*306*
私は何年、この仕事をしているんだろう。
ただメールで やり取りするだけの、そんなスキルも無いなんて…
杉:今日は もうイイわ。帰りなさい。
優しさなのか、冷たさなのか分からない。
そんな言われ方をされ…
悔しかった。
仕事に恋愛が絡むと、こうも違うのかと感じた。
と、同時に…
この人に、濵田先輩を癒す事は出来ないと…
私はパソコンの画面だけ消し、席を離れた。
テラスの扉を開くと、ベンチに座る後ろ姿が見えた。
〇:、、せ、、、先輩…
生温い風がブワッ!っと吹き上げ、私の顔に髪を被せた。
でも…
そんな事、今は何でも無かった。
「やっときた」と、笑った先輩の隣に座って、おデコからその肩にもたれ掛かった。
濵:っ!えっ??、どないしたん?
*307*
濵:っ!えっ??、どないしたん?
慌てる先輩の声が優しくて、、癒されたのか…
私の目からは、涙が溢れていた。
〇:…ッ……、どうして?
涙でボヤけた視界を横切る先輩の手に、ポンポンと頭を撫でられると…
私の気持ちは、溢れていった。
〇:どうして人間になっちゃったのっ!
ずっと一緒にいて欲しかったのにっ!
だから我慢してきたのにっ!
先輩の掌の動きが止まる。
〇:…私が、、ヒロを選んだから??
〇:違うよね?
先輩は、、、優しすぎるんだ。
〇:幸せにならないなら、そんな事しないでよッ!!!
私を遠ざけようとしてるんでしょ?
ここに呼んだのも、そういう言葉を突きつけようとしてでしょ?
〇:自分ばっかり犠牲になれば、それで良いの?
*308*
〇:私、、許さないから。、、人間になった先輩を、許さないからッ!!!
これでイイ?
私が先輩から遠ざかれば、先輩の思惑通りで、、、
先輩は…
幸せになれるの??
泣きながら、先輩を睨みつけてる私は、、
本当の私じゃ無い。
濵:ゴメン…
ギュッ!!!
っと、強く抱きしめられた。
濵:…ヒロと、、、幸せになりや?
ルナが居なくなった時以来かな?
こんなに泣きじゃくるの…
先輩の優しさは…
どこまでも広く続いてて…
傷ついた私を包み込んでいった。
ヒ:お前ら、、、何しとん?
〇:っ!!!、ヒロっ!!!
ヒロがいる事もそうだが、
今まで聞いたこともない そのロートーンの声に、ビックリした!
*309*
ヒ:〇〇の心が急に乱れ始めたから、危ない目に会うてるんやないかって思って来てみたら、、お前だったか…
ヒロの声が…
ヒロの目が…
ヒロから感じるもの全てが…
怖かった。
嫉妬。
_____
藤:ルトゥの、気をつけなきゃいけないところは、、ジェラシーやな。
〇:ジェラシー?、なんで?
藤:ほら〜、濵ちゃんやって、〇〇の初彼を突き落としてまったやん?!
〇:そ、そうだったね…
藤:嫉妬心は、ルトゥの心と体の制御を、失わせる。、、せやから、気いつけや?
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以前、藤井くんに忠告されていた言葉を思い出すと…
っ!!!
ヒロの掌が、濵田先輩へ向けられた。
〇:ヒロ 辞めてッ!!!
私は、先輩をかばう様に、前に立ちはだかった。
*310*
ヒ:〇〇さぁ?早く帰って来るって、、約束したやん?
〇:だ、だからっ!仕事なんだから…
ヒ:今のが仕事なん?、、そいつに抱きしめられるんが、、〇〇の仕事?
なんだか少し弱々しく、困り眉で言うヒロは…
私の胸を、ギュッと締め付けて離さない。
杉:貴方達…何してるの……?、、、あなたは?、どうしてココにいるの?
セキュリティゲートを通過しなければならないこの場所に、ヒロが居る事に不信感を抱いていた。
ヒ:帰るぞ!
気づかないウチに側まで来ていたヒロに、腕を掴まれた。
〇:待ってヒロ!杉本先輩に知られた、、このまま飛んじゃダメだよ!
ヒ:どして?、、そいつが何とかしてくれるやろ?
ヒロは見下した様に、濵田先輩をアゴで指した。
〇:もう、できないの…
ヒ:は?、、、
ヒ:って……まさか〇〇っ!!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!