第41話

告白
802
2020/06/20 00:42
…蘭竜くんが?
蘭竜くんが私のことを、好き?
『え、と、蘭竜く…』
蘭竜「悪い」
蘭竜くんは、そう言って立ち上がった。
「言うつもりじゃなかった。混乱させて、すまない。でも____」
「っ!」
『____それで俺のこと意識してくれんなら、嬉しい』
「とりあえず、保健室行くぞ」
耳元で囁かれたその言葉に真っ赤になった私に、蘭竜くんはそう落ち着いた声で言って、足の痛みで歩けない私を軽々と抱き上げた。
『(お、お姫様抱っこ…!?)』
蘭竜くんは周りの視線を気にする様子もなく、階段を降り廊下を通って保健室へ向かう。途中、鉢合わせた緑谷くんが目を丸くして驚き、その場に固まっていた。私も体がカチカチだ。
「失礼します」
「ん?おや、ひどい怪我だねぇ!何があったんだい!」
「俺の個性が暴走してしまいました。そのせいで五、六時間目も無断欠席です」
「怒るのは後として、はやくこっちに寝かせな!」
「はい」
蘭竜くんはリカバリーガールに頷くと、彼女が指さしたベッドに私を寝かせる。足がベッドに付いたとたん傷がズキンと痛んで、私は顔を顰めた。
「どれどれ、見せてごらん…ん、どれも深くはないみたいだね。これなら一度の治癒で治せそうだ」
「…そうですか」
蘭竜くんが少し安心したような声色でそう返した。私もほっとして、「よかった」と呟く。
リカバリーガールは「じゃ、治癒するからね」と言って私にの足に口づけをする。見る見るうちに怪我が治って、かわりにどっと疲れが襲った。
「う…ねむ…」
「あれだけたくさんの傷を一気に治したからね。ペッツを食べて六時間目が終わるまで一休みしな」
「はい…」
「あんたも、体調悪いなら寝ていきな」
「いや、俺は…」
「いいから寝ていきな!我慢は体に良くないよ」
蘭竜くんがベッドに入ったのと、リカバリーガールが「あんたたちの担任の先生にこのこと伝えてくるからね」と言って保健室から出て行ったのを見ると、私は布団を被った。すぐに意識が遠くなって、私は目を閉じる。
蘭竜くんの声が聞こえたような気がしながらも、私は睡魔に負けて眠りに落ちた。
_________
『ん…』
「あなた!」
『…広、人?』
「よかった…!もう起きないんじゃって思うくらい、静かで…」
「心配させんなよ…」、と脱力したように頭を垂れる広人に、私は「ごめんね」、と彼の金髪を撫でる。
「蘭竜くんは?」
空になっている隣のベッドを見て、私は広人に尋ねた。「ああ」、と広人は答える。
「俺が来たら、『本当に悪かったって伝えておいてくれ』って言って、あなたの鞄そこにおいて帰っていったよ」
「ほんとだ、鞄が置いてある」
広人が座っている反対側のベッドサイドにある丸椅子の上に置かれた鞄を見てそう言った。「わざわざ教室に取りにいってくれたんだ」、と呟く。
「…あなた」
『ん?』
「蘭竜に、何か言われた?」
『え、…なんで?』
「いや、…なんとなく」
『とくに、何も言われてないけど…」
告白してくれた、なんて勝手に言わない方がいいと思って、私はとっさに嘘をつく。広人は「そっか」と言って立ち上がった。
「帰ろう」
『うん』
私は頷くと、鞄を取ってベッドから降りた。
_________
間side
「じゃあな」
『うん、また明日…じゃなくて、月曜日にね』
手を振って角を曲がる幼馴染。後ろ姿までもが愛おしいと感じてしまう僕は、そうとうな重症だと思う。
「…わかりやすい嘘なんか、ついて」
僕ははあとひとつため息を吐くと、自分の家に向かって歩き出した。通学路のぼんやり白線を眺めながら、蘭竜から言われたことを思い出す。
____…今日で俺が、一歩先だな__
蘭竜があなたに気があることは、以前からなんとなく察していた。だが、一歩先ということは___
「告白、したのか、あなたに」
あなた_____
「俺も、好き、なのにな」
はやく伝えなければ本当に手遅れになってしまう。
「俺も近いうちに…告白、しよう」
僕の中に、小さな決意が生まれた。

プリ小説オーディオドラマ