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第3話

#2 悪魔×天使?
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2018/02/06 13:23
 「きめた!あたし、君にする!」
咄嗟に出た言葉に美月ちゃんと凛音くんはぽかーんとしている。だけど、店の奥ではあやみさんが、こっちを見ながらニヤニヤしている。
「え?」
凛音くんの一言に思わず焦ったあたしは
「あっ、えっ、えとー、その……。」
ひたすらに、手を動かしながら伝えようとした。


少しの沈黙はあたしにとっては永遠のように感じた。だけど、ふと、凛音くんの方から着信音が聞こえた。
「あやみさん、俺、用事あったんで帰ります。チョコ、美味かったっす。」
そう言いながら凛音くんは帰っていった。
それと入れ違いに、あやみさんの旦那さん、こういちさんが帰ってきて、
「ただいまー、おっ、はづきちゃんやん!ひさしぶり!」
「あっ、はい!」
あたしが一言言うと、
「ぱぱー!」
と、みつきちゃんはこういちさんに飛びついた。
「こういちさん、みつきと部屋の方で遊んであげてー」
とあやみさんが言うと、二人は店の奥の家にいった。


「もう今年は決めたんだ?」
「えっ!?あっ……まぁ。(笑)」
あやみさんにはバレていたみたいだった。
「バレンタイン!今年は凛音くんにするんでしょ!(笑)」
あやみさんはニヤニヤしながらこっちを見てくる。
「んー、でもー……。凛音くん、モテるし、、、、」
そう。凛音くんはモテる。はるかと並んで、と言ってもいいくらいモテる。


中学1年の時。入学してすぐに、はるかと凛音くんはモテ始めた。同時に凛音くんの例の噂は広がっていった。それでも、女子は「クールでかっこいい!」とか、「ツンとした感じがいいよねー」とか、「喧嘩っ早いのも、付き合ったらめっちゃデレてくれそう」とか、訳の分からんことを言っていた。もちろん、あたしには関係の無いことだったから、そんな噂なんて気にも留めなかった。
そんなある日、上層部?の女子達があたしのところに寄ってきて、
「はづきちゃーん(ニコニコ)!あのさー、理科の席も、教室の席も、代わってくれない?」
「えっ?」
「ほら、はづきちゃんってー、ああいう人気な男子?を気に留めてないじゃん?でも、私たちははるかのことも、凛音くんのことも本気で好きだからさっ?」
そう言ってきた。別に、あたしは代わってもよかった。だって、確かにあの二人には興味がないから。
「あっ、うん、いいよ?」
「えっー!?ありがとー!はづきちゃん大好きー!」
なんて都合のいいことを言いながら女子は帰っていった。

その日からあたしは、その女子達と席を変わることになった。でも……。

「あれっ?はづきは?てか、なんで君なの?(笑)」
理科の時間、すぐにはるかは気づいてあたしを探し始めた。
「えっ、いやー、はづきちゃんってー、目悪いじゃん?だから、あたしが変わってあげたの!(ニコニコ)」
その女子はテキトーに理由を作ってはるかに話し始めた。実際、あたしは普通に目は良いし、小学校からずっと、Aだった。
「えっ?(笑)はづき、小学校からずっと、目いいんだけど?(笑)」
あっ……バレた。そりゃ知ってるよね。同じ小学校なんだし。その時……。
「おい、はるか。そいつ、お前目当てで交代してる。多分。」


まぁ、その後は色々またあったんだけど……。
その1年の時のバレンタインは想定内だったけど、凛音くんとはるかがいっぱい貰ってた。凛音くんのことは分からないけど、はるかは貰ったお菓子を弟の友達に配っていた(笑)。あの上層部の女子から貰ったものだったから。



「んー。」
そんなことを考えていると、
「なんで悩むのー?渡したらいいじゃーん」
と、まるで友達のように言ってきた。でも、まぁそんな簡単なことではない。渡したのがバレたら、いろんな女子に文句言われるし、万が一、食べてもらえるかすら分からない。
「じゃあさ!試しに食べてもらったら?」
「えっ?」
あやみさんの一言に思わず口を開けてしまった。バレンタインの試しに食べてみて?と言われて食べる人はいるのか?それすら皆無なんじゃないか?
「明日、渡してみたら?」



えっ……。





[あとがきパート1]
お久しぶりです。あまてんです。バレンタインは本命というものを渡したことがないです。まぁ、今年も……義理とかじゃないですか? というか、今回の登場人物の、「上層部の女子達」怖いですね。うん。女は怖い。(ごめんなさいい!)

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