第34話

『君月』161〜165
201
2020/02/02 02:17


*161*



その、細くて長い指で、髪の隙間をなぞっていく。



彼が髪に触れる その感覚は、優しさと言えるほど…



私の体温を、構わず上げていく。









ホントやばい…




もう、保たない…








〇:て、てか//…ど、どうして?…う、ウチに来たの?まさか、藤井くんとケンカでもしたぁ??






散らさなきゃっ!!!

こんな気持ち、散らさなきゃ!!!






自分を見失う前に!






ヒ:喧嘩したって言うか……「男見せろ」って言われてん…

〇:エッ!オトコって!






もぉッ!!!

やっぱり藤井くん!

変な事吹き込んでぇーーーッ!!!






ヒ:イマイチ…分かんねぇ……けど…







ヒ:〇〇の顔見たら……何となく分かったかも……






〇:っ!!!へっ?……へッッッ??







*162*






ヒ:…〇〇ってさ……






彼がドライヤーを止めると、一気に静まった部屋。





同じ空間にいる事を…







ドッと意識してしまう…












ヒ:〇〇って……こんな綺麗やった…?
















〇:…えっ//…………?










ヒ:人間の心って、不思議やな……こんなにも〇〇に会いたくて…こんなにも〇〇に……








ヒ:触れたい……って………思うねん。










ふ、ふ、フレタイ〜〜っ??








〇:え、ちょっ、ちょっ、まって?
何を吹き込まれたのか知らないけど…






私はその場から、少し離れながら言った。







〇:……ダメでしょ?…そんなの、ダメに決まってるじゃん!








その時、解った。





人間の欲望とは……


想像を超える、力を持っているんだと。


簡単に、心でさえも…


動かされてしまうんだと。








*163*



〇:…人間には……なれない…………でしょ?!





彼は、悔しそうに下唇を噛んだ。




しばらくして「せやな…」と、ドライヤーを持って行こうとした時…






〇:あ、あの//……だったらさ………






閃いた私の決心。











〇:…//…キス………しない…?








自分で言っといて、目が泳ぐ。





でも、打ち消そうと続ける私は、


彼を人間にしてはダメだという思いと…







〇:あなたの身体を……ルトゥに戻す。






それと…












彼に触れたい。











そんな思いが、交差していた。








ヒ:フッw あんな嫌がっとったのに……今度は俺が、嫌がるなんてな…







彼はドライヤーを片しに行ってしまった。





その後ろ姿を見る私は、どこかの回路がショートしていた。











彼に………触れたい……







*164*




大丈夫…私にだってそのくらい…




今の彼なら。




だって、私の方が人間の先輩だもの!




人間の…
欲望の事についてだって、私の方が理解してるハズ!






そうやって誘えば必ず…






体は反応する。







キスしたくなる………きっと…









ヒ:もう寝るやろ?俺、コタツでええから。

〇:えっ!でも…

ヒ:だって俺ら、恋人同士やないやろ?だから一緒に寝ないんやろ?

〇:ま…まぁ…そうだけど…







解ってる様で解ってない『人間の生態』を、彼なりにやっているのだろうけど…






〇:い//一緒でも…いいよ//…?







私の思惑とは反対だったから、そう答えたのに…






ヒ:おかしいやん!お風呂は一緒に入れん言うたやん!

〇:それとは全く違うでしょ?!それに…






それに、今は状況が変わってるじゃん…






*165*


解らない彼を相手に、私は空を掴む感覚だった。





でも、私も私か…





好きか分からない人に「一緒に寝てもいい」だなんて…

彼を混乱させるだけだな。






〇:分かったよ。じゃあ、お休みなさい…

ヒ:あ!待って〇〇…






彼は数歩 近寄り、私を抱き寄せた。





一緒に寝ないと決めた私は、どこか油断していたのか…




歩み寄る彼を拒もうとはしなかった。






ヒ:ハグ…なら ええやろ?恋人同士やなくても…





解ってるのか、解ってないのか…

私の頭では もう、解読不明だ。





理解してやっているのなら、スマートかも知れないし…

理解してないのだとすれば…






可愛い……かよ…♡







また、掻き乱される感覚だ。


彼はやっぱり、私の『ルトゥナ』…









運命の人なんだ。





そう感じた私とは裏腹に…











「おやすみ」と微笑み、私から離れていった。





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