇:えっ?そういう意味じゃ…





「ならイイだろ」と言わんばかりに唇を塞がれる。





〇:だから…ココじゃ…やだよ……





キスが こんなにも、辛いものになるなんて…

…知りたく無かった…





彼:大学の側だからか?お前、他に男でもできたんだろ?

〇:え……どうしてそうなるのよ?

彼:彼氏が予備校生ってのが、そんなに恥ずかしいのか?

〇:そんな事、言ってないっ!





優しかった彼氏が…

受験を境に、少しずつ私に強く当たる様になっていた。





彼:ホテル行こうよ?

〇:え……

彼:俺らもう一年経つんだし…






*68*


そう。私達は、大学合格を目標としていて、それまでは シないと約束していた。





彼:俺もう、限界なんだよ?な?イイだろ?

〇:……イヤ。

彼:…言うと思った。





呆れた様に そう言う彼は、私が拒むと、態度が一変した。





彼:見捨てるのか…

〇:そうじゃないっ!





立ち直って欲しかった…


でも怖かったんだ…





彼:うるせぇッ!!!




っ!バシンッ!!!





左の頬に衝撃が走ると、耳の奥でキーン!と音がした。


いつかは、こうなると気付いていたのに…

抜け出せなかった…弱い自分が嫌だった。



その翌週、彼は事故に遭い入院した。



私は大学とバイトとお見舞いに追われる日々で、心も体も疲れていた。



そのせいか…

親友のカレンには、会う度に「早く別れなさいよぉ〜?」と言われていた。




そんな時、父が倒れ入院した。




彼氏とは別の病院にも通う事となった私は、やっぱり疲れていた。






*69*


〇:彼氏が弱ってる時に、別れ話なんて…できないよ…

カ:好きでもない暴力男に、〇〇の時間を使うのが、私は嫌なの!

〇:…私やっぱり…好きじゃないのかなぁ?

カ:情だよ。絶対!!!





この時、カレンのアドバイスを受け入れていれば良かったのに…


退院後、彼は未成年にもかかわらず飲酒をしていて…




〇:えっ?何食べたの?

彼:は?何って…つまみだけど…

〇:まさか、お酒飲んでるの?





私は、そんなお堅い人間ではないけど…

今の彼にお酒はダメだと思って停めようとした。





彼:飲んだら悪いかよ!皆んなやってる事だろ?

〇:まだリハビリ中でしょ?体に悪いよ!

彼:……飲めば忘れられるんだよ……何もかも…

〇:……………私の…事も…?

彼:ああ、そうだよ。癒してもくれない彼女なんて…





彼は、体を許さない私を「癒してくれない」と言った。








〇:・・・サイテイ…







*70*


さすがに私も限界で…





〇:別れてください!





と、人がたくさん居る街中で、頭を下げた。

















____________




濵:そんな顔すんなよ…

〇:…すみません。人を慰めるのって、苦手で…

濵:……俺はさ?〇〇が居るだけで、癒されとるで?

〇:えっ?//そんなワケなぃ…





っ!!!えっ?!!!





不意に私の髪に触れ、耳の後ろへ掛け…


フワッと その掌が肩に乗ると…


先輩の顔が、ゆっくりと近づいた。





藤:〇〇〜?濵ちゃ〜ん?





近づく藤井くんの声に、先輩はキス手前でバッ!っと離れた。





藤:お!居ったおった!そろそろ食べるでぇ??

濵:ぉ、ぉ、ぉ、ぉ、おん…ほな行こか〜?

〇:そ、そうですね…行きましょうかね〜?

藤:・・・あ〜濵ちゃん?炭取りに行くん、手伝って?

濵:ぉ、おん!ええよ!





この時、私だけ先に戻る様に仕向けられていた事に、私は気付いてなかった。






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