第3話

進化
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2018/07/23 12:10
もう大事な人に会いたくない。






だけど、大事な人じゃないからといって、悲しくならないのは違う。









大事な人じゃなくても、悲しくなる。










ただ、大事な人だと、とても胸が苦しくなる。











さっき、大事な人を目の前で殺された。










その時、憎しみと悲しみが溢れてきた。












もうこんな思いしたくない。











もう、私の目の前で大事な人を殺さないでくれ!










そう思っても、叶わないだろうけど…。












さっきは、涙を堪えることがぎりぎり出来たけど、次はきっと、堪えることが出来ない。












何であの時、死ぬ事よりも、生きる事を選んだんだろう。










あの時、死んでれば、こんな思いはしなかった。









こんなことをしなくて済んだはずなのに…。












どうして、死ぬ事よりも、支配することを選んだんだろう。











でも、私が死ぬ事を選んでたら、この世界は今よりも大変なことになるはず…。











それに、これは、自分で決めたことだ。












一度始めたら、もう後戻りすることは出来ない。












頭がこんがらがってきた。












もう考えるのはやめよう。












今の日本は、建物が潰れ、地面が割れ、空も雲も灰色。










そして、人類も消え去っていって、ゾンビという見た目が人の形で人と見分けがつかない化け物が増えていっている。











ゾンビだって、元は人だった。









だが、ある薬品が体内に入り、ゾンビ化した。











その薬品も進化している。












私の時と変わったこと、それは、不死身になったこと。











つまり、前よりも倒すのが難しくなったということだ。











そして、私は、不老不死だ。















正直、不老不死になんてなりたく無かった。











一生死ねないし、若いまま。












ずっと死ねないなんて辛いだけ。








まだなのかな…。









まだ、世界を救うヒーローが現れないのかな。










そのヒーローなら、私を殺せるかもしれない。











どうか、早く現れて欲しい。







私は、願った。








『藍!』







嘘だ…。











何で今、お母さんが現れるんだ。











何でこのタイミングなんだ…!











また、目の前で殺されるのか。










そんなの嫌だ。










そうだ!








なら、自分で殺せばいい。










人に殺されるのが嫌なんなら、自分で殺せば、見るよりはマシかもしれない。












ごめんなさい、お母さん…。












もう、私は、あなたの思っているような人じゃない。












『人殺しになったんだよ、私は。』











呟くように言った。












『ピエロ、聞こえてるか?今は目の前にいる奴は私が殺す。手を出すな!』






私は、ピエロに言っておいた。








じゃないと、ピエロが勝手に殺す。










『はい、分かりました。』









返事があった。









これからは、こうゆうのにも慣れないとだよね。










こんなことは、なるべく最後にしたいけどさ…。

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