第75話

『君月』361〜365
110
2020/05/20 10:55

*361*





シゲさんが、目覚めない日々が続き…




もう、誰もが諦めかけていた。





一方私は、思いの外、回復が早く、





「姫様?、、今日からは、宮殿のお部屋で過ごされるんですよ?、ステキなお部屋でしょうねぇ〜♡」






ずっと、側で看護をしてくれていたせいか、

何となく…仲良くなった彼女とも、お別れだった。





「羨ましいなぁ〜、、それに…淋しくなります…」




私が微笑むと、彼女も微笑んだ。




ルトゥは、こんなにも人間に似ているのに、
どうして、恋愛をしないのだろう?


彼女の微笑みを見てると、不思議で仕方なかった。




その日、私は初めて建物の外に出た。


私は、初めて見た月の地下都市に、ビックリした!



地下とは思えないほど天は遠く…

空を走る車のような乗り物は、長いカプセルのようなトンネルの中を行き交っていた。







*362*




ここは まるで…





地球の人々が描く、未来都市。








桐「どうされました?」

〇「いや、、スゴいですね…」

桐「まぁ、地球とは、違いますからねw」





晴れ渡る空さえ無いものの…

そこは、明るい世界だった。




ただそれだけなのに、
私の心は、少しだけ晴れた。





桐「ここが、姫様のお家になります。」

〇「ッ!!!、、え、えぇぇぇーーーーーッ!!!」

桐「ふふっw ビックリしすぎやろ〜ww」

〇「だ、だってぇ!!!」





地球では見ない形の、大き過ぎる建造物!


これが家だなんて、ビックリするなって方が、おかしいっしょっ!!!




信じられないことの繰り返しで、

私は、心なしか浮かれていた。




それは、久しぶりの感情だった。






*363*



桐「今日からは、宮殿に仕える者たちが、姫様の お世話をいたします。」




その宮殿の高い位置にある、口のように開いたロータリーへと到着すると、

桐山さんは私を導き、仕えの方々を紹介した。




何十人もの仕えの人が、私を出迎えに、列を作って、

まるで お祭りかのように、地球のファンファーレみたいな音楽が流れていた。




桐「では!、、姫様をよろしく!」

〇「えっ、桐山さんは…帰られてしまうんですか?」

桐「、、実は私…こちらに移住する事になりまして…」

〇「え!、、同棲ってこと、、ですか??」

桐「ぷっ!、、なワケないじゃないですかぁ〜w」

〇「で、ですよね…ふふっw」

桐「宮殿での任務をさせて頂けることになりました。、、せんえつながら…姫様のお側にと、申し出まして…」

〇「っ!、ほ、本当ですか?!、、ありがとうございます!嬉しいです!!!」







*364*



桐山さんとは、まだ出会ったばかり。


だけど…


知らない星での不安は、思ったよりも大きくて…



何か、心の支えとなるモノを求めていた。





桐「これからは毎日、会えますよぉ〜w」

〇「ふふっw、毎日は、ちょっとw」

桐「なんでやねんっ!」





これからの月での生活に、少しだけ希望を持てた。

そんな瞬間だった。














次の日。




桐「姫様、、、おはようございまっすw」





大きな大きな広間で、都市が一望できる大きな窓の外を眺めていた私に、

桐山さんは、優しく、微笑んでくれた。






〇「素敵な世界、、ですね…」






いつも、少しモヤがかっていて…

未来的なのに、時間はゆっくり流れている感じがする、


不思議な世界。





私は、一面に広がるその世界を目の前に、




何もできずに、ただ…




立ち尽くすだけだった。







*365*




〇「ふふっw …」

桐「ん??、、急に笑われて…どうされました?」






自分の想像力の乏しさに、思わず笑えてきた。






〇「ふふっw、、私の勝手な妄想が、アホらしくてw」

桐「何をご想像 されてたんすか?」

〇「や、月の人でしょ?、、やっぱりかぐや姫のイメージだったから、、お迎えには…牛車…的な?ww」

桐「牛ぃ??、月には居らんしww」

〇「あと…服もね、、、十二単とか着せられるのかと思ってたww」

桐「かなり、古風な感じやねw」

〇「でも、この服とか髪型とか…まるでレイア姫だなぁ〜と思って、」

桐「あ〜、あながち間違ってないよ?、あの映画はルトゥが大勢 携わっとるからな!」

〇「えっ!、ホントにっ?!」

桐「、、めっちゃ、似合っとりますよ?」

〇「、へっ//?、、あ、ありがとう…ございます//」






この時、不思議なほど、



私の心は、穏やかだった。





プリ小説オーディオドラマ