『ルナと月まで』
*11*
流:よぉっ!久しぶりやなぁ〜!
理解できんモノを抱えて、飛ぶ気にはなれず、濵ちゃんに、旧友を呼んでもらった俺。
流:20年ぶりくらいか?や、30…40年?
流星とは、幼馴染かな〜
ちっちゃい頃から、よく遊ばされてた。
その頃からイケメンやったから、俺のオカンに、めっちゃ好かれとってさw
流:もう少しで、またあの日な?、、名月…
シ: “ わぁーめっちゃ お月さんきれぇ〜 ” って ちゃうわっ!、、命日やっ!
流:ぷっ!せやせや!、命日やww
シ:それに、オカンの事、好きすぎやねん!
流:そりゃそぉ〜やろぉ〜!俺からしても、オカンみたいな存在やねんから〜!
*12*
流星にはオカンが居ない。
てか、友達みんな、オカンは居らんのだけど…
なぜか、俺には居る。
あ!あと…
濵ちゃんにも、居るらしい。
シ:なぁ、流星?、、子猫がな? “ おちち ” っちゅーもんが美味しいっつとってんけどな?、、さっきトキさんに聞いた話しやと、猫は魚とか鶏が好きや言われてん。あと、なんか分からん、キャッフー?
流:ふふっw 発音ネイティヴかよ〜w
流星が言うには、哺乳類は、母親のおちちを飲むらしい。
胸から分泌される、液体らしいけど…
なんやそれッ!!!
わけワカメッ!!!
流:シゲも飲んどったんちゃうん?
シ:えっ、そうなん?、、分からん…
俺には、3歳くらいまでの記憶が無い。
って、みんなそうなんかも知れんけど…
写真とかの、記録もない。
たぶん…
消された。
*13*
濵:そんなん、覚えとらんよな?
シ:お、おん…
やっぱり…
濵ちゃんも消されとるんや…
あの頃の記憶
濵:でもさ…地球に来て、オカンの優しい温もりみたいなんは、、思い出した。
シ:…温もり??
濵:おん…〇〇さぁ、、めっちゃ優しいねん//
流:ぷっw 赤なっとるしw
シ:優しいだけなら、俺やってそうやん!
濵:いやいやいや、ちゃうねん!そんなんや ないねん!、、なんちゅうか………母性??
シ:は?母性??
もう、だいぶ前にオカンは居らんくなったし…
母性言われても…
流:俺も解る!もともとオカンは居らんけど…女の子の家庭的なとことか、子供に優ししとるんとか見ると、、女性らしくて、ホッコリすんねんなw
シ:流星まで!、、ホンマ、人間になってまうで?
*14*
シ:ホンマ、人間になってまうで?
流:…俺は、、ええと思っとる。確かに、〇〇を守る仕事は、誰にも勤まるもんやない!、、けど…人間って、、ええもんな気もすんねん。
シ:アホちゃう?、、お前の任務は、何にも計りに掛けるもんなんて無い!
濵:けどシゲ?、、ルトゥには無い、難しい感情やねん。
流:こっち(地球)に来てみれば分かるやん?!
シ:あ、アホぉッ!!!地球になんか、住めるかぁッ!!!
怖い、怖いッ!!!
人間になるなんて、絶対イヤやわ!
コイツら正気とは思えん!!!
コイツら、洗脳されとる…
俺は、地球の恐ろしさに気づいた。
濵:コイツやって、母性の塊やで?
シ:は?、、コイツがぁ??
ルナを見る濵ちゃんは、、優しい眼差しやった。
濵:そいつ、、〇〇を守ろうとして、〇〇から離れたんや。
*15*
濵:、、それに…子供たちも守ろうとしてな、
シ:っ、、、子供…、
はっ!!!
おっ、、オカンっ!!!
その時、思い出した忘れ去られていた記憶。
いや、消されていた記憶だろうか。
俺を…
敵から守ろうと…
自らを犠牲にして…
幼い俺には、残したくない記憶だったんだろう。
惨虐すぎる、この記憶に…
オカン…どないして…?
そこまでしてまでも…
俺たちを、守りたかったん?
家族…
なんて…
俺にも、解るんやろか?
オカンみたいに…
守れるんやろうか……?
流:おい シゲ??大丈夫か?、、顔色わりぃぞ?
シ:っふえぇぇッ?!!!
*16*
流:…家族とか、そんな話しせん方がええかな?、、シゲにはまだ早いんかも…
流星が意味ありげに言った時!
ガサッ!!!
藪から音がして…
はっ!!!
振り向いた俺たちは、もう既に遅く、
濵:、、か、囲まれた…
流:一旦 飛ぼうぜ!
シ:ダメだッ!脚が付く!異次元に放り出されるぞ!!!
敵は10人ほど…
恐らく、ルナを奪いに来たんやろ。
そんな事はさせん。
〇〇の為にも。
濵:、、やるか!
その一言で、敵が一気に襲い掛かってきた!
俺に刃物を向けたヤツを、何とか交わしたが、ルナを抱えていて、バランスを崩し、倒れ込んでしまった!
戦闘の実地は、ほとんど経験がない俺は…
ハッキリ言って、ビビっていた!!!
次の瞬間!!!
*17*
流:シゲ、あぶないッ!!!
ピシュンッ!!!
と、光ほどの速さで飛んできた敵の気に、
俺じゃない何かが、はね返された!!!
バタンっ…
と、暗闇に放り出されたヤツに視線を合わせると…
シ:、、、ルナ…
駆け寄ると…
敵の攻撃は、ルナの前脚にあたっていて…
シ:…ル、ルナ、、俺を…かばったんか…
俺は…
震えていた。
オカンと同じ。
このままやと、、ルナもシんでまう…
濵:シゲッ!!!、しっかりせぇ!!!
まだ2人の敵が残る中、濵ちゃんは、愕然とうなだれる俺を押しのけ、
ルナの前脚に掌を添わせ、手当てを始めた。
濵:ダメや、、、シゲ!チカラかせ!
濵ちゃんは、強引に俺の手を引っ張ると、自分の手の上に重ねた。
*18*
濵:シゲ 早く!、ルナがシんでまうねんッ!!!
その時だった…
頭の中に響いてきた声に似たような、感情…
「、〇〇を…助けてあげて…」
綺麗な声…
ルナ…なのか?
「、〇〇には…あなたが必要…」
その、声の美しさは…
ルナの心。
や、、、〇〇に必要なんは…俺やない…
ルナなんやっ!!!
ピカンッ!!!
と、一瞬だけ勢いよく光ると…
重ねていた掌が、暖かくなっていき、フワンっと軽くなった。
濵:もう、大丈夫や!
掌を退けると、ルナの脚の傷は、跡形もなく消え去っていた。
流:大丈夫やったか?
濵:おん!、、流星こそ、ありがとな!
残りの敵が、流星には敵わず退散していった。
*19*
シ:ほな…帰るな…?
「一刻も早く安心できる場所へ」と、濵ちゃんが後押しする中、
俺は、
絵も言われぬ感情を 覚えながらも…
ルナを抱えて…飛んだ。
異次元空間の壁の色に景色が変わると…
俺は、柔らかな感覚に心が包まれていた。
ルナは、ぐったりしていて…
俺の顔を見ては、綺麗なブルーグレーの瞳で、思いを伝えようとした。
シ:…なんで、俺をかばったんや?
まだ、身体が完治していないのに、必死にその言葉を伝えようとしてるのが分かる。
「、〇〇と…同じ匂いがする…」
「…家族、、だから…」
どうしてか分からない。
なのに…
涙が溢れてきた。
ずっと、、、ずっと、、、
泣くことがなかった俺が…
『 愛おしい 』
そう感じたから…
これが…家族…
*20*
_______
ト:あのね?、、この子猫ちゃんたち…親がいないみたいで…
シ:え…そうなんや…
ほな、、
美味しい言うとった『おちち』も…もう無いんか…
シ:なぁ?、、オカンとこ……一緒に行くか??
なぜだろ?
俺には解った。
コイツらの母親が、、、
ルナだと。
ト:そんな事……できるの??
シ:やっぱ…難いか……なんか、、コイツらをくくりつけていけるモノとか、、ケースとかあれば…
ト:、、、あっ!、、ウチにあるわよ!!!
トキさんの表情が、一気に明るくなった。
人間になるって、不思議やな…
あんなにも、誰かの為に一喜一憂するもんなんか…
しばらくすると、トキさんは移動用のゲージとネコが食べると言われているモノを重たそうに持って帰ってきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!