目を開けるとそこには見慣れない景色が広がっていた。
なんだか肌寒いと思えば、いつも添って寝ている愛猫と愛犬が居ないことに気がつく。
いつものように声をかけても返事がない。
自分の住んでいた部屋よりも物が少ない分、広く感じる。
何故こんな所にいるのか。回らない脳で必死に考える。
すると、1枚のカードと冊子が目に飛び込んできた。
さとみは思い出したかのように声をあげると、ルールブックをペラペラとめくる。
どうやら自分の知っている人狼ゲームと同じようだ。
そしてカードに目をやり、なんの表情も見せずにジャケットの内ポケットにしまい込む。
ピンク色をした扉の前で立ち止まり、外の音に耳を澄ます。
声……?数人の話し声が聞こえる。
さとみはぐるりと周囲を見渡し、他に見落としているものがないかを確認した。
それから、思い切って扉をぐいと引く。
青、紫、赤。
派手髪の3人がこちらを見つめる。
否、自分も髪をピンクに染めているため何も言えないが。
どうすればよいのか分からない状況に、さとみは声を漏らす。
青髪の少年がそう言う。
…風邪をひいているのだろうか?
さとみはぼんやりとそんなことを思う。
声がガサガサしている気がする。地声だったら申し訳ないが。
名前を聞いてみると ころん、ななもり、莉犬というそうだ。
さとみは出来る限り呼び捨てで呼びたかったのだが、ななもりだけはなーくんと呼んで欲しいとせがんできたため、なーくんと呼ぶことにした。
さとみも自己紹介も頼まれたため、すくっと立ち上がった。
そう話すななもりは気さくな様子で、不思議とさとみの心を落ち着かせた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。