ズキリと痛む体を起こすとそこは黒に統一された清潔感のある部屋だった。
なぜ自分がここにいるのか頭痛が支配する頭に先程までの記憶をめぐらせる。
そう、あれは残業中のことだった。
今度の打ち合わせで使う資料を制作していたとき。
パソコンと向き合ってしかめっ面をしていると、なにか間違ってとある広告をクリックしてしまったのだ。
"リアル人狼ゲーム"という面白そうな内容に興味をそそられ、つい参加ボタンを押した。
そこまで思い出すと、なにやら床に1枚のカードと[ルールブック]と書かれた冊子を見つけた。
ななもりはそれらを手に取り簡単に目を通すと、ふーん…。と呟き、スタスタと扉へと向かっていった。
扉を開くと、青髪の青年が嬉しそうな表情でななもりを見つめた。
彼は、輪になるように並べられた6つの椅子のうちのひとつにちょこんと座っていた。
彼の目の前にはお菓子のゴミが散らばっている。
その空間は白を基調とした明るい部屋で、壁には先程自分がでてきた扉を含めて6色のドアが貼り付いている。
自分が出てきたのは紫色だった。
目の前にいる青年も残りの5つのどこからか出てきたのだろうか。
そんなことを考えていると、青年はニカリと笑って話しかけてきた。
そう言って差し出したのはスナック菓子。
お菓子好きのななもりは快くそれを受け取った。
そして、今後の事も考えて彼と挨拶を交わすことにした。
年上と接しているのに純新無垢な姿勢にななもりは感心する。
彼は、これから起こることに恐れていないのだろうか──?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!