第17話

『君月』76〜80
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2020/02/02 02:08

*76*

藤:え、どないしてぇ〜ん?そんな怒っちゃってぇ〜仲良くせなアカンやろぉ〜??

〇:もう、関係ないから!

藤:ホンマかぁ??





そう言って、藤井くんは私の顔を覗き込む。


全てお見通しみたいな その表情がムカつく!





藤:ほらほら!仲直りせ〜や!なっ?





と、強引に彼の隣へ座らせた。




仲直りって言われても…

彼にその気が無いなら、私は何も出来ないよ…



しばらく…
ふたりで川を眺めてるだけの時間が流れた。









ヒ:俺…〇〇が姫やと思っとる。

〇:…そんな事…知ってるよ。

ヒ:せやから、守らなアカン。

〇:守るってどういう事?姫は、恋愛しちゃイケないの?連れて帰って束縛でもする気?





私を見る彼の目は、辛そうで、少し潤んでいて…




まるで…

信じていたものに、裏切られた…

そんな風に感じた。







私は…どうすればイイの?






*77*


仮に、彼の話が本当だとして、私が『姫』ならば…


どこかへ連れて行かれて、何をされるんだろう?




そんなの…
不安に決まってるじゃん…





〇:もう…出て行ってくれるかな?

ヒ:え………傍に…居ったらアカンのか?

〇:傍にいる意味ないでしょ…?

ヒ:…意味ない……か…





せっかくのBBQを、私はテントの中で ひっそり過ごした。



遠くの方から、楽しそうな声が聞こえてくる。








お父さん…お母さん…

私 いつかは……幸せになれるのかな?






また涙が溢れた。





その涙と共に、ふと、幼い頃の思い出が蘇った。






?:大丈夫や。

〇:…ち、血が……出てる…

?:オトンとオカンの所に戻り?

〇:で、でも…お兄ちゃん怪我してる…

?:こんくらい大丈夫や。早よ行き?





と言って、優しく微笑んだその人は…


中学生くらいかな?


まだ幼さが残る、その笑顔…








濵田先輩…








*78*


どうして、先輩が怪我をしているのか分からないけど…


周りには数人の大人が倒れて、痛そうに悶えていた。





もしかして…



ずっと私を…




守っていてくれたの??





先輩も…彼と同じ人なの?


瞳の色も…同じだし…








カ:〇〇?スイカもってきたよぉ〜

〇:あぁ〜ありがとう カレ〜ン♡

カ:ヒロくん、流星とずっと話してるんだよね。なに話してるんだか…

〇:そうなんだ…なんかゴメンね?藤井くん取られちゃって。

カ:ホントだよぉ〜仲直りすればイイのにぃ〜!

〇:……彼は…私を好きなわけじゃないから…

カ:ヒロくんが、そう言ったの?

〇:ハッキリ言われたワケじゃないけど…そういう事だった。

カ:…同棲までして、それは無いんじゃないのぉ〜!?

〇:だから、同じ布団で寝ても何も無いんだよ。

カ:そっか… 、、、〇〇は期待してたの?

〇:…分からない。






*79*




〇:…分からない。だって…そういう事、知らないんだもん。





人間の三大欲求の一つなのに…



私はそれを知らない。





彼と出逢ってから、周りが変わっていった。

何か、ワケの分からないモノに巻き込まれている。

それは、私が望んでいない方へ向かっているのかもしれない…




母が言っていた…

いつか私にも、素敵な人がお迎えにくると。



母は何か知っていたの?



最近、断片的に蘇ってくる記憶。


あの、濵田先輩が助けてくれた幼い頃の記憶を思い出してから…

濵田先輩は、ずっと私を守ってくれていた気がして…


でも、濵田先輩も彼と同じなら、どうして今まで、どこかへ私を連れて行かなかったの?

理解不明な事ばかり。


トキさんも、瞳の色を気にしてたし…

まさか…
トキさんも、彼と同じ人なの?


なんだか、今までの自分の人生が、全てマヤカシだったのかと思えてくる。






*80*


幸せかは分からないけど、ひとり、平穏に暮らしてた。


なのに…彼と出逢って、あのキスをしてから…


全てが変わってしまった。
そんな気がして…





怖いよ…






BBQの帰り、私はひとり、アパートの前で車を降りた。





ヒ:……ありがとう…ほなな?

〇:うん、、、





カレンは、淋しげな表情で、それを見ていた。



これでイイんだ。

何度も自分の中で、呟いた。










数日後。


藤:〇〇〜?

〇:あ…藤井くん。こないだは ありがとね?

藤:おん…行かなきゃ良かったんやないか?

〇:…そうかもね。楽しめなかった。

藤:そうやなくて、ヒロと離れてもうたやろ?…ええんか?

〇:イイもなにも…もともとが変だったんだから…彼氏じゃないのに、一緒に住むなんて…

藤:まぁ〜会いたくなったら、いつでも言ってや?

〇:えっ?なんで藤井くんに?

藤:俺ン家に居るからや〜w じゃ、またな〜w




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