「ほら、綺麗な景色だ。」
目の前には 透明で澄んでいる 海
「雪華は海が好きだもんな」
呼びかけるように話してみても
ーーー 返ってくる声はない
それでも俺の口は止まってくれない
「わぁ、空がピンクだ。」
いつもはオレンジなのに、地球最後の日だからかもしれない
そのせいか空の色が 海が反射し
て 神秘的な光景をつくっている。
「見てよ…雪華。とても綺麗だよ」
目を開けることなんてない。
分かっていても少し胸がいたい。
「ねぇ、雪華…愛してるよ」
その痛みを誤魔化すように
ーー雪華の額に口づけをする
リップ音が静かに響くが、それも波の音ですぐ消される。
キラッ 遠くの方でなにかが光った後に
ドォォォン ---
爆発音が轟く
ああ、始まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!