*396*
体調もよく、まだ陣痛もなかった私は、大毅の隣で、すまし顔して参列していた。
大きなお腹を抱えているとは思えないくらい、身体が軽く、たくさんの皆さんに笑顔で接する事ができた。
昨日の恐怖は、みじんもなかった。
だったんだけど…
式典も終盤にかかり、退席する直前だった。
桐山さんの部下達が、忙しく動きだした!
桐:姫様!、、直ちにお車へ!
シ:〇〇 行くで!!!
〇:ど、どうかしたの?
シ:っええから、はよッ!!!
グッと腕を掴まれた その瞬間…
キーーーーーン!と耳鳴りがし意識がどこかへ引っ張られて、
私は無音状態になった!
「…〇〇、、、〇〇、、、」
*397*
「…〇〇、、、、、〇〇、、、」
頭の中で木霊する…
私の体内に染み渡り、全てを包み込むような…
愛おしい声…
「〇:…ねぇ、、、ヒロなの……?」
フワンっと身体が浮いた衝撃で、いつのまにか閉じていたまぶたを、パッと開いた!
〇:っ// 、だ、大毅っ!//
シ:落ちんなよっ!
〇:わ、わたし// 、、歩けるからっ!
シ:歩いてたんじゃ、遅ぇんだよッ!!!
私をお姫様抱っこし、走る大毅の姿は、
大勢のルトゥたちに注目されていた。
それは まさに、真のヒーロー。
ルトゥたちは、そんな風に感じていたに違いない。
そんな私たちに、風は吹いた。
*398*
走る大毅の振動と、すぐそばにある横顔。
ひたいの汗はキラキラと滲み、風を受けた前髪はサラサラなびく…
素敵な人。
〇:ッ!!!、、、、、
シ:どないしたっ?
そっと、車の後部座席に降ろされた瞬間だった。
〇:…ちょ、、チョットだけ………ぃた…ぃ、、だけ、
シ:っ、ぅ、ぅへぇッ!、、だ、だい、、、
〇:だいじょぉぶぅ、、もう治ったから、
シ:でも、、そ、それってっ…
〇:、まだ分かんないけど…
桐:とにかく、出発します!
〇:お城へ戻るなら、お医者さんを、、
シ:〇〇、城へは戻らん。今から行くのは、シェルターや。
〇:シェルターって、、何があったの?
桐:俺らにも、分からんのですわ!、すみませんっ!
シ:なにか…巨大な勢力が、近づいてる。
*399*
桐:シゲが、姫様を連れてきた時のルトゥのチカラよりも、遥かにデッカいチカラ……とだけは分かってるんですが、、
〇:ルトゥのチカラなの?
桐:…かと思われるんですが…
シ:とにかく、シェルターに医者を呼んでおこう!
〇:そ、そうね…
シ:、、大丈夫やから、、必ず俺が守る!
私の手を握り、強い眼差しを向ける大毅。
〇:うん。
そう、私がうなずくだけで、、
大毅は、、、笑顔になった。
大毅の笑顔は、不思議なパワーを秘めていて…
ルトゥのチカラとは違う、
私にとっては、他にはない癒し。
大毅が私を守ってくれるように、、、
私も守りたい。
大切な、唯一無二の存在を。
だから…
怖い事なんて、、起きませんように…
*400*
私たちを乗せた車は、空を飛び、蜂の巣みたいに繋がるトンネルを次々に抜け、
やがてある建物の地下深くへと降りていった。
建物の中の停留所で止まると、桐山さんの部下たちが待機していた。
何人いるのだろう、、、
その人数だけでも、厳重体制だと分かる。
そんな事を感じ、私の顔が強張っていたのか、、、
シ:〇〇??、、スマ〜イルぅ〜!
私の頬に指を当て、クニっと 口角を上げた。
シ:胎教に悪いからなw
〇:…そうだね、、ありがとう…
私は大毅に手を取られ、大きく開いた扉へと向かった。
ドカーーーーーーーーーーーーンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
その時!!!
何かの爆発音の様な、とてつもなく大きな音が響き渡り、
それと同時に、揺れを感じた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。