突然箒がガタッと揺れ、爽やかなリンゴの香りがふわっと鼻孔をくすぐる。
箒は急カーブし、気づけば目の前には壁ではなく青い空が広がっていた。
そして私は、彼にバックハグされているような形で箒に乗っているのに気がついた。
そして、それを訓練場の生徒全員が見ていることに。
すると途端に顔が熱くなっていくのがわかった。
後ろから声が聞こえ、箒はだんだんと地面へ降下していった。
すごい…。
なぜ彼が私の箒に乗っているのかいまいち理解できなかったが、彼の箒の技術の高さは素人の私にもはっきりと伝わった。
地面へと降りると、マダムフーチが黒いマントを靡かせながら走ってきた。
マダムフーチが声を張り上げ生徒の群れの中に入っていくと同時に、フローラが駆け寄ってきて、私を両腕を掴むようにして顔を覗かせてきた。
フローラに勢い良く抱きしめられ、私は自然と安堵の笑みがこぼれた。
軽く眉間に皺を寄せているフローラの視線の先を見ると、大きな黒い箒を持って訓練場を出ていく彼の姿があった。
よりによって助けてくれたのが彼だったなんて…
これは神様が私に彼とお話するチャンスをくださったんだわ、と確信した私は、フローラの声には振り向かず彼が出ていった方向へと走った。
______廊下。
廊下の向こうに、目立ったプラチナブロンドの頭が見える。
さっき見かけたのと同じ、深緑のマントを着ていた。
やっぱり助けてくれたのは彼だったんだ…。
私の声が誰もいない廊下に響き、彼が足を止めて振り返る。
彼は私の目を見つめたまま、黙ってゆっくりと近付いてきた。
自分の心臓がばくばく音をたてているのが聞こえる。
ここまで走ってきたからだろうか、
もしくは、
彼の綺麗な瞳に吸い込まれそうになったからだろうか…。
想像していた以上に優しい声をかけられ、なんだか恥ずかしくなって視線を落とすと、彼のマントの胸辺りに紐が結ってあるのに気づいた。
ドラコ・マルフォイと話せた…!!
近くで見るともっとかっこよかった…!
私の興奮はなかなかおさまらず、午後はずっと思い出しては胸が高鳴っていた。
そんな状態のまま夕食の時間になり、ふわふわした足取りで大広間へ向かった。
後ろから抱きつかれるようにして助けてもらった恥ずかしさよりも会話できた嬉しさが勝り、つい口元が緩む。
片手に教科書を何冊か持ったセドリックが隣の席に座り、にやにやしながら私の顔を覗き込んできた。
いつの間にかフローラも私の正面に座り、パンを片手に必死な顔でセドリックに話していた。
フローラの声がだんだん鋭くなっていることを察したセドリックが、顔をしかめながら場を収めた。
フローラは不満そうにパンをちぎり、口へ運んだ。
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まあまあキリ悪いですが長くなりそうなので今回はここで終わります!
やっとドラコとの会話が書けて嬉しい~!!
でもあなたちゃんの恋、フローラちゃんは反対派のようですね💭ここからどうなっていくのかな…🫣
フローラちゃんの恋もちょっとずつ進めていくのでお楽しみに!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。