第19話

『君月』86〜90
200
2020/02/02 02:08

*86*






ト:あなたの、たった一人の…









































_______________________『ルトゥナ』













ト:タイムリミットが近づいているわ!

〇:どういう事ですか?

ト:私達の文明には…姫のパワーが必要なんです!

〇:……パワーって…





私は普通の人間で…何のパワーも無い。

誰が どう見ても、冴えない地味子の基本幸薄で、運動も勉強も『中の上』。


お料理も上手くないし、お掃除だって手抜きだし…





ト:タイムリミットは、あなたを迎えに行けなかった時から、地球の時間で10年。次の7月7日…の前日まで。

〇:私の誕生日の前まで…

ト:その日までに月に到着しないと、私達の文明は滅び、ルトゥは息絶える。

〇:えっ……







息絶える……




彼も……?






トキさんは、忘れてしまうほど たくさんの情報を話してくれた。







*87*



木枯らしが吹いていたかと思ったら…



辺りは一面の銀世界。



季節の移り変わりが、私を苦しめていく。




トキさんが言っていた。
ルトゥは、恋愛をして子孫を残すワケではないと。


恋愛をしないのだろうか?

好きという感情は無いのだろうか?


彼は私と…
月で どう暮らすのだろうか?


好きだと思わない人と、同じ運命を歩むと言うのだろうか?




人間の私には、理解が出来なくて…











出逢わなければ良かったのに…









どうして私を見つけたのよっ?!

ばかっ!!!









むなしい怒りばかり。











私はこんなにも…











彼に会いたいのに…

















カ:ランチ行こっ!

〇:外 雪だよぉ〜寒いのキライ!カレンだけ行ってきな〜

カ:そうやってぇ〜!また食べないのぉ?お腹 空かないの?

〇:もぉ…そんな感覚、分からない…






*88*


カ:〇〇…最近、痩せてきた。可愛くないよ?ガリガリじゃぁ!

藤:カレン〜♡ ランチ行こぉ〜!

〇:ほら、行ってきな!

藤:〇〇も!ヒロがガリガリな子はキライやって!

〇:はぁ?関係ないし!!!

カ:はいはい。同期3人で行こうww





そんな事 言ってるけど…

こうやって、彼が元気でいる事を確認できるのは、私にとって癒しだった。





藤:なぁ?今年はスノボ どないする?

〇:私 行かない…

カ:そんな事 聞いてんじゃないの!ドコに行くかって話し!

〇:だから、行かない!

藤:やっぱ 石川まで行こか?去年、温泉も良かったし!

〇:あのねぇ?どうして3人で行かなきゃなの?カップルと私って…居ズライわ!

藤:3人やないで?あ〜6人…かな?

〇:余計に行かないでイイじゃん!絶対に行かないからね!





とは言うものの、既に休みは取っちゃったし…
ひとりで三連休って…


淋し過ぎるやろぉーーーッ!!!







*89*


こんな時、決まって考えてしまう。

ひとりの休みも、彼が居たらなぁ…

起きた瞬間から楽しかった、あの数日が恋しかった。







片想いかぁ…







基本幸薄には、お似合いかもな。












“ ヒ:〇〇! ”





えっ?ドコ?





辺りを見渡しても、居ない。

だってココ、女子トイレだし。



彼を探して、勢いよくトイレを飛び出した。

オフィスの廊下には、誰も居なくて…




空耳か…




そんな自分が情けなかった。






エレベーターの扉が開くと、たくさんの資料を抱え込んだ、濵田先輩が降りてきた。


私に気付くと、焦った顔で一瞬 足を止め、少しだけ後ずさりしたかと思うと、逃げ出せない状況に諦めたのか、





濵:あ、あの、、、よ、よおっ!





と、久々に顔を合わせた私に、苦笑いをした。



バーベキューでキス未遂をした以来、濵田先輩は、私を避ける様になった。



けど…
もうそろそろ、話したい。






*90*


〇:あの、先輩?今夜、時間ありますか?

濵:え……俺…??

〇:ふふっw 先輩しかいないじゃないですか?

濵:お、お、おう!せやな!ええよ!ははっw





ドサッ!!!





濵:うわぁっ!やっべぇ〜〜!




気が緩んだのか、先輩は持っていた大量の資料を落として ばら撒いた。




〇:もぉ〜〜w 世話がやけるなぁ〜

濵:悪りぃ!……てか、やっぱ、ふたりやと楽しいな?

〇:えっ?//

濵:……は、や、えっ?// そ、そういう意味やないで?//

〇:ふふっw ですよね〜





オフィスでは、今までと変わりなく接する事にした私は、濵田先輩の反応をスンナリ返した。



ホントはドキドキだった。



どういう意味の『楽しい』なんだろう?



先輩がルトゥだとしたら…

私に気があるワケがないんだから…

こないだのキスだって…

幼い頃の記憶だって…





どういう意味があるんだろう?





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