第22話

『君月』101〜105
206
2020/02/02 02:08

*101*


そんな風に考えてしまったのが最後…

さっきまでの様に話せなくなってしまった。





濵:〇〇?酔ったか?

〇:えっ?いや、違います……チョット考え事です。

濵:今期はボード初めてか?

〇:あ〜そうです。きっと、鈍ってると思います。まぁ、元々 滑れる方じゃないし…

濵:…最初に教えたん……俺やで?

〇:えっ?いつ?覚えてない!

濵:〇〇が高校生の時やったかなぁ〜?

〇:…その記憶も、消しちゃったんですか?

濵:おん…あの頃は、〇〇の人生に写り込まへん様にせなアカンかってん。

〇:どうして?

濵:大人になっても傍におるんやで?幼い頃から知っとったら、大人になって避けられてまうかも知れへんやろ?

〇:…そっか……その時は…楽しかった?

濵:おん。めっちゃヘタクソやって!コケすぎて、お尻痛い言うとったわ〜w

〇:楽しい思い出まで、消しちゃうんだね……ほんとマヤカシだ…






*102*



私…ホントはどんな人生を歩んできたんだろう?



私を守るために、先輩は自分を犠牲にしてきたんだろうか?






〇:他にもあるんですか?

濵:それって…聞きたいん?それとも…聞きたないん?

〇:それは…どうなんだろう……

濵:〇〇の記憶が、少しずつ戻ってきてるやん?

〇:はい…

濵:俺の能力が低下してるからなんや。

〇:えっ?どうしてですか?

濵:人間になりつつある…

〇:…そっか…やっぱり人間になるんだ…





余計に帰りたくなくなっちゃうな…





〇:私が月に戻ったら…先輩はどうなるんですか?

濵:ここに残るなら、今まで通り会社で働くよ。人間になって、人間として過ごしていく。





そっか…


誰かと恋愛して、結婚して、家庭を持って、家族が増えて…





〇:きっと…幸せですね…

濵:えっ?

〇:いいえ!なんでもありません!





任務完了なんだもんね。


次は自分の為に…生活していくんだな。






*103*


〇:じゃあ…あと、半年くらいですね?一緒に居られるのは…

濵:……それなんだけど………あの…

〇:??



♪〜着信音〜♪



〇:カレンだ…すみません。





濵田先輩が話し出したのを遮り、私は電話に出た。



ピッ!



〇:もしもし?

カ:もうすぐ着きそうなんだけど、そっちは?

〇:うん。そんな差はついてないと…




そう言いながら濵田先輩を見ると、頷きながらニッコリした。



電話を切って、すぐに宿に到着した。




先輩…何か言いかけてたよな…






気になってはいたけど、続きを話す事なく、私達は早速、スノボへと繰り出した。



リフトで上まで行くと、見下ろす斜面が眩しかった。





濵:〇〇 行けそうか?





そう話しかける先輩は…


ナンパなら、大抵の子が引っかかりそうなくらいで…





〇:っ!だ// 大丈夫です//…先に行ってください!





なぜか私は、照れていた。







*104*




濵:後から着いてくから、ええよ?





もぉ!

今はその優しさ、いらないんだけど!





〇:いいから、先に行ってください!

濵:そっかぁ?ほな行ってくるな〜





あ〜ぁ……

行っちゃったよ…





藤:っ〇〇!!!

〇:ぅわぁっ!!!もぉ〜ビックリさせないで!!!

藤:ボーっとしてぇ〜w 濵ちゃんに見惚れてたん?

〇:はぁ?そ、そんなコト…





その言葉を否定しようとしたら、藤井くんの顔がグッと近づいた!





藤:恋愛。してみれば?

〇:えっ……レンアイ…?

藤:おん!〇〇 かわええんやから、モッタイないで?

〇:えっ!可愛い?

藤:ウェアーが、そうさせるんやろかな?w

〇:ちょっ!コラぁっ!!!





クソぉぉぉーーーッ!!!

また、からかわれたぁぁ〜〜!!!

こうなったら、ヤケ滑りだぁ!!!





てな勢いで、ボードを斜面に向けた!!!







☆105☆





ゆっくり…





ゆっくり…





ターン…





アンド…





ターン…





濵:遅っ!!!

〇:っ!えっ!速っ!!!





2本目を滑り出した濵田先輩が声を掛けたから…




気がソレたんだ!!!




ドシンッッッ!!!




痛ぁ…





濵:鈍りきっとるやん!

〇:ウルサイ!

濵:初心 忘れとるやん!膝 使えてないからやろ?教えてやったや〜ん!

〇:そんなの!覚えてないよっ!!!






っ!はっ!!!






記憶が…また戻ってきた…







______________




濵:〇〇!膝ぁぁぁーーーーーーッ!!!



少しはなれた所から、斜面を真っ直ぐ落ちていきそうな私に叫んだ!



えっ?

あ!膝だ!



膝を曲げて重心を前に傾けると、ボードの向きが変わった。





〇:はっ!ターンできたぁ〜!





スゴイ!!!

膝を意識しただけなのに!

教え方が上手いのかな?




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