*66*
〇:…センパイ??
濵:へっ??
〇:どうかしたんですか?オカシイですよ?
濵:あ、俺…仕事 変えようかな思っとって……
〇:えぇぇぇーーーッ!どうしてですかぁ?
濵:今までを考えると…これで良かったんかなぁ?って。後悔してる部分もあって……
〇:……まだ…迷ってるんですね?
濵:まぁ…そんな感じかな。
初めてかも…
濵田先輩の弱った姿なんて。
そんな風に、苦笑いするんだ…
先輩が うつむくと、サラッと前髪が目を覆って、その先が気になった。
〇:何か、やりたい仕事が あるんですか?
濵:そうやないんやけどな…実家にでも帰ろかな…なんてな。
理由は分からないけど…落ち込んでるんだ…
私は落ち込んでる人を、たくさん見てきた。
誰も救えなかった…
〇:私…あの……
何を言えばイイのか分からない。
濵田先輩の心を救える気がしないから。
*67*
あの頃…大学生の私を迎えにきた彼氏。
彼の車に乗り込んだ私は、
彼:〇〇…会いたかった…
そのまま、シートを倒されキスをされ…
〇:昨日も会ったじゃん…チョット待ってよ…こんなところで…
彼:毎日 会いたくなったらダメなのか?
〇:えっ?そういう意味じゃ…
「ならイイだろ」と言わんばかりに唇を塞がれる。
〇:だから…ココじゃ…やだよ……
キスが こんなにも、辛いものになるなんて…
…知りたく無かった…
彼:大学の側だからか?お前、他に男でもできたんだろ?
〇:え……どうしてそうなるのよ?
彼:彼氏が予備校生ってのが、そんなに恥ずかしいのか?
〇:そんな事、言ってないっ!
優しかった彼氏が…
受験を境に、少しずつ私に強く当たる様になっていた。
彼:ホテル行こうよ?
〇:え……
彼:俺らもう一年経つんだし…
*68*
そう。私達は、大学合格を目標としていて、それまでは シないと約束していた。
彼:俺もう、限界なんだよ?な?イイだろ?
〇:……イヤ。
彼:…言うと思った。
呆れた様に そう言う彼は、私が拒むと、態度が一変した。
彼:見捨てるのか…
〇:そうじゃないっ!
立ち直って欲しかった…
でも怖かったんだ…
彼:うるせぇッ!!!
っ!バシンッ!!!
左の頬に衝撃が走ると、耳の奥でキーン!と音がした。
いつかは、こうなると気付いていたのに…
抜け出せなかった…弱い自分が嫌だった。
その翌週、彼は事故に遭い入院した。
私は大学とバイトとお見舞いに追われる日々で、心も体も疲れていた。
そのせいか…
親友のカレンには、会う度に「早く別れなさいよぉ〜?」と言われていた。
そんな時、父が倒れ入院した。
彼氏とは別の病院にも通う事となった私は、やっぱり疲れていた。
*69*
〇:彼氏が弱ってる時に、別れ話なんて…できないよ…
カ:好きでもない暴力男に、〇〇の時間を使うのが、私は嫌なの!
〇:…私やっぱり…好きじゃないのかなぁ?
カ:情だよ。絶対!!!
この時、カレンのアドバイスを受け入れていれば良かったのに…
退院後、彼は未成年にもかかわらず飲酒をしていて…
〇:えっ?何食べたの?
彼:は?何って…つまみだけど…
〇:まさか、お酒飲んでるの?
私は、そんなお堅い人間ではないけど…
今の彼にお酒はダメだと思って停めようとした。
彼:飲んだら悪いかよ!皆んなやってる事だろ?
〇:まだリハビリ中でしょ?体に悪いよ!
彼:……飲めば忘れられるんだよ……何もかも…
〇:……………私の…事も…?
彼:ああ、そうだよ。癒してもくれない彼女なんて…
彼は、体を許さない私を「癒してくれない」と言った。
〇:・・・サイテイ…
*70*
さすがに私も限界で…
〇:別れてください!
と、人がたくさん居る街中で、頭を下げた。
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濵:そんな顔すんなよ…
〇:…すみません。人を慰めるのって、苦手で…
濵:……俺はさ?〇〇が居るだけで、癒されとるで?
〇:えっ?//そんなワケなぃ…
っ!!!えっ?!!!
不意に私の髪に触れ、耳の後ろへ掛け…
フワッと その掌が肩に乗ると…
先輩の顔が、ゆっくりと近づいた。
藤:〇〇〜?濵ちゃ〜ん?
近づく藤井くんの声に、先輩はキス手前でバッ!っと離れた。
藤:お!居ったおった!そろそろ食べるでぇ??
濵:ぉ、ぉ、ぉ、ぉ、おん…ほな行こか〜?
〇:そ、そうですね…行きましょうかね〜?
藤:・・・あ〜濵ちゃん?炭取りに行くん、手伝って?
濵:ぉ、おん!ええよ!
この時、私だけ先に戻る様に仕向けられていた事に、私は気付いてなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。