*176*
ヒ:仕事…大変なんやない?
〇:…うん…まぁ…ワザと忙しくしてるしね…
手を洗う私の顔を、鏡ごしに見ながら心配そうに…
ヒ:もうさ?辞めちゃえば?
辞めたところで、現状は何も変わらない。
そんな風に、考えてしまう。
〇:そんな…気を使わないで…
っ!!!
止められてない水の音が、抱きしめられた その鼓動と連動してるかの様だった。
〇:その提案に答えたら…言う事聞いてくれるの?
ヒ:えっ……キスするってこと?
〇:だって、この流れだったら、普通はキスして、抱きしめ合って……
〇:……求め合うでしょ??
ヒ:…そう…なんか……??
分かって無いのが…悔しい…
〇:藤井くんに、教えてもらってよッ!!!
教えてもらって、出来ることでは無いのに…
何言ってるんだろう?
私。
*177*
ヒ:…〇〇が、教えてよ……?
〇:っ!//……な、何を言ってるのっ?///
ヒ:キスは出来ひんけど……
鏡越しの彼が、鏡の中の私の首に…
っ//……んぅっ///…
彼はまるで、柔らかな唇にキスをするかの様に…
優しく…
……ふはぁんっ///…っ//…
そうやって首筋をなぞられるだけで、漏れてしまう声は…
私の溜まった欲望を、解放していくみたいで…
このまま…
攻められたら……
交わせない。
止められない。
辞められなくなっちゃうよ…
「〇:辞めて…//」
「ヒ:イヤや……」
〇:キャッ!な、何すんのっ?!!!
ヒ:ベット。
私を軽く抱き上げると、寝室へと入り、そっと……ベットへ寝かせた。
*178*
ココで拒むことだって出来るはずだった…
けど…
彼の琥珀の瞳が…
真っ直ぐすぎる眼差しが…
私の理性を打ち消していくかの様に…
動きを…
封じていく…
「〇:私は……何のために…宿されたの?」
「ヒ:月とルトゥを救うためやろ?」
「〇:…あなたを救うことは?……私には…できないの??」
人間は…
愛を持って…
その身体を求め合う…
なのに…
あなたを求める事は……
あなたの命さえも…
脅かす…
「〇:シ……にたい……もう…」
私が居なくなれば…
ルトゥも、その運命を受け入れるであろう。
*179*
「ヒ:…〇〇がシぬなら……俺も…」
〇:えっ……どうして…そうなるの……?
ヒ:俺らはルトゥナや。……同じ運命を…辿る。
〇:っ!!!
ルトゥナ…
愕然とした。
どうやっても…
彼を守る事は…出来ない……
〇:だったら……キスしてよ…ッ………
ヒ:・・・ごめん…
覆いかぶさっていた彼の顔は…
悲しそうに微笑んで、隣へ並んだ。
ヒ:なぁ 〇〇?
〇:・・・ん?
ヒ:今度、デートしよか?
〇:えっ…でーとぉ?
ヒ:おん!恋人同士やなくても、デートは ええんやろ?
あ〜……でた…
可愛い……かよ……………………ふふっw
いつもこうだ!
こうやって、私のペースを乱す。
でも…
*180*
でも…
それが、たったの、ほんの一瞬だとしても…
イヤな事全部を、忘れられる。
ヒ:明日は?仕事、休みやろ?
〇:えっ!アシタぁ??
ヒ:ええやん!なっ?ええやろぉ〜〜!!!
そんな瞬間を知ってるからかな…?
私が彼を……好きな理由は。
ヒ:なっ?おねがいっ?なぁ〜〜??
〇:……もう分かったぁ〜〜!ww
ヒ:やったぁーーーッ!!!
〇:っ!!!ちょっ、チョットっ!!!
彼は私を抱きしめると、「良かったぁ〜♡」と言い残し、そのまま すぅ〜〜っと、眠りについた。
不思議なくらい穏やかに。
てか…
私、また抱き枕やんっ!!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!