第28話

『君月』131〜135
195
2020/02/02 02:09

*131*


藤:〇〇が辛そうやったからや。

〇:でもそれなら、濵田先輩を押すのはおかしいでしょ?

藤:手っ取り早いやん!ふたりは前にも…

濵:あっ!あぁ〜!あぁぁぁーーーッ!





濵田先輩は慌てて藤井くんの口を塞いだ。





〇:や…高校生のスノボの時の事なら、もう全部 思い出したから…

濵:そ、そうなん?

藤:いやぁ〜あん時メッチャ焦ったわぁ〜w
いっくら記憶 無くなるとは言え、手ェ出したらダメやろぉ?なぁ??
あん時、俺が止めに入らんかったら…







〇:記憶 無くなるから…







そういう事なの……?





遊びだったの?





先輩…?








濵:流星!言うなよっ!

カ:どういう事?記憶が無くなるとか…ワケ分かんないんだけどぉ〜?

藤:〇〇を守るためにな。俺らの記憶は消してたんや。大人になるまでは、介入しないのがルールなんや。






ルールだって??







*132*


〇:私を?……自分を守る為でしょ?

濵:ちゃうッ!

〇:…先輩の事…信じてたのに……

濵:そんなんや無い!





っ!はっ!!!








また蘇る記憶…






______________




ココは…歩道橋の上……




隣で彼氏が夢中で話してる。





彼:家族にいつ話そうかなぁ〜あっ!その前に友達だよな!
あぁ〜明日話すのが楽しみぃ〜!





お互い初めてのカレカノだったから、メッチャ浮かれていた。





「おい!〇〇から離れろ!」





その声に振り返ると、そこには高校生くらいの男の人が居て…





彼:誰??

〇:へっ?…し、知らない人だよ。なんで私の名前を?…怖いよ……





彼は私の腕を引き、自分の後ろへと私を隠した。





彼:お前!ストーカーだろ?〇〇が誰かに付けられてるかもって、言ってた奴だろ?





「うっせーーーッ!〇〇から離れろッ!!!」








ドンッ!!!






*133*






ドンッ!!!






それは、一瞬の出来事だった。



パッ!っと消えた その人は、パッ!っと目の前に現れ、彼の身体を押すと…






















気付いた時には、彼は階段の下…






私は…怖くて、怖くて…

彼に駆け寄る事も出来なくて…

その場に ペタンっと力無く座り込んで…

震えていて…





「…〇〇……ゴメンな…」





その人は、私の頭にそっと掌を当てると…












泣いていた…





______________









あの時の事故は…先輩が やったんだ…





泣いていたのは濵田先輩だった。






カ:〇〇?…ねぇ!〇〇ってばっ!?

〇:…先輩が彼氏を押して…階段から落ちた…

カ:えっ?






そうやって、私の人生を変えていったんだ…






濵:それも、思い出したんか…






先輩は、うつむくよりヒドく、グッタリとうなだれた。







*134*


藤:あ〜初めての彼氏な?可愛そうやったな…

カ:ん?流星 知ってるの?

流:おん。任務やったからな。






〇:ヒドイ…






消してしまえば、何してもイイの?






藤:でも、〇〇を守るのが任務やったしな…

濵:ゴメンな…全部 俺がやった…

〇:私の人生って…なんなの?

濵:せやから、ゴメンって…

〇:普通に恋愛してただけでしょ?命を狙われてたワケじゃない!





こんなのって…無いよ…





濵:…好きやったんや…ずっと…

〇:なっ!!!そ、そんなのっ!言い訳にならないし、信じないっ!!!
記憶が無くなるからって!
私にだって、好き放題?何したのよ?






畳み掛けるように発してしまった。





濵:やっぱ 嫌われたな…俺…

〇:はぁ?

濵:分かっとったわ。記憶が戻れば、〇〇は俺から離れていくんやって…

藤:濵ちゃん、月に帰らんからや〜どうしてなん?







先輩は人間になるから。





*135*



先輩は人間になるから。




私の記憶が戻るのを知っていながら、人間になるのを選んだ。

嫌われるのを覚悟で。




じゃあ、どうして私と一緒に暮らそうだなんて言ったの?






濵:それでも…〇〇と一緒に居りたかった……人間として。

藤:っ!はぁーーーーーッ?!チョッ待ってぇ〜?濵ちゃん?ウソやろ?

濵:ホンマや。

藤:えェェェーーーッ!!!ダメやっ!ダメダメッ!!!

濵:お前やって、恋愛して人間になったやん。

藤:やっ!それとは規模がちゃい過ぎんねん!〇〇は姫やっ!!!

濵:分かっとるわッ!!!

藤:分かってへんやろッ!目を覚ませッ!!!






ゆっくりマイペースな、いつもとは違う…

今までに見たことがない 藤井くんは、先輩の胸ぐらを掴んでいた。





濵:流星なら分かるやろ?

藤:っ!せやけどっ……



















掴んでいたチカラが緩む。




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