第43話

番外編 かみなりくんのたんじょうび
570
2020/06/29 13:58
今日は上鳴くんの誕生日ですね!ということで、番外編です!
※爆豪くんの誕生日はそのときの色絵ちゃんの状況的に何も思いつかず書くことが出来なかったので、来年までこの小説が続いていたら書こうと思います!
────────
『あ』
朝起きて、カレンダーを見て気付いた。
今日は私の失恋相手、上鳴くんの誕生日だ。
──────
『広人、おはよう』
「ん、おはようあなた」
なんてこともなく広人と挨拶をする。広人は今日が上鳴くんの誕生日なことはしらない───というか、上鳴くんとは面識がないだろう。
(広人と一緒に上鳴くんにおめでとうを言うのは無理そうかな)
私がそう考えていると、緑谷くんが「色絵さん、間くん、おはよう」と言いながら私達に合流してきた。
『おはよう、緑谷くん』
「おはよう」
「色絵さんたちは今日何の日か知ってる?」
『(もしかして上鳴くんの…!)ううん、わかんないなぁ』
「俺も」
私が期待しつつ緑谷くんに『何の日?』と聞くと、緑谷くんは満面の笑みを浮かべて言った。
「今日はオールマイトが三年前のシーザーモンスター事件を解決した記念日だよ!あの事件は本当にブツブツ…」
『緑谷くん、ストップストップ!』
「周りの人が結構変な目で見てるよ」
「はっ!ご、ごめん…」
(緑谷くんと一緒におめでとうを言うのも無理そうだ…)
────────
そんなこんなで学校に着き、ついにもう昼休みになってしまった。
『(食堂に行ったら、上鳴くんに会えるかもしれない。そうしたら、ごくごく自然に、お誕生日おめでとうって言えばいいんだ)』
私はそう意を決して、泉ちゃんと優ちゃんと食堂に向かう。昼食を取って席を探しているとき、あの明るい黄色の頭が私の目に入った。…が、周りに爆豪くん、切島くん、瀬呂くんが揃っていて、とても「お誕生日おめでとう」なんて言える状況ではない。
チャンスはないかと耳と目を澄ましていると、上鳴くん達の会話が聞こえてきた。
「瀬呂ぉ、今日は何の日でしょう!」
「えー、わかんね」
「嘘!上鳴くんショック!切島は?」
「悪い、俺も分からん」
「えー!嘘でしょぉ…!爆豪が覚えてるワケねぇし…誰も分かってくれないの!?」
「さらっと除外してんじゃねえぞアホ面ぁ…!」
「いやだってほら名前も覚えてねぇじゃん!!」
『(上鳴くん、今日まだ誰にもおめでとうって言ってもらってないんだ…、じゃあもし私が言えば、一番になれるんだ)』
上鳴くんへの恋心を、諦められない自分が囁いた。
──────
『(放課後まで誰かとベッタリって訳じゃ、ないよね!)』
私はそう踏んで、1年A組の前でこっそり様子を窺っていた。後ろ姿に逆行なので誰かは分からないが、上鳴くんはその人に勉強を教えて貰っているみたいだ。
『あっ』
上鳴くんが大きく伸びをした。相手の人はリュックを掴んでいる。どうやら勉強は終わり、帰るようだ。
『(よしっ、上鳴くん達が別れたところで合流して、絶対におめでとうって言うぞ!)』
私は心の中でそう意気込んで、教室から出てくる上鳴くん達にバレないように物陰に身を隠した。
「ねぇ上鳴、あんた地頭はいいのになんであんなに点数ひどいわけ?」
『(………あ)』
耳郎さん────。
上鳴くんの、好きな人───…
「わかんねぇよ…、とにかく勉強すると頭が溶けるみたいでホントだめなんだよなぁ…」
「まったく、定期テストまで死ぬ気で勉強しないとだね」
「うっ…今日はまじでひどい日だなぁ」
上鳴くんが頭を抱える。耳郎さんはしばらく考えたあと、「あぁ、そういうこと」と納得したように顔を上げた。
「上鳴、お誕生日おめでとう」
「─────へ」
「上鳴、今日誕生日だったよね?」
「いや、そうだけど、その…誰も覚えててくれなかったから…」
上鳴くんは照れたように、しかしとても嬉しそうに笑った。
















─────上鳴くん
いつかあなたに、私があなたを好きで好きで苦しんでいることが、伝わればいいのに


















私が泣いているのを、複雑な表情で見ている人が居たことを、私は知らない。

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