*76*
藤:え、どないしてぇ〜ん?そんな怒っちゃってぇ〜仲良くせなアカンやろぉ〜??
〇:もう、関係ないから!
藤:ホンマかぁ??
そう言って、藤井くんは私の顔を覗き込む。
全てお見通しみたいな その表情がムカつく!
藤:ほらほら!仲直りせ〜や!なっ?
と、強引に彼の隣へ座らせた。
仲直りって言われても…
彼にその気が無いなら、私は何も出来ないよ…
しばらく…
ふたりで川を眺めてるだけの時間が流れた。
ヒ:俺…〇〇が姫やと思っとる。
〇:…そんな事…知ってるよ。
ヒ:せやから、守らなアカン。
〇:守るってどういう事?姫は、恋愛しちゃイケないの?連れて帰って束縛でもする気?
私を見る彼の目は、辛そうで、少し潤んでいて…
まるで…
信じていたものに、裏切られた…
そんな風に感じた。
私は…どうすればイイの?
*77*
仮に、彼の話が本当だとして、私が『姫』ならば…
どこかへ連れて行かれて、何をされるんだろう?
そんなの…
不安に決まってるじゃん…
〇:もう…出て行ってくれるかな?
ヒ:え………傍に…居ったらアカンのか?
〇:傍にいる意味ないでしょ…?
ヒ:…意味ない……か…
せっかくのBBQを、私はテントの中で ひっそり過ごした。
遠くの方から、楽しそうな声が聞こえてくる。
お父さん…お母さん…
私 いつかは……幸せになれるのかな?
また涙が溢れた。
その涙と共に、ふと、幼い頃の思い出が蘇った。
?:大丈夫や。
〇:…ち、血が……出てる…
?:オトンとオカンの所に戻り?
〇:で、でも…お兄ちゃん怪我してる…
?:こんくらい大丈夫や。早よ行き?
と言って、優しく微笑んだその人は…
中学生くらいかな?
まだ幼さが残る、その笑顔…
濵田先輩…
*78*
どうして、先輩が怪我をしているのか分からないけど…
周りには数人の大人が倒れて、痛そうに悶えていた。
もしかして…
ずっと私を…
守っていてくれたの??
先輩も…彼と同じ人なの?
瞳の色も…同じだし…
カ:〇〇?スイカもってきたよぉ〜
〇:あぁ〜ありがとう カレ〜ン♡
カ:ヒロくん、流星とずっと話してるんだよね。なに話してるんだか…
〇:そうなんだ…なんかゴメンね?藤井くん取られちゃって。
カ:ホントだよぉ〜仲直りすればイイのにぃ〜!
〇:……彼は…私を好きなわけじゃないから…
カ:ヒロくんが、そう言ったの?
〇:ハッキリ言われたワケじゃないけど…そういう事だった。
カ:…同棲までして、それは無いんじゃないのぉ〜!?
〇:だから、同じ布団で寝ても何も無いんだよ。
カ:そっか… 、、、〇〇は期待してたの?
〇:…分からない。
*79*
〇:…分からない。だって…そういう事、知らないんだもん。
人間の三大欲求の一つなのに…
私はそれを知らない。
彼と出逢ってから、周りが変わっていった。
何か、ワケの分からないモノに巻き込まれている。
それは、私が望んでいない方へ向かっているのかもしれない…
母が言っていた…
いつか私にも、素敵な人がお迎えにくると。
母は何か知っていたの?
最近、断片的に蘇ってくる記憶。
あの、濵田先輩が助けてくれた幼い頃の記憶を思い出してから…
濵田先輩は、ずっと私を守ってくれていた気がして…
でも、濵田先輩も彼と同じなら、どうして今まで、どこかへ私を連れて行かなかったの?
理解不明な事ばかり。
トキさんも、瞳の色を気にしてたし…
まさか…
トキさんも、彼と同じ人なの?
なんだか、今までの自分の人生が、全てマヤカシだったのかと思えてくる。
*80*
幸せかは分からないけど、ひとり、平穏に暮らしてた。
なのに…彼と出逢って、あのキスをしてから…
全てが変わってしまった。
そんな気がして…
怖いよ…
BBQの帰り、私はひとり、アパートの前で車を降りた。
ヒ:……ありがとう…ほなな?
〇:うん、、、
カレンは、淋しげな表情で、それを見ていた。
これでイイんだ。
何度も自分の中で、呟いた。
数日後。
藤:〇〇〜?
〇:あ…藤井くん。こないだは ありがとね?
藤:おん…行かなきゃ良かったんやないか?
〇:…そうかもね。楽しめなかった。
藤:そうやなくて、ヒロと離れてもうたやろ?…ええんか?
〇:イイもなにも…もともとが変だったんだから…彼氏じゃないのに、一緒に住むなんて…
藤:まぁ〜会いたくなったら、いつでも言ってや?
〇:えっ?なんで藤井くんに?
藤:俺ン家に居るからや〜w じゃ、またな〜w
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。