第63話

『君月』306〜310
131
2020/02/18 13:04

*306*




私は何年、この仕事をしているんだろう。



ただメールで やり取りするだけの、そんなスキルも無いなんて…





杉:今日は もうイイわ。帰りなさい。





優しさなのか、冷たさなのか分からない。



そんな言われ方をされ…





悔しかった。





仕事に恋愛が絡むと、こうも違うのかと感じた。



と、同時に…



この人に、濵田先輩を癒す事は出来ないと…







私はパソコンの画面だけ消し、席を離れた。













テラスの扉を開くと、ベンチに座る後ろ姿が見えた。






〇:、、せ、、、先輩…





生温い風がブワッ!っと吹き上げ、私の顔に髪を被せた。





でも…
そんな事、今は何でも無かった。



「やっときた」と、笑った先輩の隣に座って、おデコからその肩にもたれ掛かった。





濵:っ!えっ??、どないしたん?





*307*



濵:っ!えっ??、どないしたん?




慌てる先輩の声が優しくて、、癒されたのか…



私の目からは、涙が溢れていた。





〇:…ッ……、どうして?





涙でボヤけた視界を横切る先輩の手に、ポンポンと頭を撫でられると…





私の気持ちは、溢れていった。





〇:どうして人間になっちゃったのっ!
ずっと一緒にいて欲しかったのにっ!
だから我慢してきたのにっ!





先輩の掌の動きが止まる。





〇:…私が、、ヒロを選んだから??






〇:違うよね?





先輩は、、、優しすぎるんだ。





〇:幸せにならないなら、そんな事しないでよッ!!!






私を遠ざけようとしてるんでしょ?



ここに呼んだのも、そういう言葉を突きつけようとしてでしょ?






〇:自分ばっかり犠牲になれば、それで良いの?





*308*





〇:私、、許さないから。、、人間になった先輩を、許さないからッ!!!






これでイイ?





私が先輩から遠ざかれば、先輩の思惑通りで、、、




先輩は…




幸せになれるの??




泣きながら、先輩を睨みつけてる私は、、
本当の私じゃ無い。







濵:ゴメン…






ギュッ!!!
っと、強く抱きしめられた。







濵:…ヒロと、、、幸せになりや?








ルナが居なくなった時以来かな?

こんなに泣きじゃくるの…





先輩の優しさは…

どこまでも広く続いてて…




傷ついた私を包み込んでいった。




















ヒ:お前ら、、、何しとん?





〇:っ!!!、ヒロっ!!!






ヒロがいる事もそうだが、


今まで聞いたこともない そのロートーンの声に、ビックリした!






*309*




ヒ:〇〇の心が急に乱れ始めたから、危ない目に会うてるんやないかって思って来てみたら、、お前だったか…





ヒロの声が…

ヒロの目が…

ヒロから感じるもの全てが…





怖かった。















嫉妬。























_____



藤:ルトゥの、気をつけなきゃいけないところは、、ジェラシーやな。

〇:ジェラシー?、なんで?

藤:ほら〜、濵ちゃんやって、〇〇の初彼を突き落としてまったやん?!

〇:そ、そうだったね…

藤:嫉妬心は、ルトゥの心と体の制御を、失わせる。、、せやから、気いつけや?



_____








以前、藤井くんに忠告されていた言葉を思い出すと…






っ!!!






ヒロの掌が、濵田先輩へ向けられた。







〇:ヒロ 辞めてッ!!!





私は、先輩をかばう様に、前に立ちはだかった。






*310*


ヒ:〇〇さぁ?早く帰って来るって、、約束したやん?

〇:だ、だからっ!仕事なんだから…

ヒ:今のが仕事なん?、、そいつに抱きしめられるんが、、〇〇の仕事?





なんだか少し弱々しく、困り眉で言うヒロは…



私の胸を、ギュッと締め付けて離さない。









杉:貴方達…何してるの……?、、、あなたは?、どうしてココにいるの?





セキュリティゲートを通過しなければならないこの場所に、ヒロが居る事に不信感を抱いていた。





ヒ:帰るぞ!






気づかないウチに側まで来ていたヒロに、腕を掴まれた。






〇:待ってヒロ!杉本先輩に知られた、、このまま飛んじゃダメだよ!

ヒ:どして?、、そいつが何とかしてくれるやろ?





ヒロは見下した様に、濵田先輩をアゴで指した。





〇:もう、できないの…

ヒ:は?、、、











ヒ:って……まさか〇〇っ!!!






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