あの日から何週間が経過しただろう……。
あれから俺はひと時も欠かさずにトレーニングを行った。
ゾンビの死体を的にしたり、誰かを助けたりした。
未熟な俺は失ってしまった命もあった……。
そして、一つだけ厄介なことがある。
人の心を読む力が上手く使えない。
自分の意志とは関係なく人の心が読めてしまう……。
大勢の人の心の声が混ざって気持ち悪い。
どうにかしてこの力を使い慣らさないと戦いの時に邪魔になってしまうだろう。
きっと、これ以上は強くなれない。
魔王and殺人ピエロ討伐隊に入ればもっと強くなれるだろう……。
でも、俺は絶対に入りたく無い。
突然、心の声がし始めた。
(あの子汚ない…)
(こっち来てくれ…もう俺のことを殺してくれないかな)
(魔王and殺人ピエロ討伐隊の人かな…)
(お腹空いた…何か持ってるかな)
(近づいてみようかな…)
……突然、心の声が聞こえ始めた。
誰かがいる合図だ…。
俺は警戒しながら歩いた。
その時……!!!
『おっ!ユウトじゃん!!!何してんだよ、お前(笑)身体傷だらけやなー、大丈夫か?』
話しかけてきたのは、ある日突然に消えていった親友だった。
俺が唯一、信用出来ていた人だった。
……!?心の声が聞こえない……?
俺は出会った事よりも、心の声が聞こえないことに驚いた。
『……何しに来たんだ?』
俺は警戒をした。
何か企んでる可能性だってあるんだ。
俺は嬉しい気持ちと伝えたい気持ちを隠した。
すると、親友は呟き始めた。
『あの日、突然消えちゃってごめん…こんな話信じてくれるか分からない、でも、聞いて欲しい…俺さ、もうすぐで居なくなるんだ…もう会えなくなると思う。色々あってさ……やっぱり、いざ居なくなってしまうんだと思うと怖いよな(笑)最後にお前と会えたらと思ってたんだ…それでさ、お前に頼みたいことがあるんだ!…これお前に託す…“今は見るなよ”…もし、俺がゾンビになってしまったら殺してくれ…頼む…誰も殺したくないんだ。もう一つ、無茶なお願いしてもいいか?……こんなゲーム終わらせてくれ!……これでラスト…最後に一言!……来世でまた会おーぜ!!!』
親友は肩に手を当て、すれ違って行った。
肩には、折りたたまれた紙が乗っかっていた。
『おい!居なくなるって…お前はまた俺の前から消えるのかよ!何で…来世なんて会えるわけ無いだろ…』
俺は警戒心など忘れ、感情的になってしまった。
『言葉より見せた方がいいよねー』
突然、殺人ピエロの声がした。
俺が見た時には、もう…真っ赤に染まっていた。
また、助けることが出来ずに終わってしまった……。
ザクッザクッザクッ……
『アハ!ハハハハハハ!…ざんねーん…ゲームオーバー』
殺人ピエロはそう呟き、高笑いをしていた。
親友の首、手、足は一瞬にしてばらまかれた。
怒り、悲しみ、後悔などが複雑に混ざり合い、喉元までこみあがってきた。
瞬殺だった…けれど、三秒、その間に心の声が聞こえたんだ……。
……俺に託されたメッセージがハッキリと聞こえたんだ!
(瓶を見つけて破壊しろ!…このゲームを終わらせる方法はただ一つだ!あいつを…死神を殺せ!!!)
”任せろ“
俺は小さく呟いた。
俺は決して忘れないだろう。
泣きながら笑って“居なくなっていった親友“を決して忘れることは無い。
俺は覚悟をし、殺人ピエロに宣戦布告をした。
『なぁ、俺さ、強くなったんだ…お前は強くなったか?お面壊せばいいんだよな…なぁ……答えてくれよ!……はぁ(笑)…今、お前を殺したところでゲームは悪化する。けれど、最後は強くなって必ず殺す!覚悟しとけ!』
そう言い切った後、俺は瓶を探しに行こうと身体の向きを変えた。
背中の方で殺人ピエロが笑っていた。
馬鹿にされようが構わない。
親友の死、皆の死を無駄にはしない。
俺はそう誓った。
どこにでもない、人でもない何かに。
だが、その時だった。
『じゃあ、手始めにこいつ殺してみなよ』
殺人ピエロに呼ばれ、振り返るとそこには……
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更新遅くなってしまってすいませんでした!
誤字などありましたら、教えて下さると嬉しいです^ ^
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。