翌朝、珍しくちゃんと体操着を持って登校した。体育の時間になると大人しく皆の列に並ぶ。皆には驚かれたが、理由を説明すると納得したような顔になる。当然か。
烏間さん…いや、烏間先生は体育の時間を使い、暗殺の基礎を教えてくれるらしい。ある程度は受けておいてもいいかもしれない。皆の動きを観察するいい機会にもなるだろう。
しかし、皆はあまり乗り気では無さそうだ。ターゲットの目の前での訓練に意味を見いだせないと。
あまり連携はできてないな。せっかく二人いるんだから味方の動きを予測しながら…それの回避を予測して…あー、もう!モヤモヤするなぁ!
もどかしさを胸に秘めながら見ていると、2人同時に手首を捻られている。うわぁ、痛そう。思いっきり体側打ちましたよね!?
なるほど、的を射ている。皆もこの授業の意味が見いだせたことだろう。ここで今日の体育の授業は終了した。ふとE組校舎の方を見ると見た事のある赤い髪が目に入る。いちごオレ…最初に見た時も飲んでたな、お気に入りか?
渚くんがぽつりと呟く。カエデちゃんが渚くんにカルマくんの人物像を聞いている。耳を立てて見ると、どうやら喧嘩慣れしていそうという印象は間違っていなかったらしい。
そんな生徒たちの様子を見ながら、遠くで烏間先生は1人、思考をめぐらせていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!