第29話

『君月』136〜140
179
2020/02/02 02:09

*136*



濵:〇〇?俺たち、どれだけキスしてきたか…分かるか?

〇:えっ…どれだけって…そんなに?

濵:…いつも初めて会うのに…その度に〇〇は、俺に好意を持ってくれた。
両想いなのは分かってるのに…キスまでしたら終わりの繰り返しや。
〇〇の身体は…反応しとるのに…俺は……

〇:っ!// チョッ!そんなコトっ!!!

濵:さっきだって、そうやったやろ?

〇:さ、さっきは//…そのっ…//





反論はできないけど!

だからって、皆んなの前で!





〇:それにっ!好きだったなんて信じられない!だって、記憶消せばイイんでしょっ?!だったら……








〇:遊びだったんじゃないの?







濵:っ!ホンマそれだけはちゃうッ!!!






あーーーッ!もうッ!!!

分かんないっ!!!







「ヒ:〇〇っ!聞こえるかっ?」






っ!はっ!!!






*137*



「ヒ:〇〇っ!聞こえるかっ?」



っ!はっ!!!



〇:う…ぅん//…っ…



「ヒ:会いたいよ…〇〇…」



〇:ぅぅっ…っ……私も//…だよ//…っ…



「ヒ:〇〇…」






身体の中に、彼の暖かさが流れ込む感覚で…



涙が、、、溢れた。






〇:でも…でも今は、会えない。



「ヒ:えっ、どないして?」



〇:…気持ちの整理がつかないから。



「ヒ:そいつが、好きって事?」



〇:…分からない。ゴメン……












私に…

月へ帰らないなんて、選択肢があるの?








そんな選択肢……無いでしょ…?









濵:〇〇?全部 話すから…聞いてくれへん?頼む!





〇:カレンも一緒なら…いいですよ。








先輩は、私が思い出していない事や、その背景を話してくれた。





恐らく…

知られたくない事ばかりを。








*138*


初めての彼氏を突き落としたのは、やっぱり先輩。




私に男が出来た。

それだけで許せなかった。

自分でも歯止めが効かなかった。




それに、まだ私の迎えが来る前の事で…

まだ、大人と認められない姫に、指一本でも触れさせるワケにはいかなかった。






ふたり目の彼氏。

試合中、怪我をする様に仕向けたのも先輩。


それ以降の、彼氏が謹慎処分にされるまでの行為も、全て先輩が仕向けた。


その後、月からの迎えが来られなくなって、任務から解放されたのかと思った時に、ふたりでスノボに来たが、任務は続行されると分かり、私の記憶から消した。







3人目の彼氏。



コイツは〇〇を騙してた。

二股どころか、四股までしていた。





濵:せやから、世間から立ち直れん様に仕向けたんや!

カ:…先輩……ドヤ顔するところじゃないですよ?

濵:…せやな。







*139*


濵:…最近やったら…プレゼンの前日に残ってた時に…キスを…な?//

〇:はっ?そんな最近に?

濵:ゴメン!衝動的に…

〇:衝動的って!襲ったって事ですかっ?

濵:や、や、ちゃうよぉ!っんもぉッ!!!





先輩は、頭の後ろを掻きむしりながら、ムシャクシャする感情に苛立っていた。





濵:〇〇、その気やったやん!

〇:知りませんよっ!

濵:ほな、どうしてさっきは拒まへんかったん?

〇:は?…それは…





色々な事情と、人間としての欲求と、これから先への不安と、藤井くんのアドバイスと…




たくさんの何かが、
たくさんの想いを知らせて来て…






私…先輩の事…好きなのかな…?






って考えるようになってて…







上手く言えないけど…













〇:私……セツナさに……負けたんだと思う……










黙り込んだ 四人の心に、同じように流れた感情があった。








*140*


藤:そろそろ…かな?

濵:はいよ…

藤:カレン?チョット立って?





そう言うと、カレンの両手を引き上げ、立たせた。





カ:えっ?どっか行くの?

藤:カレン…俺の目を見て?

カ:なにぃ//…どうしたのぉ?//





藤井くんは、両手を繋いだまま、カレンの瞳を除き込み、ニコッ♡っと笑顔を見せた。





っ!!!なに?!!!





カレンが笑顔に緩んだ隙だった。


先輩がカレンの背中に掌を当て、ほんの1cmくらいを、クッ!っと押すと…

カレンは、スッと目を閉じ、膝から崩れ落ちた。



「っ!おっと!」と、藤井くんがカレンを抱き止めた。





〇:っ!な、何をしたの?カレンに何したのよッ!!!





取り乱すのも無理はないでしょ?

だって、ほんの1cmの一撃で、意識を失ってるんだから。





濵:消した。

〇:…………え…?

藤:大丈夫。気絶してるだけやから!




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