『両親の願い』
焦凍side
目を開けると、そこに広がっていたのはなんとも言えない異様な光景だった。
中には大きな岩に潰されている家もあるほど。
そして、俺の想い人であるマリア、そして勿論俺も憎む相手、巨人が生きている人間を食べている。
高校生の俺にはやはり刺激の強いものだし、例えどんなベテランなヒーローでも耐えがたいシーンであろう。
個性で巨人を倒すことはできないと知っているが、避難させるだけでも出来ないだろうか。
駐屯:そこの少年!!速く逃げるんだ!!そこまで巨人が来ているぞ!!
焦凍:えっ、あ、、、はい、
そんなときだった。
母親:マリア、、、、逃げて!!!
父親:マリア!!!いつもは良い子じゃないか!!いつもの通り、言うことを聞いておくれ!!
母親:お母さんたちのことは良いから!とにかく、巨人から離れなさい!
マリア:でっ、でも!
父親:でもじゃない!マリア。マリアは賢い子だ、父さんたちが言っていることが分かるだろう?
俺の目の前で行われているのはなんだろうか。
そうか、夢か。
マリアの幼少期。
マリアが両親を失った日か。
こんな、、こんな別れ方をしたのか?
見たくない、マリアの悲しむ顔を、マリアの両親が死んでしまうところを見たくない。
焦凍:おいっ!!
父親:っ!!君、どうかお願いだ、この子を、私の娘を連れて行ってくれ!!
母親:私たちはもう手遅れよ、まともに歩けないわ。マリアだけは、、マリアだけは、これから元気に育って、幸せになって欲しいの。お願い、マリアを連れて行って!!
焦凍:っ、、
マリア:やめ、やめて!お父さんとお母さんが行かないなら私も行かない!!ずっとここにいる!!
父親:マリア!!どうか頼む。私たちの最期の願いなんだ!!
マリア:っ、、ねぇ、お兄ちゃん助けて!!お父さんとお母さんを助けて!!
あぁ、助けたい。
俺がどうにかして、助けたい。
個性を発動させようとしてみるが、やはり夢だからか発動しない。
おそらくマリアを助けるために、2人の身体の一部は瓦礫の下敷きになっている。
2人を瓦礫の下敷きから救うには、持ち上げるしか、、
いや、でも、もしここから出られたとして、歩けない2人をこの後どうすれば良い?
マリアは幼い。
いくら速いとしても、子供の足じゃ巨人に見つかったときに逃げ切ることはできないだろう。
駐屯:そこで何をしている、早く逃げるんだ!!!
父親:駐屯兵団か!!マリアとこの少年を連れて離れてくれ!!
マリア:嫌だ、お父さんとお母さんを助けて!!
父親:お願いだ、頼む!!
駐屯:っ、、
焦凍:っ、、俺が!!俺がなんとかする!!だからマリアを!!マリアを連れて逃げてくれ!!
駐屯:君はどうするんだ?!もう巨人が近くまで来ているんだ!!
焦凍:俺は万が一でも逃げられる!!
駐屯:っ、、すぐに来るんだぞ!!
マリア:嫌だっ、、嫌だぁぁ!!
たとえ夢だとしても。
たとえ過去の出来事だとしても。
マリアの原点である2人を、見過ごすことは俺にはできない。
母親:、、、焦凍くん。
焦凍:えっ、、なんで俺の名前、
父親:知っているさ。僕たちはずっと見ていたからね。
母親:マリアを救ってくれてありがとう。私たちが死んで、、マリアは笑わなくなってしまってた。無心に巨人を狩り続ける、人形のようになってしまっていた。
父親:それを君が救ってくれたんだ。
母親:私たちは死んでしまったけれど、、、マリアを、
『よろしくね。』
『教室』
焦凍:、、、マリア。
マリア:?
焦凍:マリアの両親は、良い人だな。
マリア:え?
焦凍:マリアのことを1番に思ってる。すげぇ大切に育てられたんだなって、、
マリア:、、、2人に会ったの。
焦凍:夢で、な。
マリア:、、、そっか。
焦凍:マリアのことよろしくって言ってた。
マリア:2人らしい。、、、私は2人に生きていて欲しかった。
焦凍:そうだな。でも、2人はずっと見てくれてるらしい。
マリア:っ!!、、、そう。私も、いつかまた、、、
会えれば良いな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!