*361*
シゲさんが、目覚めない日々が続き…
もう、誰もが諦めかけていた。
一方私は、思いの外、回復が早く、
「姫様?、、今日からは、宮殿のお部屋で過ごされるんですよ?、ステキなお部屋でしょうねぇ〜♡」
ずっと、側で看護をしてくれていたせいか、
何となく…仲良くなった彼女とも、お別れだった。
「羨ましいなぁ〜、、それに…淋しくなります…」
私が微笑むと、彼女も微笑んだ。
ルトゥは、こんなにも人間に似ているのに、
どうして、恋愛をしないのだろう?
彼女の微笑みを見てると、不思議で仕方なかった。
その日、私は初めて建物の外に出た。
私は、初めて見た月の地下都市に、ビックリした!
地下とは思えないほど天は遠く…
空を走る車のような乗り物は、長いカプセルのようなトンネルの中を行き交っていた。
*362*
ここは まるで…
地球の人々が描く、未来都市。
桐「どうされました?」
〇「いや、、スゴいですね…」
桐「まぁ、地球とは、違いますからねw」
晴れ渡る空さえ無いものの…
そこは、明るい世界だった。
ただそれだけなのに、
私の心は、少しだけ晴れた。
桐「ここが、姫様のお家になります。」
〇「ッ!!!、、え、えぇぇぇーーーーーッ!!!」
桐「ふふっw ビックリしすぎやろ〜ww」
〇「だ、だってぇ!!!」
地球では見ない形の、大き過ぎる建造物!
これが家だなんて、ビックリするなって方が、おかしいっしょっ!!!
信じられないことの繰り返しで、
私は、心なしか浮かれていた。
それは、久しぶりの感情だった。
*363*
桐「今日からは、宮殿に仕える者たちが、姫様の お世話をいたします。」
その宮殿の高い位置にある、口のように開いたロータリーへと到着すると、
桐山さんは私を導き、仕えの方々を紹介した。
何十人もの仕えの人が、私を出迎えに、列を作って、
まるで お祭りかのように、地球のファンファーレみたいな音楽が流れていた。
桐「では!、、姫様をよろしく!」
〇「えっ、桐山さんは…帰られてしまうんですか?」
桐「、、実は私…こちらに移住する事になりまして…」
〇「え!、、同棲ってこと、、ですか??」
桐「ぷっ!、、なワケないじゃないですかぁ〜w」
〇「で、ですよね…ふふっw」
桐「宮殿での任務をさせて頂けることになりました。、、せんえつながら…姫様のお側にと、申し出まして…」
〇「っ!、ほ、本当ですか?!、、ありがとうございます!嬉しいです!!!」
*364*
桐山さんとは、まだ出会ったばかり。
だけど…
知らない星での不安は、思ったよりも大きくて…
何か、心の支えとなるモノを求めていた。
桐「これからは毎日、会えますよぉ〜w」
〇「ふふっw、毎日は、ちょっとw」
桐「なんでやねんっ!」
これからの月での生活に、少しだけ希望を持てた。
そんな瞬間だった。
次の日。
桐「姫様、、、おはようございまっすw」
大きな大きな広間で、都市が一望できる大きな窓の外を眺めていた私に、
桐山さんは、優しく、微笑んでくれた。
〇「素敵な世界、、ですね…」
いつも、少しモヤがかっていて…
未来的なのに、時間はゆっくり流れている感じがする、
不思議な世界。
私は、一面に広がるその世界を目の前に、
何もできずに、ただ…
立ち尽くすだけだった。
*365*
〇「ふふっw …」
桐「ん??、、急に笑われて…どうされました?」
自分の想像力の乏しさに、思わず笑えてきた。
〇「ふふっw、、私の勝手な妄想が、アホらしくてw」
桐「何をご想像 されてたんすか?」
〇「や、月の人でしょ?、、やっぱりかぐや姫のイメージだったから、、お迎えには…牛車…的な?ww」
桐「牛ぃ??、月には居らんしww」
〇「あと…服もね、、、十二単とか着せられるのかと思ってたww」
桐「かなり、古風な感じやねw」
〇「でも、この服とか髪型とか…まるでレイア姫だなぁ〜と思って、」
桐「あ〜、あながち間違ってないよ?、あの映画はルトゥが大勢 携わっとるからな!」
〇「えっ!、ホントにっ?!」
桐「、、めっちゃ、似合っとりますよ?」
〇「、へっ//?、、あ、ありがとう…ございます//」
この時、不思議なほど、
私の心は、穏やかだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。