*311*
ヒ:まさか〇〇っ!!!
握られていた腕の力が、強くなる。
顔をしかめ、それを堪えた。
っ!!!、、、いッ、、痛い、、、
痛さで、気を失いそうなほどの私は…
「私じゃない」のたった一言が、、出ない。
濵:おいっ!辞めろっ!!!
ヒ:ウッサイッ!!!
ヒロの掌が また、濵田先輩へと向けられると、何もできなかった。
_____
っ!!!、、いったぁ〜〜!
気がつくと、そこは自分のベッド。
起き上がった瞬間、左の二の腕に痛みが走った。
あの後 私は…
ヒロに掴まれ飛んだ瞬間に、気を失っていたらしい。
玄関のドアが開く音が聞こえると…
買い物袋を持ったヒロが、部屋へ入ってきた。
ヒ:っぅわぁ!!!ビックリしたぁ〜〜!
*312*
ヒ:っぅわぁ!!!ビックリしたぁ〜〜!
ベッドで起き上がっていた私が、想定外だったのか、可愛くビクッとしていた。
ヒ:起きてるなら言うてやぁ〜w
何も無かったかの様に、普段のヒロだった。
〇:どこへ?
ヒ:あ〜、、湿布をな、、買いに。
と、買い物袋から その箱を取り出した。
ヒロはベッドの横に正座すると、
ヒ:〇〇!ほんっまにゴメンなさいっ!!!
と、深々と頭を下げた。
ヒ:傷つけてしもうて、、心も身体も。
ヒロの気持ちは、知ってる。
心はスグ側にあるから。
〇:ジェラシーでしょ?、、だったらイイよ!、許してあげるw
ヒ:ホンマ??
〇:うん、ホンマww
ヒロは天使の笑顔を見せた。
ただそれだけで…
心がホッとし、暖まるのが分かった。
〇:っ!ぃっ!!!
*313*
〇:っ!ぃっ!!!
ヒロに触れたくて伸ばした腕に、激痛が走った。
ヒ:っ!〇〇、大丈夫ッ?!!!
ヒロは押さえた私の手を そっと外すと、ユックリと袖をまくり上げた。
ヒ:…酷いな、、ゴメン、、
ヒロが握りしめた手の形に残ったアザが、赤紫色に染まっていて、見るからに痛々しかった。
そのアザに、そっとヒロの掌が重なると、、
ヒ:〇〇…キスしよっか?
〇:えっ、、キスって…?
この状況で「キスしよう」と言うヒロに、私は戸惑っていた。
だって、今しようと言ってる「キス」って…
あの、、
出逢った時の、、、「キス」のことでしょ?
ヒ:大丈夫。、、俺だけを、感じて?
ベッドに腰掛けたヒロの手は…
私の首すじを掠めると、髪の隙間を埋めるように指を滑らせた。
私はもう!
ヒロの唇から、目が離せなかった!
*314*
緊張で、キュッと上がった肩。
伏し目がちに 引いたアゴ。
傾く鼻先。
ヒロの唇は、私の唇を引き寄せ、フワッとすくい上げた。
キュンっ♡
はっきりと、そんな音が聞こえた。
ヒロの誘導が、私の唇を柔らかく変えていく、、、
「〇:すき…」
心が そう呟いた瞬間、、、
ピキーーーーーーーーンッ!!!
電流の様な、、
一本の長い針金の様なものが、、
頭の先から、足の指先へと身体を抜けていった。
ビックリして目を開くと、、
ヒロの瞳が、キラキラと透き通って見えて…
この世の中の、何よりも美しく感じた。
腕のアザに被さっていたヒロの手をどけると…
赤紫色に痛々しかったアザが、薄っすらとしたピンクに変わっていて、
少し動かしても、さっきの激痛は無かった。
*315*
ヒロは、薄くなったアザの上に、さっき買ってきた湿布を貼りながら、
ヒ:あ〜あ。俺、完全にルトゥに戻ってもうたなぁ〜
残念そうに、でも少し冗談っぽく、そう言った。
〇:ヒロ?
ヒ:ん?
〇:私を、、守ってくれる?
ヒ:…おん。おいで?
両手を軽く広げ、天使かと思える程の笑顔を見せた。
ヒ:ずっと、側に居る。、、月に行っても ずっと…
〇:うん//
ヒロに包まれる心地よさは…
今までの悪夢が全て、浄化されていくかのようだった。
ヒ:すきだよ//
〇:私も///…すき♡
考えてみたら『やっと』なのかも知れない。
安定した幸せ♡
〇:あっ!!!23:59!!!
ヒ:ホンマや!
私達は、ふたりで秒針を見つめた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。