シェラはまた消えた。
私は周りを警戒した。
しばらく経っても現れないが、油断は出来ない。
その時だ!
『ねぇ何で?君は逃げるか戦うか選択をさせるの?殺人ピエロはそんな選択させて無かったよ。瞬殺だったよ…。』
シェラは私よりもさらに高い場所から言ってきた。
『我は優しいからな!選択させてやったんだ!』
どう答えていいか分からなかった。
だから、適当に答えた。
殺したくなかったから、何て言えない。
『へぇー、じゃあ何で僕には選択させてくれないの?何で僕の家族は皆殺されたの?逃げる選択を何でくれなかったの?もしかして人を選んでいるの?力の無い奴らは、この世界に必要のない奴らはどうなってもいいの?僕はそうなの嫌だ!そんな世界は最悪だ!僕はこの世界を守る義務があるよ。けど、無理だったよ…僕には無理だよ…もうゾンビを殺すのは嫌だよ!だって元はただの人間じゃん!何で殺さなきゃいけないの?僕はお母さん達の方へ行きたい…僕は行く!でも、その前に一つだけ言っておきたい。お前は最低だ!』
何をするつもりなのか予想ついた。
だから、私は止めに行こうとした。
間に合わないかもしれない。
けど、私は諦めなかった。
シェラは銃口を自分の頭に当てた。
その瞬間、銃弾がシェラの頭を貫いた。
……間に合わなかったのか?
私はシェラが落ちてくるのを見て、無意識にシェラを助けに行った。
死への怖さは知らない。
でも、失う怖さは充分な程に知っている。
私はシェラをキャッチした後、地上へ下ろした。
シェラはだんだん冷たくなっていった。
シェラをゾンビにしたくない。
そう思い私は、シェラを目立たない所に静かに置いた。
その時だった!
『た、すけて…』
いぶきの声がした。
声の聞こえる方へ振り向くと、いぶきがピエロに殺されかけていた。
『ピエロ!そいつは我がやると言ったはずだ!』
私はとっさにそう言ってしまった。
『これは××の命令です。藍様の命令よりも××の命令を優先しますよ。××の命令には藍様を連れこいという命令も含まれています。大人しくついてきますか?』
私は大人しくついて行かないと駄目だと分かっていた。
けど…もう嫌だ。
もういいや。
どうなってもいいよ。
私はピエロ達を裏切る…!
もう耐えきれない。
人が目の前で死んでいくのを見るのは…。
見てるだけっていうのは…。
もう嫌だ!
私はいぶきをピエロから守った。
『ついて行かない!我はこんな事はもうやめる!我はこの世界を守る!』
その瞬間だ…!
『どういう事だ!』と言いながらユウトは現れた。
私はピエロとユウトに挟まれてしまった。
右を見ればピエロが居て、左を見ればユウトが居る。
だが、私は動揺を見せないようした。
『ユウト、何故ここにいる?』
『泣き声を辿ってきたんだ!』
やっぱり辿ってきてしまったか。
予想はしてたけど、タイミングが悪い。
『この世界を守るってどういうことだ!人を殺しまくったくせによ!お前達のせいで何人死んだか分かるのか?』
ユウトも許してくれないよな…。
まぁ当たり前のことか。
人を殺しまくったくせに、今さら世界を守るなんて言われたって意味わかんないよな。
でも、戻らせて欲しいんだ。
正義のヒーローに。
『分からない…。でも!我はこの世界を人間を守りたい!今さらだけど、守りたいんだ!信じてもらえないよな?なら、信じてもらう為に我は全て話す。我らの目的も何もかも全部!』
私がそう決意のした時だ!
『××には逆らえない。』
ピエロが急に呟いた。
次の瞬間…
「いぶきを殺せ!そして、大人しくピエロに従え!」
私の頭の中で謎の声が響いた。
その直後のことだ。
私の身体が勝手に動きだしたのは。
私が何をしようと身体は言うことをきかなかった。
私はいつの間にかいぶきの前に立っていた。
そして、私はいぶきに銃口を向けた。
私は身体を自由にする方法が無いか考えた。
けど、焦ってしまって思いつかない。
いぶきを殺したくない…!
もう誰も殺したくない…!!
『何してんだ!やめろー!今の言葉は嘘だったのかよ!』
ユウトの声が聞こえた。
その時、身体が自由に動くようになった。
『嘘じゃない!』
私がそう叫んだ瞬間…!
「殺れ!」
また、頭の中に謎の声が響いた。
すると、また身体は自由を失った。
その後すぐに私は…いぶきを殺ってしまった…。
殺したくなかった。
言い訳になるかもしれないけど、これは私の意思じゃない。
その時だ…!
ピエロが私に注射を打ってきた。
私は対抗が出来なかった。
注射を打たれた後、すぐに私は倒れた。
毒かな…?
私はだんだんと意識が遠くなっていくのが分かった。
私は死んでしまうのかな…。
でも、まぁいいや。
もう苦しみたくないし…。
死んだ方がマシだ。
きっと、ユウトがこの世界を変えてくれるだろう。
そう信じよう。
藍の閉じた瞼からは、一粒透明なものが流れ落ちた。
そして、ピエロは藍を抱えて藍と共に消え去った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!