第2話

#1 ビターの公式
68
2018/02/06 00:32
 「じゃあばいばーい!」
今日の朝、せなとハルの3人でバレンタインの話をした。それで、今日の放課後は、あえて2人とは帰らずに学校の近くのケーキ屋に寄ることにした。


「こんにちはー」
「いらっしゃい!あっ、はづきちゃんー!ちょうど良かった。バレンタインのチョコの試作ができたから、試食してくれない?」
店に入ると、店内はピンク一色でいかにもイマドキ、カワイイ!って感じの店。ここの店のあやみさんとは知り合いで、よくケーキとかの試食を頼まれる。今日は運良く、その娘さんの美月ちゃん(小3)にも会えた。
「はづきねーちゃん!久しぶりー」
「みつきちゃんだ!ひさしぶり」
2人でチョコを待っているとチリンチリーンと店の扉が開く音がした。同時にあやみさんも店の奥から出てきて……。


「あっ、凛音くん!いらっしゃい!ちょうどよかった。バレンタインのチョコの試作が出来たから、試食してくれない?」
あたしに言ったことと同じことを凛音くんとかいう人に言った。そしてふと、あたしが振り向くと、
「あっ。」
2人同時にその言葉が出た。


―瀬戸凛音くん―。学校ではちょっとした有名人。ヤンキーとか言われていて、よく、喧嘩の噂がある。そんな凛音くんが今、この店に来ている。



「うっす。」
軽く、お辞儀をした後、凛音くんはこっちにやって来た。
「ヨク、ココニクルンデスカ?」
ものすごくぎこちない感じで聞いてみた。すると、縦に首を振るのがあたしの視界のギリギリに入ってきた。
「えっ!?なに?2人知り合い?」
ちょうどいいときに、あやみさんがあたしたちに聞いてきた。当然、凛音くんは答える気配すらなかったから、あたしが「同じ中学の同級生なんです。」と、軽く答えた。
「あらー」
とあやみさんは言うと、そこから深くは聞いてこなかった。
「これ!食べてみて」
あやみさんが持ってきたチョコレートは真っ赤なハートの形をしていてすごく綺麗だった。
「中は、ラズベリーソースが入ってるよ」
隣でみつきちゃんが教えてくれた。それから、あやみさんはまた、「テキトーに見ててー」と言い、店の奥へ入っていった。

チョコは口の中に入れると苦くて、でも中にはラズベリーソースが入ってたから甘酸っぱかった。
「おいしい……」
そう呟くと、みつきちゃんは目を輝かせて
「でしょ!?」
と言った。あたしはふと、凛音くんが気になって横を見ると、今までに見たことがない、笑顔でチョコを頬張っていた。


そして、鈍感なあたしでも気づいた。凛音くんは甘いものがとてつもなく好きで、それを食べている時、最高の笑顔を見せる。


「きめた!あたし、君にする!!!!」

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