*131*
藤:〇〇が辛そうやったからや。
〇:でもそれなら、濵田先輩を押すのはおかしいでしょ?
藤:手っ取り早いやん!ふたりは前にも…
濵:あっ!あぁ〜!あぁぁぁーーーッ!
濵田先輩は慌てて藤井くんの口を塞いだ。
〇:や…高校生のスノボの時の事なら、もう全部 思い出したから…
濵:そ、そうなん?
藤:いやぁ〜あん時メッチャ焦ったわぁ〜w
いっくら記憶 無くなるとは言え、手ェ出したらダメやろぉ?なぁ??
あん時、俺が止めに入らんかったら…
〇:記憶 無くなるから…
そういう事なの……?
遊びだったの?
先輩…?
濵:流星!言うなよっ!
カ:どういう事?記憶が無くなるとか…ワケ分かんないんだけどぉ〜?
藤:〇〇を守るためにな。俺らの記憶は消してたんや。大人になるまでは、介入しないのがルールなんや。
ルールだって??
*132*
〇:私を?……自分を守る為でしょ?
濵:ちゃうッ!
〇:…先輩の事…信じてたのに……
濵:そんなんや無い!
っ!はっ!!!
また蘇る記憶…
______________
ココは…歩道橋の上……
隣で彼氏が夢中で話してる。
彼:家族にいつ話そうかなぁ〜あっ!その前に友達だよな!
あぁ〜明日話すのが楽しみぃ〜!
お互い初めてのカレカノだったから、メッチャ浮かれていた。
「おい!〇〇から離れろ!」
その声に振り返ると、そこには高校生くらいの男の人が居て…
彼:誰??
〇:へっ?…し、知らない人だよ。なんで私の名前を?…怖いよ……
彼は私の腕を引き、自分の後ろへと私を隠した。
彼:お前!ストーカーだろ?〇〇が誰かに付けられてるかもって、言ってた奴だろ?
「うっせーーーッ!〇〇から離れろッ!!!」
ドンッ!!!
*133*
ドンッ!!!
それは、一瞬の出来事だった。
パッ!っと消えた その人は、パッ!っと目の前に現れ、彼の身体を押すと…
気付いた時には、彼は階段の下…
私は…怖くて、怖くて…
彼に駆け寄る事も出来なくて…
その場に ペタンっと力無く座り込んで…
震えていて…
「…〇〇……ゴメンな…」
その人は、私の頭にそっと掌を当てると…
泣いていた…
______________
あの時の事故は…先輩が やったんだ…
泣いていたのは濵田先輩だった。
カ:〇〇?…ねぇ!〇〇ってばっ!?
〇:…先輩が彼氏を押して…階段から落ちた…
カ:えっ?
そうやって、私の人生を変えていったんだ…
濵:それも、思い出したんか…
先輩は、うつむくよりヒドく、グッタリとうなだれた。
*134*
藤:あ〜初めての彼氏な?可愛そうやったな…
カ:ん?流星 知ってるの?
流:おん。任務やったからな。
〇:ヒドイ…
消してしまえば、何してもイイの?
藤:でも、〇〇を守るのが任務やったしな…
濵:ゴメンな…全部 俺がやった…
〇:私の人生って…なんなの?
濵:せやから、ゴメンって…
〇:普通に恋愛してただけでしょ?命を狙われてたワケじゃない!
こんなのって…無いよ…
濵:…好きやったんや…ずっと…
〇:なっ!!!そ、そんなのっ!言い訳にならないし、信じないっ!!!
記憶が無くなるからって!
私にだって、好き放題?何したのよ?
畳み掛けるように発してしまった。
濵:やっぱ 嫌われたな…俺…
〇:はぁ?
濵:分かっとったわ。記憶が戻れば、〇〇は俺から離れていくんやって…
藤:濵ちゃん、月に帰らんからや〜どうしてなん?
先輩は人間になるから。
*135*
先輩は人間になるから。
私の記憶が戻るのを知っていながら、人間になるのを選んだ。
嫌われるのを覚悟で。
じゃあ、どうして私と一緒に暮らそうだなんて言ったの?
濵:それでも…〇〇と一緒に居りたかった……人間として。
藤:っ!はぁーーーーーッ?!チョッ待ってぇ〜?濵ちゃん?ウソやろ?
濵:ホンマや。
藤:えェェェーーーッ!!!ダメやっ!ダメダメッ!!!
濵:お前やって、恋愛して人間になったやん。
藤:やっ!それとは規模がちゃい過ぎんねん!〇〇は姫やっ!!!
濵:分かっとるわッ!!!
藤:分かってへんやろッ!目を覚ませッ!!!
ゆっくりマイペースな、いつもとは違う…
今までに見たことがない 藤井くんは、先輩の胸ぐらを掴んでいた。
濵:流星なら分かるやろ?
藤:っ!せやけどっ……
掴んでいたチカラが緩む。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。