ダラダラと立ち上がった彼女の後に続いて、私もリビングへと足を動かす。
ジェニオンニはいつからこんなにナマケモノになったんだろうか。
第一印象はめちゃくちゃに怖かった。私とロゼとたった一つしか変わらないのにめちゃくちゃ目付き悪かったし。
実際急に話しかけられた時とか身構えちゃったし。
ロゼと知り合いじゃなかったら絶対今話してない。
それから色々あって今に至る訳だけど…とりわけ思い出せるような思い出はない。
だって他学年だし。帰り道も反対方向で委員会も一緒になったことないしね。
この社会に入ってこの業界に首突っ込んだ時に一番楽しそうに話しかけてきたのこのオンニだったけど。
それまで目付き悪い人って印象が一瞬でひっくり返されたよね。めちゃくちゃ可愛い笑顔で近寄ってくるんだもん。
まぁだからってすぐ仲良くなれたわけでもないけど。
だったらなんでそういうことする仲になったんだろ…自分でもわかんないや。
リビングへ着いて、二人してダラダラとカーペットの上をゴロゴロしていると。
突然ジェニオンニが変なことを聞いてくる。
そんな会話をしながらも、ゴロゴロは変わらない。
こんなナマケモノになってしまったのもきっとジェニオンニのせい。
そんなことをしていると、思い立ったかのようにジェニオンニが私に気を遣ってコーヒーを淹れてくれると言う。
ほんとに、一年に一回あるかないかくらいのジェニオンニの優しさに乗ってやろうとキッチンを預けて、私はソファへと倒れ込む。
あー…疲れた。まさか午前中からあんなことするとは思わなかったし。
…テレビでもつける?ジェニオンニはいつも無音だとつまんないって連呼するし。つけとくか。
そう思って電源を入れたテレビに映るのはついさっき会ったばかりのナヨンさんと他八人。
めちゃくちゃ堂々とレッドカーペットの上を綺麗に歩いている姿に流石の私も釘付けになってしまう。
すっご…これがアイドル…アイドル?なんかもはや女優みたいな感じするけど笑
隣のジェニオンニは見慣れた様子でその映像を見つめている。
いやぁ…歓声がすごいな。改めて見ると。
そんなすごい人っちだとは思わなかったわ…笑
あんな軽率な真似して私殺されたりしない?大丈夫?
二人でリサをディスって笑い合いながらテレビを見続ける。
夕飯にはまだ早い時間だし、ジェニの求めてるそう言うことをするにもまだ早い。
何もすることがないからテレビのBGMを流しながら最近の近況報告とか雑談とかして時間を潰す。
正直最近そう言うことばっかで疲れてきてるんだよね。
いくら可愛いったってそう言う気分じゃない日もあるわけだし。
客とかなら仕方ないけどさ、この人ら四人は客じゃないわけじゃん。
…何で私この人らの相手してるんだ?
そんな疑問を持ったまま、一口コーヒーを口に注いでからソファへ寝そべると突然私を襲う睡魔達。
あら…私そんなに疲れてたのかな。いつもなら眠くないはずなんだけど。
まいっか。眠いし。まだ時間あるしジェニオンニも許してくれるでしょ。
突然の睡魔達に思考を預けて、私は夢の中へとダイブする。
最後の視界に映るジェニオンニの笑顔はどこか寒気を覚えさせるものだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。