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第27話

缶バッチ
黒に染まった世界、ここは何処だ?





数分前の出来事である。






俺は振り返り、喉元までこみ上がるものを飲み込んだ。




『これを殺せるか?』




殺人ピエロは煽るように言う。




ユウトは一度、唇を噛み締め覚悟を決める。




『あぁ、殺せるさ!』






そう言うと、こちらへと走ってくる者がいた。





あれは親友だった、人か……。






ユウトは一度大きく息を吐き、武器を取り出す。






手が震える。



何故だろう……。



数秒前に、覚悟を決めたはずなのにな。



今の俺、可笑しいな。



もうそろそろ、武器を振り下ろさないと間に合わないはずなのに……。





“身体が動かない”




その瞬間、サラサラな液体が飛び散った。





まるで果実が弾けたようだ。






その時、俺の身体に異変が起こった。





“なんだこれ…視界が揺らぐ…”






傷口に手を当てると、大量の赤いものが溢れ出ていた。






意識が失いそうになった時、微かに声が聞こえた。






見覚えのある声だ……。







誰だっけ……?




『あーあ、こんなんで死ぬの?人間って弱いなぁ…』





ユウトを見下ろしながら呟く。







あー、この気配はクロか?


…なんだ、俺殺されるのか?



約束一つも叶えられてないのにな……。






俺は段々と薄くなっていく意識の中、微かに気配を感じ取ることが出来た。







だが、同時に意識が遠くなってしまった。














闇に包まれたような、光の無い世界。






ユウトはゆっくりと起き上がる。






死んだのか…?




俺には無理だったか…諦めようかな…。




ユウトは目を瞑ろうとしていた。





その時、微かに声が聞こえてきた。







『おい、諦めたわけじゃないよな?』








ユウトは少しずつ瞼を持ち上げる。







そこには、“親友だった人”が居た。





ユウトは、魂が抜けたように呟く。





『無理だ…俺は強くなれない……』







そんなユウトを見て、親友は呟く。






『なら、一緒に逝くか?…なんて、言うとでも思ったか?』





微笑みながら親友は呟く。






ユウトは呟く。





『一人じゃ無理だ…もう誰も守れない』



親友はユウトへと近づく。



パーンッ





ユウトの頬が赤く染まった。




同時に、大きい声が響いた。




『誰が一人だと言った!一人でやれ、俺はそう言ったか?気づいてないだけでお前に感謝してる人はたくさんいるんだよ!…俺はお前を探す時、お前に助けて貰った人に会った。その人は笑顔で言っていたよ…“ヒーローが助けてくれたんだ”。いつ死ぬか分からない、そんな時に笑っていたんだよ。お前は弱くないんだよ…まだ足掻けるだろ!やり残した事、思い残した事、たくさんあるだろ!やってこいよ!皆、お前を待ってるぞ!…全部やり切って戻ってこい。俺は…“お前を傷つけたくない”』




ユウトは、口を開いたまま動きが止まっていた。





驚いている間もなく、親友は徐々に消えかけていた。






ユウトは我に返り、尋ねる。





『仲間…作れるかな?俺なんかが救えるのかな…』






親友は笑顔で呟く。





『あぁ、お前なら大丈夫だ!自分なんかが、なんて言うな!最後にこれ、渡し忘れてた……』





ユウトの足元には、缶バッチが転がってきた。





缶バッチは、かなりサビていた。



だが、文字だけはハッキリと見えるようになっている。



“ずっと親友だ”




綺麗な字で書いてあったのだ。






親友が消える際、“またな”と微かに聞こえた気がした。





さよならではない、“またな”と。