第86話

『君月』396〜400
100
2020/06/04 12:52

*396*



体調もよく、まだ陣痛もなかった私は、大毅の隣で、すまし顔して参列していた。


大きなお腹を抱えているとは思えないくらい、身体が軽く、たくさんの皆さんに笑顔で接する事ができた。





昨日の恐怖は、みじんもなかった。








だったんだけど…

















式典も終盤にかかり、退席する直前だった。

桐山さんの部下達が、忙しく動きだした!







桐:姫様!、、直ちにお車へ!

シ:〇〇 行くで!!!

〇:ど、どうかしたの?

シ:っええから、はよッ!!!







グッと腕を掴まれた その瞬間…









キーーーーーン!と耳鳴りがし意識がどこかへ引っ張られて、







私は無音状態になった!







































「…〇〇、、、〇〇、、、」








*397*





「…〇〇、、、、、〇〇、、、」











頭の中で木霊する…












私の体内に染み渡り、全てを包み込むような…











愛おしい声…

















「〇:…ねぇ、、、ヒロなの……?」













フワンっと身体が浮いた衝撃で、いつのまにか閉じていたまぶたを、パッと開いた!








〇:っ// 、だ、大毅っ!//

シ:落ちんなよっ!

〇:わ、わたし// 、、歩けるからっ!

シ:歩いてたんじゃ、遅ぇんだよッ!!!






私をお姫様抱っこし、走る大毅の姿は、

大勢のルトゥたちに注目されていた。




それは まさに、真のヒーロー。



ルトゥたちは、そんな風に感じていたに違いない。







そんな私たちに、風は吹いた。






*398*




走る大毅の振動と、すぐそばにある横顔。


ひたいの汗はキラキラと滲み、風を受けた前髪はサラサラなびく…







素敵な人。


























〇:ッ!!!、、、、、








シ:どないしたっ?








そっと、車の後部座席に降ろされた瞬間だった。






〇:…ちょ、、チョットだけ………ぃた…ぃ、、だけ、

シ:っ、ぅ、ぅへぇッ!、、だ、だい、、、

〇:だいじょぉぶぅ、、もう治ったから、

シ:でも、、そ、それってっ…

〇:、まだ分かんないけど…

桐:とにかく、出発します!

〇:お城へ戻るなら、お医者さんを、、

シ:〇〇、城へは戻らん。今から行くのは、シェルターや。

〇:シェルターって、、何があったの?

桐:俺らにも、分からんのですわ!、すみませんっ!

シ:なにか…巨大な勢力が、近づいてる。






*399*


桐:シゲが、姫様を連れてきた時のルトゥのチカラよりも、遥かにデッカいチカラ……とだけは分かってるんですが、、

〇:ルトゥのチカラなの?

桐:…かと思われるんですが…

シ:とにかく、シェルターに医者を呼んでおこう!

〇:そ、そうね…

シ:、、大丈夫やから、、必ず俺が守る!






私の手を握り、強い眼差しを向ける大毅。






〇:うん。






そう、私がうなずくだけで、、






大毅は、、、笑顔になった。






大毅の笑顔は、不思議なパワーを秘めていて…

ルトゥのチカラとは違う、






私にとっては、他にはない癒し。







大毅が私を守ってくれるように、、、







私も守りたい。







大切な、唯一無二の存在を。






だから…
怖い事なんて、、起きませんように…







*400*




私たちを乗せた車は、空を飛び、蜂の巣みたいに繋がるトンネルを次々に抜け、

やがてある建物の地下深くへと降りていった。


建物の中の停留所で止まると、桐山さんの部下たちが待機していた。



何人いるのだろう、、、

その人数だけでも、厳重体制だと分かる。




そんな事を感じ、私の顔が強張っていたのか、、、





シ:〇〇??、、スマ〜イルぅ〜!





私の頬に指を当て、クニっと 口角を上げた。





シ:胎教に悪いからなw

〇:…そうだね、、ありがとう…





私は大毅に手を取られ、大きく開いた扉へと向かった。













ドカーーーーーーーーーーーーンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!









その時!!!



何かの爆発音の様な、とてつもなく大きな音が響き渡り、

それと同時に、揺れを感じた。






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