*101*
そんな風に考えてしまったのが最後…
さっきまでの様に話せなくなってしまった。
濵:〇〇?酔ったか?
〇:えっ?いや、違います……チョット考え事です。
濵:今期はボード初めてか?
〇:あ〜そうです。きっと、鈍ってると思います。まぁ、元々 滑れる方じゃないし…
濵:…最初に教えたん……俺やで?
〇:えっ?いつ?覚えてない!
濵:〇〇が高校生の時やったかなぁ〜?
〇:…その記憶も、消しちゃったんですか?
濵:おん…あの頃は、〇〇の人生に写り込まへん様にせなアカンかってん。
〇:どうして?
濵:大人になっても傍におるんやで?幼い頃から知っとったら、大人になって避けられてまうかも知れへんやろ?
〇:…そっか……その時は…楽しかった?
濵:おん。めっちゃヘタクソやって!コケすぎて、お尻痛い言うとったわ〜w
〇:楽しい思い出まで、消しちゃうんだね……ほんとマヤカシだ…
*102*
私…ホントはどんな人生を歩んできたんだろう?
私を守るために、先輩は自分を犠牲にしてきたんだろうか?
〇:他にもあるんですか?
濵:それって…聞きたいん?それとも…聞きたないん?
〇:それは…どうなんだろう……
濵:〇〇の記憶が、少しずつ戻ってきてるやん?
〇:はい…
濵:俺の能力が低下してるからなんや。
〇:えっ?どうしてですか?
濵:人間になりつつある…
〇:…そっか…やっぱり人間になるんだ…
余計に帰りたくなくなっちゃうな…
〇:私が月に戻ったら…先輩はどうなるんですか?
濵:ここに残るなら、今まで通り会社で働くよ。人間になって、人間として過ごしていく。
そっか…
誰かと恋愛して、結婚して、家庭を持って、家族が増えて…
〇:きっと…幸せですね…
濵:えっ?
〇:いいえ!なんでもありません!
任務完了なんだもんね。
次は自分の為に…生活していくんだな。
*103*
〇:じゃあ…あと、半年くらいですね?一緒に居られるのは…
濵:……それなんだけど………あの…
〇:??
♪〜着信音〜♪
〇:カレンだ…すみません。
濵田先輩が話し出したのを遮り、私は電話に出た。
ピッ!
〇:もしもし?
カ:もうすぐ着きそうなんだけど、そっちは?
〇:うん。そんな差はついてないと…
そう言いながら濵田先輩を見ると、頷きながらニッコリした。
電話を切って、すぐに宿に到着した。
先輩…何か言いかけてたよな…
気になってはいたけど、続きを話す事なく、私達は早速、スノボへと繰り出した。
リフトで上まで行くと、見下ろす斜面が眩しかった。
濵:〇〇 行けそうか?
そう話しかける先輩は…
ナンパなら、大抵の子が引っかかりそうなくらいで…
〇:っ!だ// 大丈夫です//…先に行ってください!
なぜか私は、照れていた。
*104*
濵:後から着いてくから、ええよ?
もぉ!
今はその優しさ、いらないんだけど!
〇:いいから、先に行ってください!
濵:そっかぁ?ほな行ってくるな〜
あ〜ぁ……
行っちゃったよ…
藤:っ〇〇!!!
〇:ぅわぁっ!!!もぉ〜ビックリさせないで!!!
藤:ボーっとしてぇ〜w 濵ちゃんに見惚れてたん?
〇:はぁ?そ、そんなコト…
その言葉を否定しようとしたら、藤井くんの顔がグッと近づいた!
藤:恋愛。してみれば?
〇:えっ……レンアイ…?
藤:おん!〇〇 かわええんやから、モッタイないで?
〇:えっ!可愛い?
藤:ウェアーが、そうさせるんやろかな?w
〇:ちょっ!コラぁっ!!!
クソぉぉぉーーーッ!!!
また、からかわれたぁぁ〜〜!!!
こうなったら、ヤケ滑りだぁ!!!
てな勢いで、ボードを斜面に向けた!!!
☆105☆
ゆっくり…
ゆっくり…
ターン…
アンド…
ターン…
濵:遅っ!!!
〇:っ!えっ!速っ!!!
2本目を滑り出した濵田先輩が声を掛けたから…
気がソレたんだ!!!
ドシンッッッ!!!
痛ぁ…
濵:鈍りきっとるやん!
〇:ウルサイ!
濵:初心 忘れとるやん!膝 使えてないからやろ?教えてやったや〜ん!
〇:そんなの!覚えてないよっ!!!
っ!はっ!!!
記憶が…また戻ってきた…
______________
濵:〇〇!膝ぁぁぁーーーーーーッ!!!
少しはなれた所から、斜面を真っ直ぐ落ちていきそうな私に叫んだ!
えっ?
あ!膝だ!
膝を曲げて重心を前に傾けると、ボードの向きが変わった。
〇:はっ!ターンできたぁ〜!
スゴイ!!!
膝を意識しただけなのに!
教え方が上手いのかな?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。