第5話

封印
408
2018/07/30 10:42
そろそろいいか。








私は時間を確認した。








もう、朝昼晩なんて規則はこの日本から消え去った。











その原因は分かってる。











私だ…。












後悔しても、もう遅いけどさ。

















私は、上空に行った。











そして、大きく息を吸ってから、私は言った。









『今から、三分の休憩をとる。』











こんなこと、私の時は無かった。











そう、このルールは私が作った。







こんなルール作っても、意味が無いと分かっている。








けど、少しの間だけでも安心感を与えたかった。












誰も追ってこないという安心感を。










でも、安心出来ない人がほとんどかな。





そんな気がした。









このルールを作ったもう一つの理由がある。









長時間逃げ回るなんて不可能だ。












体力的にキツイ。











その辛さは充分に分かる。











なぜなら、経験をしたから。










これがもう一つの理由。








その時、ピエロが私の所へ来た。











休憩の時は、私の所へ来るように命じといた。












残りは、一分程か。












そう確認すると、私は言い始めた。












『イタズラだと思っている者はまだ、居るのかぁ?居ないと思うけどな。新しいルールを教えておいてやる。有難く思うんだな!死んだ者はゾンビになる。そのゾンビも、もちろん鬼だ。噛まれたら、お前もゾンビになる!これ以上は教えない!こんなにも教えてくれたことに感謝するんだな!さー、あと十秒だ。五秒。三、二、一、再開だ!』







ゾンビの見た目は教えなかった。






いや、教えられなかった。




もう一人の私が言わせてくれなかったから。













『早く死んでよ…』











呟くように私が言った。












私の意思じゃない。











意識が遠くなっていく。











もう一人の私に意識が取られていっているんだ。













私は、負けないように頑張った。












そのおかげで少しは残った。













ほんの少しだけだけど…。











完全に乗っ取られてしまうともう、もう一人の私の思うままにされてしまう。










それだけは、避けたい。










『おい!ピエロ、まだ行かないのか?』










再開したというのに、動いてねえじゃねえか。











『命じられてませんので。』











あー、そうか。










休憩の時に来いとは言ったが、その後のことを命じてなかったな。












『殺しに行ってこい!』












そう私は命じた。









『はい。殺して来ます。』












私の方へ向き、にやりと笑いながら言ってきた。












気持ちわるい奴だ。













はぁー、まだかな。












早く見たいな。






逃げ回る時の恐怖の顔を絶望の顔を早く見たい!














そう思いながら、私は地上へ向かった。














着いた途端、ある人を見つけた。











私の大切な家族だ。













でも、そんなこと知らないもう一人の私がにやりと笑って呟いた。













『獲物発見。準備運動のついでに殺してやろうじゃねえか。』














私は、急いで意識を取り戻そうとした。











でも、気づいたんだ。










そのやり方が分からないことに。

















このままじゃ、私の家族がまた、殺されてしまう…!













そんなの嫌だ!










絶対に殺させはしない。
















残り一人の私の大切な家族を、お父さんを守ってみせるんだ。













だが、次の瞬間、絶望した。












刃物で後ろからお父さんの心臓を刺してしまった。














死んでしまった。














また、私のせいだ…!












『あははははっ!あははっ!』







私は高笑いをした。








何で、何で、何で!





お父さんが死んだというのに、私は笑ってるだっ…!













自分が許せない。











例え、自分の意思じゃなかったとしても、私の手で殺した事は変わらない。










でも、結局はお父さんも皆、いつかは死んでいくんだよね。










お父さんもお母さんもそれが早かっただけなんだよ。








もう大切な人なんて、家族よりも大切な人なんて居ない。










いっそ、こんな感情捨ててしまおう。








いや、捨ててしまってはダメだ。










なら、全てが終わるまで、こんな感情を封印しよう。








それなら、大丈夫だ。






結局、ヒーローは現れなかった。





































私の願いは何一つ叶えてくれない。












ひどいなぁ、神様は。














でも、しょうがないか。









悪い事しちゃっているからさ。













許されないこと、もう元通りに戻らないことをしてしまっているんだから。











これから、ヒーローが現れるのかな?












現れるなら、早く現れて欲しい。











そして、私を殺してくれれば、何もかもが終わるかもしれない。













私を殺せば、私よりも強い人なんて居ないから大丈夫だ。














犠牲が増える前に現れて、世界を救って欲しい。











この願いだけは、どうか叶えてよ、お願いだから。










そう願ったんだ、最後に。











もう願い事なんてしない。











しないから、最後の願いだけは叶えてほしい。











そうしているうちに、意識を取り戻せていた。











何故だか、分からない。










私は、お父さんをゾンビにした後、その場をすぐに去って行った。










ゾンビになって歩いて行くお父さんを見たくなかった。













見てしまうと、透明なものが溢れてきてしまうから。











プリ小説オーディオドラマ