凛とした空に相応しい秋風が吹く。
しかし、とある国の偉い方では、全くと言っていいほど相応しくない書類整理に追われるトントン。
徹夜をしてまでやるが、整理は終わりが見えないほどだった。
机の下が見えなくなるほどの書類の山に期限のばらばらになった書類や、飲み物がぶち撒けられたのか、文字が霞んでいるものなど何があったのか分からない。
トントンは、城の一室で頭を抱える。
幹部の書類は、期限は少し遅れるものの、出すには出す。
しかし、誤字脱字が酷かった。
深くため息をするが、誰かが聞いてることも無く。
重くなった頭を上げ、時計を確認する。
時間は午後3時を回っていた。
この時間は、鬱が書類を提出する時間としてトントンは認識していた。
まだかと待っていると、扉がコンコンコンと3回ノックされる。
入ってええよ、と返し扉がゆっくりと開く。
しかし、そこから鬱の姿を見ることは出来ない。
どうしたのかと扉の方に向かってみると、小さな少年が扉に隠れてこちらを見ていたのであった。
トントンはつい、情けない声が出てしまった。
すると突然、少年が震えながらも口を開く。
最初は少し困惑していたがだんだんと読み取れてくる。
ごめんなさい。
お父さん、お母さん、どこにいるの?
僕はいい子にしてる。
君は誰?
そう言っているのだと、トントンは察することが出来た。
少年は、怖がりつつも、部屋の中に入ってくる。
そこで、トントンは違和感を感じた。
少年の姿はヨレヨレになったTシャツに青寄りの黒髪。
瞳は、深海のような深い青色をしていた。また、目の下にくっきりとトントンより酷いと思われる隈があった。
そして、1番気になったのは、
顔や体に巻いてある包帯の数々。
ようやく分かったのだ。
ここにいる少年は、
鬱であるということに。
確認がてら聞いてみると、コクと頷いた。
また1人、トントンは頭を抱える。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。